65.歩んだ先は・・・
一三視点での過去編になります。
一三の記憶
足が震える。
足が地面に着くたびに熱くなって、痛みが広がっていく。
熱いはずなのに、勝手に足が震える。
お母さんと一緒に食べ物を見つけてから二日目。
私達は足場の悪い瓦礫の中をあの日から歩き続けている。
少し歩いては休憩したり、夜の時間になると二人で身を寄せて隠れながら眠った。
けれども今の地下に暗い夜は来ない。
いつもはちゃんと昼夜が在るのに、あの日から地下はずっと昼のままだった。
そして、ずっと明るいままで私達はあまり眠れていない。
疲れたままの身体が段々と重くなっていく。
自然と休憩が長くなる。
最初は私の疲労に合わせて休憩を取っていたけど、暫くするとお母さん自身も段々と息を切らせる事が多くなっていった。
私達は朝から歩き始めて、五度目の休憩を取った。
私は自分の足を見た。
全体的に赤みが差して元の太さよりも一回り膨らんで見える。
足首に靴の縁をなぞる様に赤紫色の痣が出来て、アキレス腱は皮が剥けて赤色が滲んでいて今にも溢れて来そうだ。
私は自分の足の痛みから、縋る様な気持ちでお母さんの方を見た。
私の目に写ったのは、お母さんの横顔だった。
私が話し掛けると、いつも優しい笑顔で答えてくれるお母さん。
私が元気が無い時、穏やかに微笑みながら語り掛けてくれたお母さん。
私が怪我をして泣いていた時、困った様に笑いながら励ましてくれたお母さん。
私にとってお母さんは笑顔を絶やさない、優しくも強い存在だった。
でも、今のお母さんの顔は少し青色が差して目元にもほんのりと隈が見えた。
私はお母さんの姿に初めて『疲れている』と感じた。
私はお母さんのこんな姿を一度も見た事は無かった。
・・・違う、私は自分の事にしか意識が向いていなかっただけだ。
家だった場所を離れてからずっと歩いて此処まで来た。
私はその間、殆ど下ばかりを見て歩いていた。
お母さんが前を向いているから、私は唯お母さんについて行くためにお母さんの後だけを・・・私が進む為に必要な道標だけを見ているだけで良かったから、私は前を進んで行くお母さんの顔を見ていなかった。
だから、ようやく気が付いた。
お母さんは此処まで来るのに、何度足が痛いとぐずる私をおんぶしながら歩いてくれたのか、そしてその度に何度私に微笑みかけてくれただろうか?
お母さんの横顔を見た後、私は俯いて泣いていた。
嗚咽は無く、唯涙だけがとめどなく溢れた。
気付くと、私は心の中で何度もお母さんに謝っていた。
・・・ごめんなさい。
ごめんなさい、ごめんなさい・・・ごめんなさい。
こんな我儘な子供でごめんなさい。
今から声に出すから。
ちゃんと声に出して謝るから、だからお母さん。
私の声を聞いて下さい。
お母さんに謝る為、顔を上げてお母さんの方を見た。
お母さんも見上げていた。
視線のその先を追うと・・・大きな穴が開いていた。
私達はしばらくの間、それに釘付けなっていた。
そしてお母さんが何かに気が付いたように、スッと立ち上がって目を凝らした。
「あの標識・・・そう、この先がそうなのね」
お母さんの口からそんな言葉が聞こえた。
お母さんが目を凝らした場所をよく見ると、大きな穴の横に白色で矢印と漢字が書かれた緑の板が見えた。
そして、お母さんが振り返って私の方を見て言った。
「『 』、いい?この先に『 』お兄ちゃんとお父さんが・・・」
お母さんがそう言いかけると、さっきまで私が見上げる様に見ていたお母さんの顔と視線が私と同じ高さになって、そして私よりも下になっていった。
ガラガラと何かが崩れていく様な音を足元から響かせながら・・・。
此処まで読んで頂きありがとうございます!
前回同様中々本編に戻れずすみません!
一応予定では後、一視点での過去編と両視点での過去編の二話で過去編終了になる・・・予定です(予定は未定)。
まだまだ続きますので、これからもどうかお付き合いお願いいたします!
ではっ!




