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50.ラーゼント王国西門


 皆様お今晩は。


 今回は前回から二日後のお話になります。

 いよいよ、クライマックスです。

 では本編をどうぞ!


 ベンジェフが騎士団長に復帰してから二日目の朝。

 

 西門から見て反対側、東門の方向から陽の光が昇って来ていた。


 東門を陽が昇っていく度に西門側の地平線からその全容は徐々に顕わになった。


 地平線の向こう側、既に奴らの姿は見えていた。

 それはまるで黒い波がゆっくりと回りを侵食しながら迫りくる様だった。


 西門側の城壁上部に設けられた歩廊、そこからラーゼント王国所属の兵士や騎士の面々が顔を覗かせてその光景を確認していた。


「うへぇ、なんじゃありゃ~。数がやばいって~、俺ら終わったな~」


 ≪魔獣≫の侵攻を前に一人の兵士がそう呟いたのだが、内容に反して本人は軽口でも叩いた様に半笑いだった。


「無駄口を叩くんじゃねえ。そんなに暇が有るってんなら何時でも応戦出来る様に武装の点検でもしとけ。≪魔獣≫共はまだこっちの弓の射程距離にすら入ってねぇんだからな」


 年配の老騎士がその兵士の後ろ側、少し離れた位置で兵士を嗜めながら、歩廊の城下側(・・・)に備え付けられている石弓の仕掛けを点検していた。


「はいは~い、騎士様は真面目ですな~」


 皮肉を込めた様な口調で兵士が老騎士に言葉を返した。


「・・・真面目って訳じゃ無いさ」


「・・・あ~?」


 老騎士が一言だけ返した言葉を兵士は疑問に感じ、初めてその姿を見た。

 点検をしているその姿は、仕掛けが誤作動しない様に必要以上の接触はせずにテキパキとした動作をしていた。

 だが問題は彼の足である。

 大雑把に言うと人間は歩行する際に、両足へ交互に重心が来る様にする事で安定した動きになるのだが、老騎士は左側に重心が掛かる際に、右と比べてほんの一瞬だけしか掛からない様にして歩いていた。

 それに気付いた兵士が老騎士に声をかけた。 


「!騎士のじぃさん、あんた・・・義足なのか・・・?」


「・・・少し前にな、≪魔獣(あいつら)≫の腹の中に入っちまってな、それっきりさっ」


 自嘲するように老騎士は答え、自身の左足に付いている義足をコツンと叩いて言った。

 

「まぁ、コイツもそんなに悪くねぇ。いざって時に重心を掛けてもなかなか壊れない、いい仕事さ。・・・小僧は何でこんな(・・・)所にいるんだ?」


「・・・どうでもいいだろ・・・そんなの。・・・おっさんその荷物貸せ、そんな遅かったら攻め込まれるまでに終わんねーだろ」


 点検時に補強したりするのに使う木材と削る為の(のみ)等の道具一式を入れていた袋を老騎士からひったくる様にして持って、次の石弓の場所へと移動した。

 その兵士の後ろ姿を見ながら老騎士が懐かしむ様に笑いながら呟いた。

 

「・・・孫が生まれてりゃぁ、あんな感じなんだろうかなぁ?」


「どうした?『左足』の」


 老騎士の後ろから、同期と思われる騎士が声を掛けて来た。

 彼もまた、右の肘から先に生身には見えない物が取り付けられていた。


「なんだ・・・、『右腕』じゃねぇか。久しぶりだな」


「何だとは何だ。・・・で、何を笑っていやがる」


 二人は旧知の仲であった。

 お互いに自分の失った身体をあだ名として使う程度には心を許した友人だ。


「いやなに、倅を思い出してな。・・・生きてればあれぐらいの孫が居たっておかしく無かったんだなって思っちまったんだよ」


「・・・なんだ、そんなもん。俺達家系自体が騎士や兵士だったりの奴らにゃ珍しくも無いだろう」


「・・・へっ、まぁな」


「だがまぁ、気に入らねえよな」


「あ?」


「俺達老兵よりも先に若者達が逝っちまうなんて世の中がよぉ」


「・・・はっはっはっ。そりゃ違いねぇ」


「お~い、騎士のじぃさん!さっさと終わらせるんじゃねぇのかよ?」


「・・・全く、若いのは忙しなくて行けねぇ。ちょっと待ってろ、今行くからよ!」


「がっはっはっ。そんじゃな、『左足』の。・・・武運を」


「応、じゃあな『右腕』の・・・お前にも、武運を」


 老騎士達はお互いの持ち場へ戻っていった。


 自身達よりも先に逝ってしまった子供達が待っている所へ逝く為の場所。


 戦場へ




 今回もここまで読んで頂きありがとうございます!


 という訳で、今回の話は西門に配備されている兵士と騎士の話にでした。

 果して無数に押し寄せる敵を前に彼等はどのように戦うのでしょうか!?


 次回を待て!!

 という訳で次回もよろしくお願いします。

 ※指摘もそうですが誤字脱字ももし見つかりましたらご一報よろしくお願いします!


 では!

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