第28話 帰ってきた変換スキル
ぶどう畑といっても、まだ種を植えたばかりで何もない荒れ地だ。
ぶどう畑は、魔の森のそばにある。
魔物のホーンラビットが森から出て襲ってくるので注意が必要だ。
「よーし! ヨーナス! 頼むぞ!」
「へい! ガッテン!」
父さまはシッカリと魔銃を背負い、助手としてヨーナスを連れてきている。
もちろん私も油断しないで、魔銃を腰というかお腹の前にベルトを使って刺している。
私の頭の上に乗っている妖精のベルに念話を飛ばした。
『ねえ、ベル。ぶどう畑を急成長出来るよね?』
『うん! 力が貯まったから出来るよ!』
ベルの植物を一気に成長させる能力は、魔法やスキルというよりも種族特性――アビリティ――らしい。
ベルのアビリティを利用させてもらうなら、断然果物だ。
野菜や穀物は、春に種をまけば秋に回収出来る。
けれど果物は種や苗木から実がなるまで何年もかかってしまう。
ベルにお願いすれば、即日実がなる。
そして次の年から毎年収穫が可能なのだ。
ぶどうは、生食出来るし加工すればワインや干しぶどうが作れる。
それからパンを柔らかくする天然酵母を生み出してくれる。
生まれてくる妹か弟には、カチコチのパンではなく、ふわふわのパンを食べさせてあげたい。
ふわふわのパンにチーズやバターをのせて、おいしい、おいしいと食べさせるんだ!
食生活の向上、経済力アップのために、ぶどうをぜひ確保しておきたい。
ただ、問題があるんだよね。
『ベル、ぶどうってぶどう棚が必要だよね?』
『うん! あの子たちは、にょっきにょき伸びるけど枝が細いんだよね。作ってあげて!』
問題はぶどう棚を作ろうにも柱や梁になる材木がないのだ。
キャロライン村は、魔の森や普通の森に面しているから木は大量にある。
けれど木を切り倒して、乾燥させて、利用出来るように切り出さなければ、材木にならない。
意外と手間がかかり、人手が必要だ。
現在のキャロライン村は、畑の拡張と畜産で大忙し。
森の木を切り出している余裕はない。
そこで私の出番だ!
旅の間に進化した私のスキルちゃん!
レベル5になるとともに、植物以外に変換出来そうな感覚がある。
私は『レベル5を希望する材木に設定』と強く念じてみる。
■―― 神からのギフト ――■
変換スキル:物質を違う物質に変換する。魔力が必要。
レベル1:リンゴ
レベル2:桃
レベル3:てん菜
レベル4:希望する植物
レベル5:希望する材木
―――――――――――――――
出来た!
準備万端!
私はフンスフンスと鼻息荒く、父に抱かれてぶどう畑に向かった。
ぶどう畑は殺風景な荒れ地で、ぶどうの苗木とヨーナスが種を植えた時に目印として立てた木の棒が並んでいるだけだ。
ぶどう畑に到着すると私は地面に下ろしてもらい、父さまとヨーナスに質問した。
「ぶどう棚というのが必要だって、ベルが言ってたの。どんな物かわかりゅ?」
まず私は農民のヨーナスに目をやる。
ヨーナスは腕を組み首をひねった。
「お嬢様。申し訳ねえです。ぶどうはやったことがねえんでさあ」
ヨーナスはぶどう栽培の経験がないのか……。
それじゃあ、仕方ないね。
すると父さまが答えた。
「私はわかるぞ。友人の領地へ遊びに行った折に、ぶどう農園を見学させてもらった」
「すごい! 父さま!」
「さすがご領主様!」
私とヨーナスに褒められて、父さまはご機嫌で話を始めた。
父さまが訪問した領地は名産品がワインで、ぶどう農園は大規模で沢山の農民が働いていたそうだ。
私が驚いたのはぶどう棚の柱だ。
父さまが身振り手振りを交えて話してくれたのだけど、柱がかなり太い。
父さまが両手で円を作った太さ……直径15センチくらいかな……。
私はぶどう狩りをしたことがない。
家族旅行なんてしたことがないのだ。
だからニュース映像で見た限りだけど、日本のぶどう農園の柱はもっと細かったと思う。
いや……、日本の場合は金属製の柱かもしれない。
それなら細い柱でも強度がある。
ぶどう棚で梁を渡すのだ。
ある程度の太さ、強度があった方が良いだろう。
私は直径15センチにしようと決めた。
高さは……、父さまの話によるとぶどう棚の高さは割りと低めのようだ。
父さまの身長は175センチくらいだと思う。
ヨーナスは180センチくらいだと思う。
私がまだ二歳で背が低いので、二人とも見上げるような大男に感じるのだ。
実際見上げてるし。
だから正確な身長はわからない。
けれど、多分、そのくらいだよね。
ぶどう棚が高すぎると収穫が大変そう。
かといって低いと男性はかがまなきゃならない。
そうすると、2メートルくらいの高さかな?
地面に埋める分も考えたら、2メートル50センチくらいの丸太の杭を生成すれば良さそうだ。
梁の部分は角材で良いみたいで、太くなくて大丈夫そうだ。
それなら4センチの正方形で長さは3メートルで作って見よう。
私は頭の中で生成する材木のイメージをしっかり描いて、魔の森へ向かって歩きだした。
「ちょっと! キャリー!」
「お嬢! どこへ行きなさるんで!」
「魔の森の、木を、材木に、すりゅ」
「えっ!?」
「何を言ってるんでさ?」
父さまとヨーナスは理解不能というリアクションだ。
私は二人を放っておいて、魔の森に近づいた。
一本の巨木に狙いを定める。
「へんかーん! 材木!」





