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39.檻を破るは怒り也


 お今晩は。


 遅くなり申し訳ございません。

 今回はミリスとベンジェフ視点で進行します。

 それと最後に挿絵が有ります。

 どうぞお楽しみください。

 

 え?クリスマス・イヴ?

 知らない子ですねぇ?(心底不思議そうな顔)


―ミリス視点―


「ハァ・・・ハァ・・・ぅ・・・ぐぅ・・・」


 暗がりの石畳を通りって召喚の儀式の間へと向かう最中、私が連れだした司祭が息も絶え絶えになり俯いた。

 ここは地下牢のいくつもある牢屋を通り過ぎて最後の牢屋を通り過ぎた辺り、目的地までは後もう少しで到着する程度の位置だ。

 しかし、澱んだ空気の中で動き回るのは年寄りには堪えたのか彼はそこで足を止めてしまった。

 上にある医療棟での仕事でも人間の血肉や汚物等の処理が有ったので問題無く行動できるだろうと考えたのですが、閉塞した空間で換気が無いような場所では想定以上に消耗しているのでしょう。

 ですが、こんな場所で足止めを食らう理由など私には無い。

 

「お立ち下さい・・・司祭様」


 声を出来るだけ低くして、語気を強めて司祭に語り掛ける。


「貴方が召喚の儀を行わなければこの国に住む人々は≪魔獣≫共の餌食になるのですよ?」


 目の前の司祭は息を整えながら弱々しく私に答える。


「君が・・・言っている事は・・確かに・・・正しいのかも・・しれない、ハァ、・・・しかし、聖女の召喚には・・国王と他の国からの承認と要請が必要なのです。・・・我々が独断で行う事は出来ないんだ・・っ!」


 彼の言葉を聞いて私は反射的に彼の胸倉をつかんだ。


「そんな事は知っています。私は今この世界にいる聖女が役立たずだからさっさとそんなものは見限って新しい聖女様を迎えるべきだと言っているのです」


 彼は私に胸倉を掴まれながらそれでも答える。


「!・・・聖女様はっ!・・・無理やりこの世界に連れて来られるのです!・・そして我々が聖女様を喚ぶ度にその御身体には・・・取り返しのつかない≪後遺症≫を残してしまうのですっ!!」


「それも知っています。ですが私達はそんな事を言っている場合では・・」


「私はっ!・・・あの日、今代の聖女様を召喚した一人なのです・・・。聖女様の御身体をあの様な異形にした人間なのです・・・。私は・・・もう・・・誰も召喚したく・・・ないのです」


 そう言ってこの司祭は懺悔をする様に涙を流しながら私に懇願して来た。

 この司祭は何を言っているのだろう?

 聖女を異形にした・・・?

 

 確かに聖女様に関してはかん口令が敷かれているらしく、末端の兵である私達に流れていた情報はオールデン領で≪魔素溜り≫を浄化してその後に倒れてからそのままという事だけだった。

 国民へのセレモニーを使っての紹介も無ければ私達もどのような人物かの情報すら来ていない。

 私が思考を巡らせる中、司祭は続ける。


「本来なら我々は・・恨まれるべき存在なのです・・・。歴代の聖女様方に関しても・・・我々が憎まれても致し方無いのです・・。ですがっ!聖女様方は共通して個が欠落されている為に・・そんな事すらも考えられない。・・・にも関わらず・・今代の聖女は・・・この国を・・世界を護る為の犠牲にっ!」


 司祭は涙を流して自身の無力さを嘆いている。

 私がバークライドの死を嘆く様に。


「・・・関係ない」


「・・・」

 

「関係ないっ!」


 私の口からは次々と言葉が衝いて出た。


「そんなの関係ないっ!私達は私達の事を考えていればいれば良いっ!」


 私の考えは正しい。


「別の世界がどうとか考える必要も無いっ!生きる為には何でも使うのが正しいのよっ!」


 聖女なんて。


「聖女なんて、個が無い時点で人じゃないっ!」


 所詮。


「ただの道具よっ!!」


 ガシャンっ!!


 私達が通って来た通路から・・・牢屋から鉄柵が音を立てた。



―ベンジェフ視点―


 二人。


 この地下牢を歩く二人の人間の足音が聞こえてきた。


 一人は老人だろうか、体力が消耗しているようで足音に力強さも無く、覚束無い足取りだ。

 もう一人は足音こそ小さくしているが足取りに迷いはなく、老人に合わせているせいで途切れ途切れだが一定の間隔で歩いているようだ。恐らく女性の兵士か騎士の可能性がある。


 誰かへの面会かと思い暫く静かにしていたのだが、一向に他の牢屋に入る事が無い。

 というよりどんどん俺の入っている端の牢屋へ近づいて来ている様でもある。

 俺は警戒するように自身の気配を殺して様子を窺った。


 そして、俺の牢屋を通り過ぎた頃に老体が体勢を崩したのか二人は動きを止め言い合いを始めた。


「貴方が召喚の儀を行わなければこの国に住む人々は≪魔獣≫共の餌食になるのですよ?」


 今あの女は何と言った?

 ・・・召喚の儀?


「そんな事は知っています。私は今この世界にいる聖女が役立たずだからさっさとそんなものは見限って新しい聖女様を迎えるべきだと言っているのです」


 これは今代の聖女様の事か・・・?

 あの女は聖女様を役立たずと言ったのか・・・?

 あの場所で、オールデンで他者の為に自身を犠牲にしたあの方の事を・・・。


「そんなの関係ないっ!私達は私達の事を考えていればいれば良いっ!」


 関係ない訳が無いだろう。


「別の世界がどうとか考える必要も無いっ!生きる為には何でも使うのが正しいのよっ!」


 正しい訳が無いだろう。


「聖女なんて、個が無い時点で人じゃないっ!」


 間違い無く人間だよ。

 あの御方は。


「ただの道具よっ!!」


 ガシャンッ!


 その言葉を聞いた瞬間俺は鉄柵を掴んでいた。

 

 バギッ!!


 掴んだそれを開いて(・・・)俺はあの女に向けて一言だけ喋った。


「お前が聖女様の敵かっ!!」


挿絵(By みてみん)


 本日もここまで読んで頂きありがとうございます。


 遂に王国最強の騎士であるベンジェフがブチ切れました!

 ミリスはどうなってしまうのか!

 そしてこの物語はどこに着地するのでしょうか!?


 はい。


 それでは次回もお楽しみに!

 ではっ!

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