哲学者フィーネ
更新が遅くなり、大変申し訳ないです!
今回から第2章になります!
宜しくお願いします!
仲間集めの旅に出て1週間が経過したとある昼下がり、俺たちは宮崎県の高千穂峡に来ていた。
「なぁ、そういえばウズメノミコトをどうやって見つけるつもりなんだ?」
俺のように天使が側にいるのだろうか?
「ウズメノミコトにも記憶の改竄は出来ません。それを逆手にとって見つけます」
「どうやって?」
「そうですね、例えば私達を見かけたら、さり気なく頭を触るとかそんな感じですかね」
なるほど、何もアクションを起こさなかったらそれがウズメノミコトなわけだ。
「そんなこともできるんだな」
「えぇ、特別な器に関しては記憶の改竄が基本的には出来ませんので」
「なんで記憶の改竄が出来ないようになっているんだ?」
良いことだとは思わないが、改竄出来た方がみんなすんなりと協力してくれそうに感じるが...
「考えても見てください。それを敵に知られたとしたら、逆手に取られたら厄介な事になるでしょ?」
「あぁ...確かにそれは厄介だ」
気が付いたらみんな敵でした!
なんてオチは絶対嫌だ。
「ところで今日はこれからどうする?」
「まずは宿を探して、その後はせっかくなので下見も兼ねて高千穂観光でもしましょうか」
今後の流れを聞くとフィーネはそんな風に答えて来た。
高千穂に来るまでの道のりも、フィーネの記憶の改竄という能力を使ってヒッチハイクをしたり旅館に泊まったりと、殆ど傍若無人な方法でやって来た。
これからもその手法で行くのだろう。
ちなみにフィーネは【記憶の改竄】の事を【リライト】と呼んでいた。どうやら英語のrewritingから来ているらしい。
それからリライトを使ってヒッチハイクを行い、高千穂神社の近くまで来た俺たちは、すぐ側に個人経営だろうか、こじんまりとした旅館を発見した。
フィーネがフロントに行き
「今日予約していた後藤ですが...」
と伝えると、すぐに部屋が準備された。
つくづくリライトは便利で、同時に恐ろしいと俺は感じた。
仲居さんに通された部屋は、お世辞にも綺麗とは言えなかったが、よくある普通の部屋だった。
荷物を置いて、とりあえず一息つく。
フィーネが窓から外を眺めている。
窓から見える景色は田舎そのものであったが、どことなく雰囲気を感じる。
流石は天孫降臨の舞台といったところだろうか。
「では、早速観光に行きましょう!」
さっきまでの落ち着いた様子はどこへやら、ソワソワした感じでフィーネが提案して来た。
「そうだな、このまま座っていたら動きたくなくなりそうだ。その前に下見に行くか!」
俺はそう返事して、必要最低限の準備を行った。
旅館を出た俺たちは、人の流れに従って高千穂を観光して回った。
テレビでよくあるようなパワースポットには平日の昼間にも関わらず、大勢の観光客で賑わっていた。
至る所に観光客スポットがあり、「鬼八の力石」や神社には人集りが出来ていた。
やがて高千穂の代名詞とあって良いであろう、ボート乗り場にやって来た俺たちは、せっかくなので乗ってみる事にした。
フィーネは「当然男の貴方が漕ぎますよね?」と言わんばかりに無言でオールをこっちに渡して来た。
おれが必死でオールを漕いで出発するが、コントロールななかなか難しく、初めのうちは同じところでクルクルと回ってしまう。
フィーネが「何やってるんですか不器用ですね...」なんて小言を言っているが、「それならお前が漕いでみろよ」と心の中で悪態を言うくらいしか出来なかった。
しばらくしてようやくコツを掴んで進み始める。
なるほど、これは絶景だ。
左右に見える柱状節理の岩肌は、まるでそうなるように作られたのだと思ってしまうほど見事なものであった。
「これは確かに凄いな!荘厳な雰囲気っていのかな、言葉では表現できないな!」
フィーネに話しかけるが、返事がない。
何か考え事をしているように遠い目をしている。
「おい、フィーネ!どうしたんだ?」
「いえ、すみません。人は賢く、愚かだと思いまして...」
いきなり哲学チックな答えが返ってきた。
完全に予想外の返答に戸惑う俺。
「いや、いきなりどうしたんだ?フィーネ、お前時々変なこと言うよな」
「急にそう感じたのです。人は自分に無い物を欲しがろうとします。それは時に妬みにもなり悪とされますが、その結果として人類は大きく文明を発展させました。」
フィーネの哲学講演が始まってしまった。
こうなったらもう止まらないな。
聞くしかないか...
「人は魚のように海を渡れないから船を作り、翼がないから飛行機を作りました。
それは昔から変わらぬ人の定めなのでしょう。時に妬みを買ってしまい、不幸な事が起きたりもします。しかしその意思は受け継がれ人類は発展してきました。」
うん、難しくてよくわからない....
「人は個々で見ると、愚かで弱い生き物ですが、種として見ると賢く強い生き物と言えるでしょう。これは稀有な存在といっていいです。」
フィーネが「うん」と、一人で講演して一人で納得していた。
俺は、途中から話を聞かずに景色ばかりを見ていた。
とりあえず、今度からフィーネの事を哲学者とでも呼ぼうかな。
独特の雰囲気を出している二人を乗せた船は、発着場への帰路に着いた。




