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終末の飛来  作者:
第一章:胎動編
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ルシファーと天界大戦 ③

 あれから数百年の時が流れた。


 敵はどういうわけか、あれからは侵略をしてこなかった。


 天使達は修練を積み事態に備えていた。

 多くの者は地上に降り、人間になりすましていた。というのも、天使達にはこれまで戦いという物を経験したことがほとんど無かったからである。


 ルシファーを筆頭とする熾天使達も初めはそうしていた。


 しかしあっという間に人間を追い抜いてしまい人間では誰も太刀打ちできなくなっていた。


 それからというもの、世界を周り強い生き物や天界でお互いに勝負したりして訓練に明け暮れた。


 やがて地球において一度目の審判の日が訪れる。審判といっても、神ですら結末はわからなかった...。


 それはドス黒い雷雲と共にやってきた。

 空一面を真っ黒な雷雲が覆っていたのだ。

 太陽の光すら届かず、昼間にも関わらずまるで夜を迎えているようだった。


 地上の人間達はどよめき騒ぎだった。

 生まれて初めて見る光景に。

 世界の終わりを予見させる光景に。


 天使達はすぐに行動を起こし、絶句した。


  雷雲の中に大勢の敵の姿があったからだ。

 それはどこを攻めている、ではなく()()()()()()()()()()事を意味していた。


 天を覆う雷雲から強大な規模である事は予想はしていたが、まさかこれ程までとは思いもしていなかった。


 天使達は一様に言葉を失い、絶望感に似た物を感じていた。天使も万能の神ではない。むしろ神ですら万能ではないのだ。


 天使達が絶望するのも無理からぬ事であった。


『何を絶望する必要がある!どれだけ敵が多かろうと、どれだけ強大だろうと討ち取り続ければいいだけの事だ!そうすれば絶望は敵へと移り、やがて退散するだろう‼︎』


 ルシファーの檄が飛んだ。


 その言葉を聞いた天使達は己を鼓舞し、覚悟を固めた。


 しかしその瞬間予期せぬ事が起きた。


 光の槍が飛んできて仲間の天使の一人の胸に突き刺さったのだ。


 刺された天使は驚きの表情を浮かべながら、石化してまい、それを見た天使達は恐怖に支配された。


 天使達は寿命という概念が無く、死ぬという事を考えた事が無かったのだ。皆、戦いになれば命を落とす可能性は考えてはいたが、今それが目の前にあり、可能性が現実味を帯びていた。


 それもおそらく間違いなく起こるであろう現実として。


 死という現実を受け入れられず、熾天使を含む一部の天使を除いて天使達は逃げ出した。

 そんな天使達に光の槍は容赦なく襲いかかった。


 統制の取れなくなった軍にルシファーは最早どうする事も出来なかった。


 瞬く間に地上も、そして天空も闇に覆われていく。


 まさにこの世の終わりであった。


 と、その時であった。


 一粒の水が空から落ちてきた。

 やがてそれは2粒、3粒となり、やがて大雨となった。それは比喩ではなくまさにバケツをひっくり返した様な滝のような大雨。


 それでも侵略は止まらない。


 やがて大雨は地球を覆うようにすべての地で降り注いだ。とどまる事を知らない雨は7日7晩続き、やがては世界を水で覆った。


 流石の敵も、水で覆われた世界に興味を無くしたようで、地球から去って行った。


 こうして世界は一度滅びの時を迎えた。


 残された天使達は天界へと戻った。精神に大きな傷を負い、変わり果ててしまったルシファーを引き連れて。


 天界へ戻ると神が待っていた。


 ミカエルは神へ尋ねた。

 この雨は貴方が起こしたのか?と。


 神は肯定した。この雨は世界の防衛の最終手段であり、自ら世界を壊しゼロへと戻すものであると。そして新たに世界を作り直すものだと。


 天使達は納得出来なかった。

 世界を滅ぼすのであれば敵に滅ぼされても同じではないのか?その疑問が脳裏をよぎった。


 神は全てを見据えたかのように答えた。


 敵の手に落ちれば、二度と主導権は握れず、世界を再興する事も叶わないと。


 そしてこう付け加えた。


『何も全てを滅ぼしたわけではない。

 確かに文明などは滅びた。

 生物もその殆どが死に絶えた。

 しかし全てではない。

 生物は少しではあるが生き残っている。』


 皆、神の言われていることが理解できなかった。


 現に世界は滅びた。生命もだ。


 神は説明した。


『数百年前からこの事態を想定していた。

 もちろん、回避出来ればそれに越したことはない。しかし回避できなかった時のことも考慮する義務が自分にはあった。

 だから、最終手段を作った。


 ソドムとゴモラで自分の啓示を愚直に聞き届けた者に再び啓示を与えた。


 大きな船を用意し、全ての生物をそこに納めるようにと。寿命もその分に長くすると。


 男は、またも期待に応えてくれた。

 すぐに船の建造に取り掛かり、数百年の時を経て完成させた。


 そして、世界の全ての生物に啓示を出し、集め、船に乗せた。』


 その話を聞いたミカエルは天界からその船を探した。他の天使達も一緒に。ただしルシファーだけは探そうとはしなかった。


 やがてミカエル達は船を見つけ、世界が真に滅びたわけではないのだと知り、安堵した様子で戻ってきた。


 神は後始末があるという事で、どこかへ行かれてしまい、天界には天使達だけが残された。


 これからの事をどうするべきか考えようとした正にその時、ルシファーが口を開いた。


『私は世界を守護出来なかった。

 このまま天使の長でいる事は出来ない。

 コキュートスへ行き、しかるべき時までこの罪を贖い続ける。』


 天使達は驚いた。

 これまでルシファーは神の為に、世界の為に、そして自分たち天使の為に尽力してくれた。できる限りを尽くしてくれた。


 そのルシファーに責任を取らせるわけには行かない。これからも皆の先頭に立ってもらわなくては困る。


 それぞれがそう説得するが、ルシファーは聞く耳を持たなかった。


 やがてルシファーはコキュートスへと続く道へ飛び立つ。ミカエルが必死に止めようとする。もちろん他の天使達もだ。


 やがてそれは戦いになる。


 コキュートスへ()()()()()()()()()()()()()()()()()()ミカエル達天使軍。


 しかし、決意が固まり本気になったルシファーを止める事は熾天使達にも出来ず、戦いはルシファーが勝利し堕天する結果となった。


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