40.鬼ぃさんは地下から現れた
お今晩は。
本日はマリー視点で進行していきます。
今回はエグイ表現は無いので安心してご覧ください。
「ヒトミ様、召喚の儀の間まであと少しですよ」
今、私達はヒトミ様と一緒に召喚の儀式の間へ移動中です。
「ありがとうございます。マリー様」
「いやぁ、私達には様付けなんていらないですよ」
「ですが・・・」
先程までたどたどしかったヒトミ様の言葉遣いは道中、私達(ほぼ私)が話しかけた為か、大分流暢になっていった。
その時に「様」「さん」の違いについてお気付きになられたようで、私達に「様」を付けてお話になるのです。
「いやぁ、本当に様付けはいらないんですよ? 聖女様であらせられるヒトミ様を身の回りの補佐をするのが私達の仕事でして、決して様付けで呼ばれるような立場ではないんですよ。・・・あと、様付けを容認してしまうと後ろにいらっしゃる女官長殿から私達に怒りの制裁が・・・」
「・・・聴こえていますよ? マリー・カーライル? あなたとは後でゆっくりお話しする時間が必要な様ですね。後、今のところあなたの勤務態度に関してだけしか怒った事はありませんよ?」
「ぐぅっ・・・!」
ヒトミ様とお話していたら、エノール女官長から威圧感を内包した言葉のボディーブローを叩きこまれてしまった。
・・・マズい。
これ以上この話題を続けるのは藪蛇以外の何ものでもない、話題を変えなければ・・・!
「あ~・・・それでヒトミ様、結局召喚の儀式の間には一体何用で向かっているのでしょうか?」
何とかエノール女官長の纏う威圧から逃れるために、私はヒトミ様に目的を訊いてみた。
その際、ヒトミ様の御顔が見れる位置にいたから私には確認できた。
「・・・はい、私のたった一人の家族が遺した物を受け取りに行きます」
「ご家族ですか?」
「はい・・・、遠い日に別れてしまった私の家族です」
ヒトミ様のご家族。
そう話された時、ヒトミ様の御顔には懐かしそうで寂しそうな、嬉しそうで悲しそうな、そんな色々な感情が綯い交ぜになった様な複雑な表情をしていた。
他の皆はヒトミ様の表情を見る事は出来ていないけど、言葉だけで十分に感じ入るものが有ったみたいだ。
だから私はヒトミ様を応援するように、そして私自身が目的を確認するために言った。
「その大事な物、絶対に見つけましょうね!」
私はそう言うとヒトミ様に笑顔を向けた。
何となく今ヒトミ様に必要なのは笑顔だと思ったから。
ヒトミ様はぽかんとした表情だったけど、直ぐに優しい笑顔になって応えてくれた。
「・・・はいっ!」
その目には薄っすらと涙が見えたけれど、悲しそうな雰囲気は何処にもなかった。
そうこうしている内に私達は儀式の間に到着した。
しかし、私達はそこで思わぬトラブルに巻き込まれてしまった。
儀式の間の入り口横には緊急時用の通路として地下牢を通って医療棟へ行ける直通の通路が隠されるようにして設置されている。
私達がその入り口を通り過ぎた後、突然その通路の方から凄まじい程の殺気が立ち込めた。
それを感じた私達は同時に動きだした。
流石にヒトミ様は武道の心得が無い様でオロオロしていたけど、それでも殺気を感じ取れるだけ素質はあると思う。
私とドリー、それからエルナが前衛を固める。
後衛はヴァーバラとヴァリロッサがこちら側を、バイセとエノール女官長がヒトミ様の直衛と周囲の警戒をしている。
そうして、全員が臨戦態勢に移行したところで、通路のドアが内側から吹き飛ばされたモノによって粉々に砕けた。
通路から飛ばされてきたのは人間の女性だった。
服装は医療棟で患者が来ているものだった、だが見えにくいが懐にナイフのような膨らみがある。
私はこの女性にも警戒をしつつ、通路側を注視した。
なぜなら、この膨大な殺気の持ち主が地下牢から姿を現したからだ・・・?
「・・・兄さん?」
私の視線の先には、麻で作られた囚人服をきて、今まで見たことも無いような程に顔を怒りに歪めた兄さんの姿だった。
今回もここまで読んで頂きありがとうございます。
お、鬼ぃさんが来た((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
みんな逃げろぉっ!!ころがされるぞっ!!
それでは次回もよろしくお願いします!
ではっ!!




