第27話 キャリーの新しいお仕事
――三日後。
キャロライン村の様子は一変した。
父さまと私が持ち込んだ馬、牛、ニワトリの影響だ。
村の若い男たちは、馬二頭を使って馬耕に精を出している。
放置されていた野原を畑に変える作業だ。
今までいた赤毛のオスと新しく来た赤毛のメス。
それぞれに馬耕の道具を取り付けて、広大な平原を耕している。
具体的に何をやっているかというと、馬に大きな鋤や鍬を牽引させて、馬の力でズルズルッと地面を掘り返すのだ。
人間が地面を掘り返すより圧倒的に早いし、人が耕すより深く掘り返すことが出来る。
馬の力を利用するとはいえ、馬耕道具を操る人も力を使う。
村の若い男が交代で馬耕道具を操り、村の西側に広大な耕作地を作る予定だ。
私の仕事も増えた。
父さまが私を抱っこして村の中を移動する。
「よーし、キャリー。この家をきれいにしてくれ」
「クリーン!」
私は、『きれいなジャ○アン魔法』……いや、生活魔法クリーンを村人の家にかける。
ゴウ! と魔力の風が吹き、金色の魔力の残滓が舞う。
すると……。
「にゃんということでしょう! 掘っ立て小屋が、きれいな小屋にぃ!」
私は舌っ足らずな口調で、前世で有名だったTV番組のナレーションを真似する。
本当に何たることか……、この魔法を使う度に『きれいなジャ○アン現象』が起こる。
小屋がドヤッてる感じがするんだよね。
まあ、それでも村人は喜んでるよ。
ピカリン! と光輝く小屋の前でソバカスもじゃもじゃ赤毛の若い女性が頭を下げている。
「お嬢様! ご領主様! ありがとうございます! こんなにきれいな家になって!」
涙ぐんでる。
確かこの女性はケイトさんだ。
旦那さんは馬耕組。
父さまは私を抱いたまま、ケイトさんに笑顔で応じる。
「ケイトの家が美しくなって良かった。村では色々事業を行っているので協力してくれ」
「はい! もちろんです!」
私は父さまと一緒に村人の家にクリーンをかけている。
一日一件限定だ。
馬耕のように村の事業を手伝ってくれる人の家を優先している。
父さまの領主としての権威が上がり、村の事業に村人の協力を得られやすくなる効果もある。
なので、私は父さまの依頼に協力している。
村を発展させれば、生活が改善されるからね。
母さまが子供を産むし、頑張らないと!
妖精のベルがぴゅーっと飛んできた。
「キャリー! 水が足りない畑があるの~。雨を降らせて~」
「あい!」
次のお仕事は水まき。
毎日必ずあるわけじゃないけど、水が足りてない畑には生活魔法ウォーターで水やりをする。
妖精のベルは、私たち人間の生活に無関心だ。
ただ、植物関連には協力をしてくれる。
木の精霊だからかな?
父さまが私を抱っこしたまま、ベルの案内で水が不足している畑へ向かう。
畑は土がひび割れてしまっていて、収穫前の冬まき麦がへにゃっとなっている。
父さまが渋い声をだす。
「なるほど。これはダメだな」
顔色の悪い若い男性村人がぼろ小屋から顔を出した。
「あの……すいません……本当にすいません……。体調が悪くて……」
あっ! 不味いな!
本当に病気っぽい。
私は父さまに抱かれたまま、両手をわちゃわちゃと動かす。
「大丈夫! キャリーがお水をまくから! 寝てて! 後でリンゴをあげりゅ!」
「うん。病気なら仕方がない。家で休んでいなさい」
父さまも若い村人に優しく声をかけた。
私は早速生活魔法を発動する。
「ウォーター!」
ごっそりと魔力を持って行かれた。
そして空が暗くなりゴロゴロと鳴りだした。
若い村人がポカンと空を見上げてつぶやく。
「スゲエ……。お嬢様の魔法は雨を降らせるのかよ……」
妖精のベルが空中をクルクル回りながら、若い村人をせっつく。
「ほら! 雨が降ってくるから家に入りなさいよ! 畑は大丈夫よ!」
「へ、へえ! ありがとうございます!」
私は若い村人にバイバイと手を振る。
父さまと私は急いで畑を離れた。
雨が降ってくるからだ。
生活魔法ウォーターを空に放つバージョンは、雨降らし魔法と化している。
短時間にザッと雨が降るのだ。
それもピンポイントに、私が指定した畑だけ。
超便利!
父さまが私の背中をポンポンと叩く。
「キャリー。ありがとう。キャリーが手伝ってくれるから大助かりだよ」
「あい!」
私は父さまの胸に顔を埋め、父さまの匂いをかいで安心する。
中身は元日本人社会人だけど、私はまだ二歳の女の子なのだ。
メンタルのバランスを取るために、こういったスキンシップは大切なの。
こうしてキャロライン村は忙しく動いている。
新しいフェーズに入ったのだ。
私は頭の中で考えをまとめる。
スタート・フェーズ:食うや食わず
↓
安定フェーズ:食料の安定供給が実現
↓
拡張フェーズ:耕作地を広げて、多様な食物を生産
なかなか良い感じ。
村にも活気が出ている。
「えっと……次は何だったかな……?」
「父さま。ぶどう畑に連れて行ってくだしゃい」
「よし! わかった!」
私と父さまは、ぶどう畑へ向かった。





