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46.造られた姿

 お今晩は。

 今回は一三が何故虫の姿だったのかの話になります。

 今回も他人称視点(三人称視点)での進行になります。

 ※ここからSF要素を入れ始めます。人によってはちょっとエグイ表現があるかもしれません。


 それでは、本編をどうぞ。



 ―ラーゼント王国・城内閣議室―


 ラーゼント王国の国王であるグレイル・ラーゼントを始め、各部門の責任者や各領の領主達が緊急招集という事で集まっていた。


 そして彼ら以外に、本来ならこの場所にいない筈の人間が二名参加していた。

 

「エノール女官長、聖女様がお目覚めになられたと聴いたがそれは事実か?」


「はい、その通りでございます」


 国王であるグレイルの問いに、いない筈の人間の内の一人であるエノールが事も無げに返した。

 しかし、グレイルはエノールの反応に違和感を感じていた。

 グレイルが子供の頃、エノールは彼の教育係でもあったのだ。

 それゆえに彼女の僅かな変化も感じ取る事が出来たのだ。


「・・・そして、目覚めた聖女様がそちらにいる翅の生えた赤毛の令嬢なのだな?」


 グレイルの言葉にこの場にいる多くのものが、エノールの横にいたもう一人の人物である赤毛の翅を生やした女性・・・一三に視線を移したのだった。


「はい、聖女様がお目覚めになられたと同時に御姿にひびが入り、現在の御身体が顕わになったのです。・・・そしてこちらがその時に御身を包んでいたから(・・)になります」


 目の前のデスクに、エノールが持っていた布で包まれたそれを露にする。

 それが提示されると部屋全体が(どよめ)いた。

 グレイルは周囲の驚きを余所に、出されたから(・・)と一三の翅を交互に見遣った。

 翅の方は僅かだが一三の呼吸に合わせる様に動いている、一三自身の身体は微動だにしていないにも関わらず。

 つまりあれは身体に張り付けたものではなく、しっかりと肉体から生えた別の器官として動いているのだ。

 故にグレイルは、自分の眼で見て確認した事と、エノールという信頼できる女官長の言葉を元に結論を出した。

 

 グレイルは徐に立ち上がった。

 すると周囲の騒めきが一斉に鎮火したのだ。

 彼はその足を一三に向けて一歩又一歩と歩き出した。

 

「へ、陛下っ!」


 誰かが声を上げるがグレイルは何処吹く風と聞き流し、遂には一三の目の前に大体人一人分の距離を空けて立ち止まった。

 そして、グレイルは一三に対して跪いた。


「聖女様、このグレイル・ラーゼント、今日迄の間に貴女様への御挨拶が出来なかった事大変申し訳ございませんでした」


 グレイルが出した謝罪の言葉に一同は目を丸くした。

 その驚愕の空気の中でグレイルは尚も続けた。


「それだけでなく、私共は自らの都合で貴女様を呼び出し、更には御身を「どうかっ!」」


 居ても立っても居られずに、グレイルの言葉を一三は切ってしまったのだった。

 これには事前に一部とはいえ、一三から話を伺っていたエノールも驚いていた。

 だが、周囲もグレイル自身も一三がグレイルの話を切った事には驚いていなかった。

 聖女が自身の意志を持って発言した事、そして今まで人の形で無かった者が言葉を発した事に驚いたのだった。


「・・・グレイル陛下、どうか顔を上げてください。」

 

 この言葉に謝罪をする側であるグレイルは従わざるを得ないと考え、一三の方へ顔を上げた。

 そこにはどこか苦しそうな顔をした女性がそこにはいた。

 

「グレイル陛下のお話を私の都合で切ってしまい大変申し訳ございません。ですが、どうか私の話を聞いて下さい、お願いします」


 今度は一三の方が頭を下げてしまったのだ。

 その行動に完全に面食らった状態になってしまった。

 その間も一三は話を続けた。


「私の話を聞いた上で、皆様がどうするべきか一度考えて頂きたいのです。どうかお願いします」


 一三の声を聴いた者は真っ直ぐな声の奥に、何某かの覚悟を、必死さを感じたのだった。

 彼女の意志が通じたのか、グレイルは先程までの跪いた状態からしっかり立って答えた。


「承知した。・・・お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ない」


 そう言って目礼をすると、自分の元居た席へと戻って行ったのだった。

 一三がそれを見て安心して小さな息を漏らしたと同時に、近くのエノールもまた息を漏らしたのだった。


 そして、グレイルが席に戻り一三に話を促したのだった。


「・・・それでは聖女様、どうか御聞かせ下さい。私共に聞かせるべき御話を」


「はい。まず私の名前は一三と言います。私の故郷は地球っていう星にある昔、日本と呼ばれていた国です」

 

「チキュウに・・・ニホン・・・か、クレスト室長。資料室にそのような記録はあるか?」


 自分達が持つ情報との符合、もしくは相違点を確認する為、グレイルは資料室室長であるクレスト・ファーリンに疑問を投げかけた。


「歴代の聖女様方がチキュウという大地ぃ・・・星ぃ・・でしたねぇ。そこから来たぁ、と発言が在ったことはぁ、記録にございますぅ」


 グレイルの疑問にクレストは自身の用意した資料を見ながら答えた。

 彼がここに居るのは先程の点の確認以外にも正確に一三の発言を一資料として記録し、しっかりと遺す為だ。

 一三の方も自分の発言を彼が記録し、グレイルが疑問にした内容も、自身の話す情報との関係性を確認する為のものと認識したため、特に何も発言せず彼等の会話が途切れるのを待ったのだった。

 

「続けさせて頂きます。私には兄が一人居まして、皆様が初代聖女と呼んでいる(はじめ)兄さんです」


「・・・ん?」


「・・・ヒトミ様ぁ、今初代聖女様であるハジメ様をぉ、兄上だと仰いませんでしたかぁ?」


「はい。一は私の兄です」


「・・・クレスト。“まず”初代聖女様がこの地にやって来たのはいつ頃だ」


「えーっとぉ・・・この国が258年前に建国されたのでぇ、そこから遡ってぇ、266年前が現在有力な説になってますぅ・・・あとぉ、ハジメ様は記録では女性でしたぁ」


「・・・ヒトミ様、本当に初代聖女様のハジメ様は貴方の血縁者で合っているのでしょか・・・?」


「はい。間違いございません」


 閣議室が何とも言えない空気になってしまった。

 しかし、一三は真っ直ぐにグレイルの眼を向け話を続けた。


「それに関して話す為に他にも説明しなければならない事があります」


 一三の眼には強い意志が宿っていた。

 グレイルはその気迫を感じ取り今一度話を聞くために口を閉じた。


「私の故郷である日本・・・いいえ、日本だけではありません。地球に存在していた全ての国々がとある存在に敗よって滅ぼされているのです」


「!・・・ある存在とは?」


 唐突な一三の祖国の滅亡を聞かされ、グレイル達は自国の今の状況である≪魔獣≫による侵攻が頭を過った。

 だがそれは彼らが想定していた物とも違っていた。

 一三は在る方向を見ていた。

 それは、自身を今日まで包んでいた殻に視線を向けていた。


「私達はその存在を昆虫人類、≪インセクタス≫と呼んでいました。・・・私の身体は彼等により、何度も何度も切り刻まれて、脳や心臓等の重大な器官を除いて全身を彼らに似せて造られました」


「なっ!身体をっ!」


「私だけではありません。他の聖女と呼ばれた人たちも同じく身体に手を加えられています。身体の一部が欠損した方や逆に多く生えていた人はいませんでしたか?」


 閣議室の空気は完全に凍り付いていた。

 歴代の聖女は確かに一三が言う様に身体に異常が見られたのだから。


「・・・では、初代聖女様のハジメ様は・・・」


「・・・はい。この世界に送還(おく)られる前に身体を弄られて・・・女性に造り替えられました」


 今回もここまで読んで頂きありがとうございます。


 遂に明かされ始めたこの物語の根幹。

 一体この世界はどうなってしまって、この物語は何処に着地するつもりなのでしょうか?


 次回をお楽しみにっ!


 ではっ!!


備考:流石に細かい設定を全部、会話に書き落とすのは間延びしますし、私の忍耐が持たないので、必要かな?と思う部分だけ私の独断と偏見の元今回の様に会話形式での説明をします。後は簡易書き程度と後書きに纏めたりで説明します。

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