24.ラーゼント王国資料室からの報告書
いらっしゃいませ、皆様。
今回は≪瘴気≫≪魔獣≫≪魔素溜り≫の説明回です。
ラーゼント王国の資料室からの報告書という形で進行していきます。
-ラーゼント王国 国王執務室-
「・・・これで全部か?」
この部屋の主は机に並べられた三冊の綴じられた報告書を見やりながら、その場にいる男性に対してそう問いかけた。
部屋の主の名はグレイル・ラーゼント。
ラーゼント王国を統治している現国王である。
彼は金色の短髪を掻き上げた髪型にカイゼル髭を蓄えている。色白ではあるものの、がっちりしたその体躯からは決して一般的王侯貴族の持つ軟弱さを感じさせない。
彼が話し掛けた人物は城内にある資料室の室長、クレスト・ファーリン。
彼の容姿はやせ細った身体に土気色の肌、頬はこけて目の下に隈、口元の左半分はまるでそう固定されている様に下に下がり歯が剥き出しになっている。
顔中がニキビだらけで頭髪は灰色、一見して何某かの病気もしくは過労による体調不良が見て取れる。
しかしながら本人曰く、生まれてずっとこのような風体なので、体調などは何の問題も無いとの事である。
「はいぃ、陛下ぁ。ウチの資料室に挙がってきた報告書と代々の司祭長様に受け継がれていた書物ぅ、これらで全てですぅ」
唇が半分閉じない為か、空気が抜けるような発音でクレストがグレイル王の問いに答えた。
「そうか・・・、今回のオールデン領から発生した『瘴気』と『魔獣』の出現、これらの原因につながる情報は無かったか・・・。」
グレイルはそう呟きながら机にある報告書に目を移した。
『瘴気と呼称される物質について』
我々が≪瘴気≫と呼称される物質が確認されだしたのは≪魔獣≫の発生時期と同じく、第十二代目聖女イスナーシャ様の浄化が終了した25年後である。
隣国のトーバック王国から北西に存在するミゼント湖、その周囲を囲む形で発生した。
この場所は第六代目聖女シェス様が浄化を行った場所である。
これ以降、代々の聖女が浄化を行った場所からこの≪瘴気≫が発生が確認された。
≪瘴気≫は植物に寄生し、その宿主の葉に当たる部分から霧状に散布される。
散布された≪瘴気≫はゆっくりと地面に落下して行き、植物と接触した場合はそこから広がり、『瘴気』の媒体になりその勢力を増やしていく。
地面に接触した場合は数秒ほどその場所に維持され、その後消滅していた。
接触した土に植物を接触もしくは植付けをしても≪瘴気≫は確認されなかった。
対処法は、≪瘴気≫を拡散されない様に寄生されていない周囲の植物を駆除、その後寄生された植物を焼却処分する事が有効である。
焼却した時に発生した煙や灰には≪瘴気≫と特性は確認されていない。
注意点は≪瘴気≫に直接触れない様にしなければならない、人体に接触した場合≪魔獣≫化の様な変化は無いものの、体力の減退や痛みを伴う。
『魔獣と呼称される敵対生物について』
我々が≪魔獣≫と呼称される生物が確認されだしたのは≪瘴気≫の発生時期と同じく、第十二代目聖女イスナーシャ様の浄化が終了した25年後である。
隣国のトーバック王国から北西に存在するミゼント湖、その周囲で確認された。
この場所は第六代目聖女シェス様が浄化を行った場所である。
これ以降、代々の聖女が浄化を行った場所からこの≪魔獣≫が確認される様になった。
≪魔獣≫は≪瘴気≫に接触した動物が変化した存在である。
植物に寄生した≪瘴気≫が霧状になり、次に動物に接触した後に肉体に変化を促し≪魔獣≫化へと至る。
≪魔獣≫化した動物は体毛や血液が黒く変色し、眼球全体が黄色に濁る。最も特筆すべき特徴は、≪魔獣≫化した動物は元が臆病で戦闘能力や狩猟能力が無くても≪魔獣≫化していない動物を襲うようになるという点である。
幸いにも≪魔獣≫に傷を負わされても≪魔獣≫化はしない事が確認されているが、変色した体毛は硬化され、骨の硬度や剛性の上昇、筋肉も増加した事により本来の姿では有り得ない力を備えている。
その代わりに本来の姿なら持ち得ていたであろう、知性は欠如しているのか自身を傷つける障害物でもない限り、目標物にひたすら突っ込んでいく様である。
とは云っても大きさもまばらな獣が数で押し寄せ、恐れも無く突撃してくると正規の兵士でも対処しずらく、更には一個体ずつが強化されてこちらからの攻撃が通り辛く、その為に被害は確実に広がっているのが現状である。
現在、人間若しくは熊等大型動物の≪魔獣≫化はいまだ確認できていないが、四足の獣や小型動物の≪魔獣≫化は確認している。
『魔素溜りに関して』
≪魔素溜り≫、この現象についての原因や経緯については全く解明されていないのが現状である。
≪魔素溜り≫自体は目視で観測する事自体は可能であるが、突発的に場所を選ばず発生する事から我々だけで発見する事は難しいとされている。実際、各代の聖女様が示した場所で≪魔素溜り≫を発見する事はあっても、我々独自での発見には至っていないのである。
目視で確認した場合、そこに明確な物体は無く空間に折り目があるように景色がズレて見える。
その為に発生しているのかは不明であるが、各地で前触れも無く嵐や渇水、干ばつが発生している。
これらの関連性は初代聖女様が浄化を多くの人間が見ている前で行い、それ以降観測されなかった事に起因している。その後、初代聖女様が遺した聖女召喚の儀により召喚された聖女様達の積み重ねてきた功績から、これらの関連性は疑いようもない事実であるとされた。
「・・・資料室からの情報には現状を変えうる情報は無いか」
グレイルはそう呟いた。
「基本的に我々が管理しているこれらに関しての情報はぁ、我々自身の経験による側面の情報しかありませんのでぇ、申し訳ないですぅ」
クレストはグレイルのつぶやきに対してそう謝罪した。
「いや、お前達はよくやってくれている、≪瘴気≫への対処法もそもそもお前達が発案したものだ。これが無ければもっと被害は広がっていただろう。」
その謝罪にグレイルはその必要は無いと論した。
「・・・勿体ないお言葉ですぅ」
クレストはグレイルの言葉に謝辞を述べたのだった。
その言葉を聴いてグレイルは自らの無力さを嗤う様に
「我々に出来る事は本当に微々たるものだな・・・、聖女様が王都を出発して二日目にオールデン領の方角から天へと伸びた光の柱、あれが何を意味しているのかすら解らんか・・・」
と呟いた。
コンッ!コンッ!コンッ!コンッ!
そこへドアをノックする音が聞こえて来た。
「陛下、騎士団副団長のパース・カンゼル様がオールデン領に関してのご報告に参られました。こちらにお通し致しますか?」
執務室の扉の向こうから側仕えの声が聴こえて来た。
「!・・・分かった通せ」
グレイルは側仕えにそう答えた。
「畏まりました」
側仕えがそう答えた後、扉が開き一人の騎士が入ると跪いた。
「騎士団副団長、パース・カンゼルであります。現地に赴いたベンジェフ騎士団長よりオールデン領に関しての報告に上がりました」
用向きを確認したグレイル頷き
「うむ。パース副団長、面を上げ私に報告せよ」
促されたパース副団長は一言「はっ!」と返事をして顔を上げ、報告を始めた。
「オールデン領にてベンジェフ騎士団長率いる三個連隊ですが、到着時にオールデン要塞は健在である為当初の作戦通り現地の領兵との共同で防衛作戦を展開する予定でした。ですが作戦前に予期せぬ事態が発生し更に聖女様のご意思により、戦力の大半を要塞の防衛に回し敵魔獣の陽動を行い、聖女様率いる少数で原因の究明及び可能ならば排除のために森林内へ進撃いたしました」
この時点でグレイルも横にいるクレストも我が耳を疑った。
「待て。つまり聖女様自身で森に入る事をお決めになり、そして騎士団長もそれに同調するように作戦を変更したと言うのか?」
グレイルがパース副団長に問うと少し間を置いた後に肯定した。
「・・・はい。故に騎士団長は王都へ帰還した後、この戦いの全ての責任を取る為自身を拘束して欲しいと報告に有りました。・・・報告を続けます。その後森林に内で≪魔素溜り≫を確認、聖女様の浄化によりこれを消滅させる事に成功。それと同時に≪瘴気≫、≪魔獣≫も消滅を確認しました。先日オールデン領にて光の柱が現れたのも聖女様浄化によるものであると報告されています」
その報告に驚愕し、グレイルは声を震わせながら再度パース副団長に確認した。
「何と・・・。ではこれで≪魔素溜り≫の問題は・・・」
グレイルの言葉にパース副団長は頷き、答えた。
「はい、恐らくは解決と見てよろしいかと・・・、むろんその確認作業に警邏の騎士団を当たらせようと考えております」
そして、パース副団長は悲報を伝えるかのような声色で報告を続けた。
「その浄化の後、聖女様が絶叫を上げながら全身から血を吹き出しお倒れになったそうです。ご存命ではありますが、今も意識が戻らぬとの報告です」
≪魔素溜り≫の問題が解決した事と同等の衝撃がグレイルやその場にいたクレストの身体を襲った。
ここ迄読んで頂きありがとうございます。
また今回も投稿に時間が掛かり申し訳ありませんでした。
これまでの物語と矛盾はないかな?と考えながら書いていたら予想以上に遅れました。
しかも、今更ながらおかしな点に気付きまして、・・・実は≪瘴気≫君について、序盤から記入ミスで丸々載せていませんでした!
本当に申し訳ございません!
後日改めて修正しますん。
もう、ひどいミスでぐうの音も出ません。
本編まだまだ続きますんでもうしばらくお付き合いください!では!




