第38話 妹ミリー誕生
――一月後。
キャロライン村のぶどう棚が完成した。
ジュリアン・ジュベール様の領地から引き取った家族が指導をして、村人総出で作業をした。
父さまも材木を手で支えたり、コンコン釘を打ったりして率先して作業をしていた。
私は変換スキルを使ってひたすら材木作り。
私が思っていたより材木を沢山使ったんだよね。
魔物や動物避けに柵を作ることになったし、移住してきた家族の家も作らなきゃならないしで、大量の材木が必要になったの。
あっ、ちなみに釘はサイドリバーの隣町で買えた。
銀貨五枚で。
鷲鼻のホセの店で提示されたのは金貨五枚だもん。
あの値段はないよねぇ~。
一軒しか店がないからあんな居丈高に振る舞うんだろうね。
うちの領地ではホセの店には行かないで、急ぎの買い物はサイドリバーの隣町で、急ぎでない場合は父さまと私がニューゲートの町で買い物することにした。
さて、みんなで頑張ったおかげで、ぶどう棚が沢山出来たよ!
「ベル! お願い!」
「はーい! 任せて~! 大きくなあれ! 大きくなあれ!」
妖精のベルがぶどうの苗木の生長を促すと、苗木がどんどん伸びてゆく。
苗木が太くなって枝が伸びつるが伸びる。
ぶどうの枝やつるが自分からクネクネ動いてぶどう棚の支柱や渡し木に絡まって伸びて行く。
村人たちから歓声が上がる。
「ここで見たことは内緒だぞ!」
「内緒にしてね。他所の人に話しちゃダメよ」
父さまと母さまが村人たちに釘を刺して回っている。
ベルも力を貯めなきゃならないから、そう何回も出来るものではないけど、あまり他に知られたくない。
口止めをして正解だよ。
やがてぶどう棚に沢山のぶどうがなった。
「うわ~! 美味しそう!」
私はベルと一緒にぶどう棚を眺めながら歩く。
日本でお馴染みのデラウェア、巨峰、シャインマスカット。
皮ごと食べられるオーストラリアのぶどう、シードレス。
赤ワイン用のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール。
私は前世でワインが大好きだったので、赤ワイン用のぶどうも変換スキルで苗木を生成したんだよ。
それから干しぶどうようの皮の薄い品種トンプソンシードレス。
「ねえ、キャリー! どれを食べる?」
「そのシードレスがいいな」
「これね! えい!」
私がシードレスを一房指さすと、ベルが飛んでいき魔法で茎を切断した。
「わああ! 重いよ~!」
ぶどうをぶら下げたベルがヨタヨタと飛ぶ。
私は慌ててベルを両手で受け止めた。
「父さまも母さまも食べよう!」
私は父さまと母さまを呼んで、ベルと四人で食べた。
シードレスは皮ごと食べられる品種だ。
口に入れて噛むと、ブシュッと果汁が溢れる。
ちょっと甘クドイ味なんだけど、この濃い目の甘さが好き。
「おいちい!」
「ん~! キャリー、これ美味しいわね!」
私とベルがキャッキャとはしゃぐ。
父さまと母さまは、ぶどうを口に入れてゆっくりと味わっている。
「ああ……、豊かな味がするぶどうだね……」
「ええ……、とても美味しいわ……」
二人の言葉に万感の思いがこもっていた。
王都の貴族社会から何もない新領地にやってきていちから畑を耕し開拓村を作ったのだ。
貴族のお坊ちゃん、お嬢ちゃん育ちの二人には筆舌に尽くし難い苦労だったのだろう。
私の変換スキルやベルの助けが大きいのはもちろんだけど、二人が土にまみれて働き、領民たちを引っ張って来た事実は変らない。
二人に何て声を掛けよう。
お疲れ様は何か違う。
私は二人に祝いの言葉をかけた。
「父さま、母さま、おめでとうございまちゅ。キャロライン村のぶどう畑が出来たのでしゅ。これから毎年ぶどうが食べられましゅ。ワインも出来ましゅ、干しぶどうも。父さまと母さまが頑張ったからでしゅ」
二人は私の言葉を聞いて感じ入っていた。
「そうだね、キャリーありがとう」
「キャリーのおかげよ。ありがとう」
ああ、私も頑張って良かった!
色々あったけど、これからも頑張ろう!
*
――季節は流れて秋。
母さまは出産のために家にこもっている。
村の女衆が出産のお手伝い。
私と父さまは守り木のそばでソワソワしている。
私の頭の上で寝そべっていたベルがピクッと動いた。
家の方から元気な泣き声が聞こえてきた。
「父さま!」
「キャリー! 生まれたんだ!」
私と父さまは家に急ぐ。
家の扉が開いた。
マーサおばさんが汗を拭いながら告げた。
「おめでとうございます! 元気な女の子ですよ!」
女の子! 妹だ!
私と父さまは、家に入る。
母さまがベッドに横になっていた。
母さまの腕の中には生まれたばかりの赤ん坊がいる。
私は父さまにベッドに乗せてもらって赤ちゃんを見る
くちゃくちゃだ。
くちゃくちゃでカワイイ!
「マリー。ありがとう」
「アラン。名前を付けて」
「名前は考えてある。この子の名前はミリアム。ミリーだ」
ミリアム……ミリー……。
私の妹の名前。
初めての妹。
前世日本でもいなかった。
「ミリー。お姉ちゃんだよ」
私はミリーに呼びかけた。
ミリーは目をつぶって息をしている。
「ミリー……」
そっとミリーの手をなでると、ミリーが私の指をギュッと握った。
「はわあああああ!」
な、なんてカワイイ!
私の妹スーパーかわいい!
絶対に圧倒的にかわいいいいいいいいいいいいいいい!
世界で一番可愛い妹ミリー。
私は飽きることなく、ずっとミリーを見ていた。
今話で第二章(二歳)は終わりです。
第三章(三歳)に続きます。
第二章は長くなってしまったので、途中で章を新しくしても良かったかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございまた!
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では引き続き第三章をよろしくお願いいたします。





