32.白い記憶
白だ。
私の目には白が映っている。
私は仰向けになっている。
つまり目に映る白天井という事だろう。
身体を起こしてみる。
今気づいた。
私はベッドの上にいたんだ。
ベッドもシーツも枕も白だ。
ふとベッドの横を見てみる。
白い机に白い椅子。
誰かが座ってこっちをみている。
誰かが私に笑いかける。
私はこの人を・・・誰かを知っている。
名前が出てこない。
どんな人なのか思い出せない。
この人との・・・思い出が・・・出てこない・・・。
私は悲しくなった。
苦しくなった。
辛くなった。
・・・涙が溢れてる。
私の目から零れてくる。
これ以上零れない様に上を向きたいのに頭が上がらない、胸を反らせない。
音が出る。
私の喉から口を通して音が出て息が途切れる。
声にならない、押し殺したような音が止まらない。
頭に何かが当たる。
何かが頭の上でゆっくりと動く。
私の頭を何かが撫でている。
少しだけ・・・少しずつ、呼吸が、胸が、心が、楽になった。
私の顔は簡単に上がった。
私の頭を撫でていたのは誰かだった。
違う。
誰かじゃない。
私はこの人を知っている。
この人は・・・わたしの。
・・・大切な家族。
「一お兄ちゃん・・・」
たった一人の私の家族。
一お兄ちゃんが私の頭を撫でながら私に言った。
「一三、大きくなったね。・・・本当に大きくなって、お兄ちゃん嬉しいよ。」
一お兄ちゃんが私に微笑みながら言う。
「一三、僕からお願いがあるんだ。・・・僕が遺したものがそこにあるんだ」
私の目からまた涙が溢れてくる。
「それに触れて欲しいんだ。・・・うん、そうだね。触れるには起きなきゃだめだよね」
私はまた一お兄ちゃんと別れないといけないと思うと、また苦しくなった。
「大丈夫だよ。・・・今はまださようならだけどね」
一お兄ちゃん・・・。
「また、会えるから・・・」
「本当に・・・?」
「あぁ、本当さ。だからもう起きなさい」
意識が薄れていく。
ううん。
意識が上がっていく。
「一三、君には僕だけじゃない、いろんな人達が近くに居るんだ」
・・・。
「だから、いってらっしゃい。・・・またね」
一お兄ちゃん・・・。
・・・またね。
色が見える。
世界が色づいたみたいに明るい。
私は一三。
この世界に喚ばれた聖女だ!




