66.ただ一人
一視点での過去編です。
一の記憶
暗い視界。
埃っぽい空気。
歪に起伏した足場。
僕は今、地下都市に続いているだろうこの大穴の中を進んでいる。
僕の出で立ちは長袖の作業服に頭にはヘッドライトを取り付けた安全メット、両手には軍手と足には長靴タイプの安全靴に背には自作の背負子。
背負子には段ボール二つを重ねた物を載せ、両サイドにはロープやピッケル等の道具を背負子の骨子に引っかける様にしている。
ヘッドライトの光が映し出すのは、岩肌が剥き出しになった円柱状にくり抜かれた様なトンネルだ。
アスファルトで整地された搬入路が在ったはずのここは、その面影など感じさせない程に変化させていた。
複数台の小型トラックが走れるほどの広さを持っていた搬入路は、その倍の大きさにくり抜かれた穴によって穿たれている。
穴の長さは4000m程で、僕たちは配送後の空になった小型トラックに乗せてもらって外まで来ていた。
その時は照明もあったし、何よりも父さんが一緒に居たから特に何か感じる事も無かった。
だけど、今のこの穴には照らす為の光源も無ければ、僕の近くには今は誰も居ない。
トラックに乗っていた時と違って、足場の悪い中をひたすら歩いている。
歩くたびに疲労と不安が大きくなってくる。
僕以外に誰も居ない場所をただ黙々と下っていくだけ、足場の悪さが歩く速度を落とさせながらゆっくりと体力を消費させる。
無理をしない為に背負子を下ろして休息をした、休息中に穴の先を見てみたが明かりが全く見えない。
反対に後方を見ると外の光がまだ見える、けれども進むにつれてその光はどんどん小さくなっていく。
今はまだいいけどこのまま進んで行って外の光が見えなくなってからも、街の光が見えてこなかったら・・・。
暗闇の中で不安は徐々に、そして確実に大きなっていく。
光源は今頭に装備してあるヘッドライトの他に、ポケットにレンズの欠けたペンライト、背負子のダンボールの中にはランタン型のライトに予備のヘッドライトとバッテリーがある。
だけどもこのペースでもし街迄届かずに道中でで全ての光源を失ったらと考えると・・・途端に身体中に寒気が走る。
背負子のダンボールからペットボトルを取り出して、不安を身体の内側に押し流す様に水を一口だけ飲んだ。
無暗に考えても不安が募っていくだけだと自分に言い聞かせて僕はペットボトルを背負子のダンボールに戻してから背負い直して、再び歩き始めた。
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数度目の休息。
ダンボールからランタン型のライトと缶切り、そして缶詰を一つ取り出した。
持ってきた缶詰で一番小さい物を選んで、持ち手の歪んだ缶切りを使って開けた。
握りが悪いせいか一つ開けるのになかなかの時間が掛かってしまった。
中身は煮豆の缶詰だった。
地上で拾った食器類にスプーンが在ったのでそれを使って食べた。
砂糖で煮た物なので、口いっぱいに甘さが広がっていく。
甘さの濃いい物を食べた所為か、喉が直ぐに渇いた。
水で流し込みながら胃に納める、開けた缶詰の保存方法が無いので開けたら食べきらないといけない。
一缶食べきるのにペットボトルの半分の水を飲んでしまっていた。
空腹が在る程度治まると、脳が回転を始める。
すると、手元に在る残り少なくなったペットボトルとダンボールの中の残りの水に意識がいった。
不足からの不安がじわじわと心から染み出してきた。
僕は今の手持ちの水だけで、ちゃんと目的地である地下都市に到達出来るのだろうか・・・?
一つ不安を感じると、二つ三つと次第に増えていく。
食料も持つのか?
ライトのバッテリーは?
何よりもこの道そのものが崩れる可能性も有るのでは?
不安は僕が思考に引っ張られて、それを塗りつぶす様に広がっていく。
進行方向を見る。
光はまだ無い。
進んで来た方向を見る。
光はもう無い。
地面に置いたランタン型のライトだけが、ポツンと光っていた。
此処まで読んで頂きありがとうございます!
前話の後書きにて後二話程で過去編終了予定としておりましたが・・・早速の予定変更になります!
申し訳ございません!!
もう少しだけ過去編に御付き合いお願いいたします!
それから、遅まきになってすみませんでしたがブックマークに評価、感想もありがとうございました!(今更っ!?)
感想やご意見、質問等いくらでも受け付けておりますのでこれからもどうか宜しくお願い致します!
ではっ!




