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59.日常の終焉

 雑な前回のあらすじ

 一三の記憶に在る日本。

 地下で細々と生きていた人類だったが、地上には侵略者であった≪インセクタス≫は姿を見せなくなっていた。

 人類は再びの繁栄を手にすべく行動を開始したのだが・・・


 探索の成功によって更なる物資の獲得を目的とした搬入路の拡張後も、順調に探索と資源の回収は進んでいった。

 多くの人々がその成功に、在りし日の日常が帰って来る予感を確かに感じ取り、人々の顔からは自然と笑みが溢れていた。


 そんな人々の中、兄と両親の四人家族として共に生活していた少女がいた。

 後に一三(ヒトミ)と呼ばれる事に成る少女と、(ハジメ)と呼ばれる少年である。

 7才の彼女は、地下都市の居住地に建てられていた長屋の一室で家族と暮していた。

 この頃の日本では地下空間の空が無く、建物の高さにも制限がある場所で生活しなければならなかった事もあり、殆どの住民が長屋等の一階建ての建物に複数の世帯が寄り集まって暮していた。


 その日、15才になった兄は父親と一緒に搬入作業の仕事に出かけて行った。

 兄は周囲の同年代の子と比べて、頭の回転が速く要領も良かった。

 彼なりに父親から仕事を学び少しでも速く家族の生活の役に立ちたいと、そう考えて父親について行ったのだった。

 一家の大黒柱として働いている父親は、一人息子の学ぼうとするその一生懸命な姿勢に対し、真摯に向き合わなければならないと考えつつ、父として少しでもいい格好をしようと自然と仕事にも熱が入る。

 周りの労働者も今まで閉塞した空間で生きていた鬱屈した空気が嘘の様に、熱量を持った活気に変わっていた。

 そう、地の底で止まっていた人々の時間がようやく動き出したのだ。

 

 


 最悪の形で。


 

 

 朝早くに外での搬入作業が始まり、間もなく正午になろかと言う頃、地の底に在る地下都市にまで届く程の爆音が響いた。

 地下都市に居る者達は自分達の居る建物の窓を開けたり、何事かと外に出た者もいた。

 彼等が音の発生した方向へ目をやって・・・気が付いた。


 音源の方向は彼等が拡張した大きな搬入口。

 そこから、質量を感じさせるほどに濃い真っ黒な煙が濛々と立ち込め、ゆっくりと地下都市へ流れ込んで来ていた。

 


 黒煙の中から何人かが転げる様にして出て来た。

 そして彼等の内の一人が喉を焼け付かせたのか、むせ返りながらも酷くしゃがれてしまった声で叫んだ。


 逃げろっ!!


 彼の声に続くように黒煙から無数の異形が姿を見せた。

 その姿はさながら二足歩行をする昆虫であった。

 異形の名は≪インセクタス≫。

 人類にとっての敵性種族である。


 地下都市は彼等の出現後、堰を切ったように混乱の波が至る所で伝播した。

 ある者は手に持てる物は何でも持って彼等に向かって行き、ある者は彼等から逃げる為に泣き叫びながら街を駆け、そしてある者は息を殺して建物の奥まった場所へと隠れた。


 そして一三と一緒に居た母親は二人で隠れる事を選択したのだった。


 床下に造られていた収納スペース。

 数日前に偶々その収納スペースの内壁にヒビが見つかり、修理の間は収納物を全て取り出していた事が幸いし、二人はその場所に身を隠す事が出来た。


 二人が隠れて暫しの時間が過ぎ、周囲の喧騒が静かになった頃に二人はようやくその場所から這い出しすと、直ぐに日常とかけ離れた光景が視界に広がっていた。


 家を形作っていた壁や扉は崩れて屋外が剥き出しになり、その屋外にある筈の隣家もその原型をとどめていなかった。

 辺りに広がるのは瓦礫が散りばめられた様な荒れ地で、橋の基礎や頑丈な建物の一部が中身を剥き出しにして点々と佇んでいる光景だった。


 母親はその光景に対し、絶望に押し潰されそうな表情になった。

 今まで細々とではあったが、確実に其処に在った日常。

 その日常が僅かの間に蹂躙され、破壊された光景を目に移してしまったがために。

 両手は全てを擲つ様に力なく開かれていく。


 しかし、自身の左手を僅かな、けれども確かな温もりの有る小さな力でぎゅっと握られた。

 目を遣るとそこには、不安や恐怖に震えながらも必至にその存在を自身の母親に示す様に左手に縋りつく娘の姿がそこには在った。

 

 その姿に母親は自身がどの様な存在であるか再認識した。 

 

 自分はこの娘の母親だ。

 愛する夫と愛し合い、自身の腹を痛めてまで二人の子供を産んだ母親なんだ。

 今更この程度の絶望が何だ。

 自分にはどんな絶望の中だろうとも、母として守らなければならない命が在る。

 震えて立ち止まっている暇など無いのだ。


 もし今の状況で奴等(インセクタス)に遭遇してしまった場合、逃げる事すら叶わない。

 仮に遭遇しなかったとしても、飲料や食料が無ければ親子揃って餓死は免れ無い。

 故に母親は周囲の安全の確認と、食料等の確保を優先的に行う事にしたのであった。

 


 大分投稿が遅くなりすみませんでした。

 リアルが少し落ち着き始めたので、無理のない様にではありますがボチボチと投稿をしていきますので改めてよろしくお願いします。


 今回は前回から大分間がありましたので試験的にあらすじを入れてみました。

 今後もあらすじを入れるべきかは現在は未定です。

 もしご意見等がございましたらtwitter等でも構いませんので、仰っていただけるとありがたいです!


 ではっ!

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