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60.瓦礫の中で

 コンニチワ。

 引き続き過去編です。

 ※一部グロ?注意


 暗闇と息苦しさの中で少年は目覚めた。


 覚醒と同時に彼は自分の喉を強烈な乾きが支配している事に気が付いた。


 次に彼が感じたのは全身から走ってくる痛みであった。


 それが自身の身体からの警報であると同時に、まだ自分が生きているという現実を認識させる。


 眼を開いた彼の視覚を覆うのは、日中とは思えぬ程の暗闇とそれを貫く様に伸びたいくつかの光の柱、それらの中にはまるで舞う様に漂っているいくつもの砂埃。


 彼が目覚める直前迄聞こえていた筈の人々の喧騒は鳴りを潜め、乾いた小石や砂が擦れ合う僅かな音しか聞こえない。


 自分の状況を確認するために身体を動かそうと身を捩ると、伸ばした手に軽い衝撃を感じた。


 目の前に広がっていたの只の暗闇ではなく、自分を挟み込もうとするように眼前を覆う壁だったのだ。


 自身の現状が壁にと床に挟まれる様にして仰向けに倒れているのだと認識したと同時に、ここがどの様な状態で現状が維持されているか分からない為ここに居続けるのは危険かもしれないと、身体中の痛みで思考に集中できない中で感じ取っていた。


 彼は先程から見えている光の柱の大元は外なのかもしれないと考え、何とか身体を俯せにして狭い空間の中を這う様に移動した。


 途中に鉄筋等がむき出しなっているのか、作業者に支給されていたヘルメットにぶつけたり服の端等を引っ掛けたりもしたが簡単に取れて、何とか先程まで自分が倒れていた狭いスペースから抜け出す事に成功した。


 抜け出した彼は自分が何処に居るのか確認する為、痛む身体に顔を顰めつつも立ち上がって周囲を見廻した。


 彼の意識が途切れる前、彼は地下と地上を結ぶ搬入路に建てられていたプラットフォーム内で、父親と一緒に探索や物資の回収に出ていた大型輸送トラックから都市への輸送に使用する小型トラックへの荷役作業を行っていたのだ。

 地上の探索に乗り出した当初は、地下鉄の廃墟を越えた先のこの場所は瓦礫が散乱し、各所に亀裂や陥没が点在していた為に小型トラックの一台も通れない程だったのだが、搬入路の拡張と整備に伴いプラットフォームが建てられた。


 ・・・だが、彼が今立っているこの場所から見えるのは亀裂や瓦礫どころか、アスファルトは捲れ上がる様に抉れてその下の土色の地面が剥き出しになり、その間からは地上で暮らしている時に運用していた水道管等が突き出ていた。

 そして、少し視線をずらすと自分が先程迄埋もれていた場所はプラットフォームだった残骸だと分かり、その奥には自分達人間が搬入路として拡張した以上に大きく穿たれている地下への入り口が大口を開けていた。

 

 あまりの周囲の変容ぶりに声も出ず、彼はこれが夢と現実の間に居るような感覚になり足元が覚束無くなり、膝をついた。

 それでも尚支えられずに両手を突き出して四つん這いの姿勢になり身体が安定すると、脳がようやく動き出す様に感じた。

 

 一緒に居た父親は何処に居るのか?


 先程迄の戸惑いと混乱による思考の阻害が治まり、彼がその事に考えが行き付いて、自身の意識が途切れる前の光景を思い出した。


 自分が運搬していた台車の荷物を小型トラックへ積み込み、次の荷物をプラットフォームから受け取りに行く最中だ。

 既に次の荷物を受け取った父親が正面から荷台を押して来ていた。

 自分に笑い掛けながら声を掛けようとしていたのか、口が開いた直後に閃光と爆音と衝撃が周囲の物や地面毎、自分の身体を襲いそのまま意識を失ったのだった。


 血の気が引いた。


 自分が居たプラットフォームの残骸内に出来た隙間には誰も居なかった筈だ。


 服に鉄筋の様なモノが引っ掛かていた事も考えて、横幅も広くは無かっただろう。


 そして、今ここから見える残骸には人が入れるような隙間は自分が居た物を除いて、その近くにも見当たらない。


 鉄筋・・・そういえば自分の服が引っ掛かていた時破れただろうか?


 引っ掛かった時に引っ張られる様な感触は感じたが、鉱物の様な硬い物に引っ掛かった場合簡単に取れるだろうか?


 なぜ自分の服は決して大きな切り傷も無いのにこんなに真っ赤なのだろうか?


 自分の服を引っかけた物は本当に鉄筋だったのだろうか・・・?


 彼は再度周囲を見渡した。


 一部の荷役作業者はヘッドライトを付けていたのを思い出したからだ。


 もしかしたら一つぐらいは無事なものが在るかもしれない。


 地面にはトラックのと思しき部品や、剥がれて放り出されている無数のコンクリートの塊、剥き出しの地面に・・・まるで至る所でペンキをぶちまけたように真っ赤な液体がそれらの隙間から滲み出ていた。


 ・・・血が在るという事はそこには荷役の作業をしていた人が居た(・・)という事だ。


 彼は血の在る場所を見て回った。


 その間、彼は幾人もの・・・死体と形容するのも憚れるほどに拉げて原形の無くなってしまった肉塊を見て周った。


 その度に彼は顔色を悪くしながら、襲って来る嘔吐感に堪える様に歯を食い縛っていた。


 そしてプラットフォーム残骸の周辺を半周もしたころ、ようやくヘッドライトを見つけた。

 取り付けられていたヘルメットは拉げて、カバーはひび割れていたがあの暗がりを照らす機能に問題は無い。

 

 彼は青くなった顔を更に土気色に変えながら内側に髪と頭皮と肉のこびり付いたヘルメットから、ヘッドライトだけを取り外してあの隙間へと向かった。



 ・

 ・・

 ・・・

 ・・・彼が照らした隙間には確かに鉄筋は剥き出しになっていた。

 

 服の端が引っ掛かりようが無い方向にねじ曲がってたが・・・。


 そして引っ掛かったりすような場所に飛び出していたのは人の一部(・・・・)であった。


 それは手だったり、足だったり・・・どこかから突き出た()だったり・・・。


 そして、見つけた。


 彼はそれを見つけて顔から熱と共に色が抜けていく様に錯覚した。


 彼が見つけたのは右手だった。


 その手首に千切れながらも心許無くぶら下がっていた。


 7才に成った妹が、母親に御遊びで習ったミサンガ。


 父の日に送ったプレゼントで、喜んだ父親が毎日肌身離さず右手に付けていたものだ。


 


 

 後に≪(はじめ)≫と言う名で呼ばれ、最初の聖女に成る彼本来の日常は瓦礫と共に崩れていった。

 今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。


 今回は一三の中に流入した一の記憶による過去話です。

 色々ツッコミ所は在ると思いますが・・・ドンドン突っ込んで頂いても良いんですよ?(うぇるかむっ!)


 一応予定では次かその次ぐらいで過去編は終わりかな?と漠然と予定しております!

 

 それでは次回も宜しければお付き合い下さいっ!

 ではっ!!

 

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