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64.進むは闇の中

(はじめ)視点での過去編です。

 (はじめ)の記憶



 父さんに別れを告げてから、僕は瓦礫の中で一晩を過ごした。


 夜の暗闇に視界が埋め尽くされる迄に、何とか目当ての中身の入った水筒と支給される前の未開封だった保存食や飲料水の詰まったダンボールを確保する事が出来た。

 流石に服等の衣類は入っていなかった。

 夜を迎えるには今着ている服だけでは心許ない。


 衣類を手に入れる為、瓦礫の中で僕は謝った。

 物言わぬ骸となった人達に謝った。

 そして彼等からその着ている服を奪った。

 

 とても父さんに顔向けなんて出来無い行いだ。

 死者への冒涜以外の何ものでもない行為だ。

 ・・・でも。

 それでも僕は今この瞬間を生きなければならない。


 無数に散らばる瓦礫を動かして、即席の浅い塹壕を造った。

 寝る様に倒れれば十分に夜風は凌げるし、寒さは奪った衣服を何枚も重ねれば良い。

 寒さ対策として周囲の瓦礫に混じった木材を焚き火として使う選択肢も有ったけど火を扱うには不安があった。

 瓦礫の下には運搬に使っていた車も潰れていたからだ。

 もしガソリンが漏れていて運悪く引火したら、間違い無く命は無いだろう。


 ・・・僕には生きてやるべき事がある。

 この状況で生きているかは分からないけど、それでも確認しないといけない・・・違う、僕自身が確かめたいんだ。

 だから僕は生きる。


 どれだけ無様で醜い生き様だとしても、僕は生きて『 』と母さんを探す。

 僕の大事な掛け替えの無い家族を迎えに行く。


 その思いを胸に僕は暗闇の中、静かに目を閉じて夜明けを待った。 




 目を閉じてから、長い長い時間が経った後、僕の目蓋に何かが無遠慮に当たって来た。

 目を開けると朝の日差しが雲を縫って幾つもの光の筋を創って大地を照らし始めていた。

 そして、明るく成りつつある地面とは対照的に僕の目の先には夜の黒々とした暗闇をそのまま押し込んだ様な穴が、大きな口を開けてそこに在った。

 

 プラットフォームの横にある搬入路を更に穿つ様に出来たこの穴の先は、恐らく僕が住んでいた地下都市に続いているんだろう。

 不規則に歪んだ形で抉じ開けられた穴は、灯りも無い事もありその有様は地獄に続いてると錯覚する程の異様さだった。


 僕はあの闇へと足を踏み込む。

 

 必要な荷物を纏めてからの出発になる。

 ロープ等の道具も必要になるかもしれない。

 明るく成った今からそれらを探して、それから廃材から簡単にでも背負子を組み上げよう。


 食料の入っているダンボールをそのまま担げばリュック代わりの収納道具としても使える。

 出発は早くても昼過ぎになるだろう。

 

 正直に言えば今すぐにでも出発したいけど、可能な限り準備をしよう。

 二人に無事に再会して、あの穴から父さんの眠るここに戻って来る為に。

 


 此処まで読んで頂きありがとうございます!


 前話でも書きましたが本筋に中々話が戻ってこれずにすみません。


 もう少し、もう少しだけ過去編が続きますので、どうかお付き合いお願いいたします。

 次話は一三視点の過去編になります。


 ではっ!!

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