第29話 材木の山
「へんかーん! 丸太の杭!」
私が変換スキルを発動すると、巨木が金色の魔力に包まれてフッと消えた。
そして目の前に沢山の丸太の杭が山のように現れた。
何本あるだろう?
100本くらいあるのかな?
魔の森の木は大木を通り越して巨木だから、一本あたりからとれる材木の量が多い。
多いというより大量だ。
丸太の杭はイメージ通りの大きさで先端が尖っている。
これなら地面に埋める時に作業しやすいだろう。
私はイメージ通りの材木が生成できたことに満足した。
「おお! キャリー! これは! 素晴らしい!」
「うえっ!? お嬢の新しい魔法ですかい!?」
父さまが歓喜の叫びを上げ、ヨーナスが驚いている。
とりあえず説明は後だ。
次は梁にする角材が欲しい。
私は角材もイメージをしっかりと脳内に作ってから、魔の森の巨木に手をかざす。
「へんかーん! 角材!」
同じ光景が繰り返されて、角材が地面に山になった。
イメージ通りの角材が出来上がった。
「父さま。この材木でぶどう棚を作ってほしいの」
「キャリー! 素晴らしいよ! これならぶどう棚を作れる! それから、この魔法は桃を出すのと同じかい?」
「そう。魔法が良くなったから出来るようになったの」
正確には神様からいただいたスキルだけれど、私は魔法ということで子供らしく大雑把な説明をした。
父さまはウンウンとうなずいて、材木でなく魔の森の方を見ている。
そして、ヨーナスに私を見ているように申しつけると、巨木が消えた地点でしゃがみ込み何かを確認している。
何だろう?
すぐに父さまは戻ってきた。
「キャリー。この魔法は一日に何回くらい使えるのかな?」
「いっぱい」
「いっぱいか。沢山魔法を使えるんだね?」
「あい!」
変換スキルを使用して巨木を材木に変換する場合、私から引き出された魔力は、MPに例えるとMP200だ。
雑草を桃やリンゴに変換する時は。MP10だったので、かなりのMP消費量だ。
ただ、今回の場合は変換元となる物体が巨木で質量が大きいからかもしれない。
MP200を二回で、MP400を消費した。
以前の私だったら考えられないほど大きな魔力だが、魔力の蓋が開いて莫大な魔力を得た今では大したことない。
何回だって変換スキルで巨木を材木に出来る。
「父さま、どうしたの?」
私は父さまの動きが不思議だった。
ぶどう棚用の材木でなく、巨木が消えた地点を気にしていたからだ。
父さまは、目をランランと輝かせている。
「今、魔の森を見てきたのだ。あの大きな木が消えた場所だよ。すると切り株もなく、根ごと消えていたんだ」
そりゃ当然でしょう。
巨木を丸ごと変換しようとイメージしたからね。
でも、父さまは、私がどうイメージしたか知らないからか興奮している。
「ということは! キャリーが魔法で材木を作ってくれると、魔の森の開拓が楽に進む!」
「おお! お嬢! こりゃ尋常じゃねえですぜ!」
「え……?」
私は父さまが何を言いたくて、ヨーナスが何に興奮しているのかわからない。
首をひねっていると、父さまが説明を始めた。
「キャリー。普通は木を切り倒すと切り株が残るんだ。切り株を地面から抜くには、土を掘り返し、根を切って、さらに馬が引っ張り、人も一緒に力を尽くして、ようやく根が抜けるんだ」
あっ! そうか!
巨木が丸ごと消えるから、すぐ農地として使えるんだ!
私は父さまの説明でようやく理解出来た。
今は耕していない野原がある。
けれど、どこかのタイミングで村の近くの森を開拓しなければ、生産量は上がらなくなる。
普通の森や林は、村の住民が薪を拾ったり、野いちごやキノコを採取したりする。
生活に欠かせない森や林だから潰せない。
そうなると、開拓したいのは魔の森だ。
危険な魔物が住み、深く広がっている魔の森を開拓し、人間の居住領域を増やして、魔物の居住領域を減らす。
しかし、魔の森の巨木は一本切り倒すだけで大変そうだし、まして切り株を抜くとなれば、どれだけ時間がかかるか想像もつかない。
けれど、私の変換魔法なら一瞬だ。
これは強い!
変換した材木の使い道は色々あるし、余ったらメゾン・グラディスから借りているマジックバッグへ仕舞っておけば良い。
父さまは、魔の森を見てニヤリと笑う。
「もちろん、魔物の襲撃に備えるとか考えることは色々あるが、出来ることが増えたのは大きい。それに材木が手に入るのもありがたい。ありがとう、キャリー!」
「どういたちまちて!」
役に立つとわかって、私は嬉しくなった。
魔の森の巨木へ向かって、変換スキルを発動する。
「へんかーん! 長い板!」
今度は幅15センチの長い板をイメージした。
アーリー・アメリカン様式の家には必須だろうし、ノコギリで切れば色々使えるだろう。
長い板が地面に山になった。
「へんかーん! 板!」
今度は畳一畳分の板をイメージした。
厚さは1センチ。
屋根でも、床でも、壁でも、何でも使って欲しい。
地面に板がバババンと山盛りになった。
あと何か必要そうな材木はあるかな?
私がムムムと考えていると、父さまとヨーナスが叫んだ。
「キャリー! もう、十分だ! 材木は十分だよ!」
「お嬢! やり過ぎでさあ! やり過ぎ!」
「あい!」
どうも私は調子に乗ってしまったらしい。
幼児らしくテヘペロで許して!





