第23話 馬、牛、鶏、チーズなど
――翌日、昼。
私たちは色々と用事を済ませて、開拓村――キャロライン村へ向けて出発した。
教会のペイラマール司祭様には、父さまが寄付金をゴリッ! と渡して改めて口止めをしていた。
あんまり言いふらさないでもらえると良いな。
私たちの乗る幌馬車とマジックバッグには、メゾン・グラディスの支店長カーベルさんと取り引きした物品でいっぱいだ。
父さまはホクホク顔で御者を務めている。
今回の取り引きは、私がゴンゴンと釘を刺した甲斐もあって、かなりの品を出してもらった。
まず馬。
赤毛の牝馬を手に入れた。
これでキャロライン村に馬は二頭だ。
今いる赤毛が牡馬、オスなのでメスの馬にしてもらった。
ひょっとしたら番いになって、子馬が生まれるかもしれない。
今は二匹で幌馬車を引いている。
馬と仲良しのベルは、新しい馬も気に入ったみたいで、早速お尻に座っている。
馬耕の道具も一式つけてもらった。
これで空いている場所を畑に出来る。
砂糖の原料になるてん菜を栽培したり、新しい野菜を育てたり色々出来る。
次に乳牛を二頭。
地球のジャージー牛に近い品種で、茶色の毛並みで目がくりくりしている。若いメスが二頭だ。
赤ちゃんが生まれるから牛乳が欲しかった。
とても嬉しい。
牛乳はお菓子や料理の材料にもなる。
それに栄養があるから妊娠中の母さまや村人にゴクゴク飲ませるんだ。
乳搾りや牛の世話はローテーションを組んで村人全員にやらせようと思う。
天然痘対策だよ。
魔法のある世界だから、魔法で治療できるかもしれないし、そもそも天然痘ウィルスが存在してないかもしれない。
でも、念のため、乳搾りや牛の世話をみんなでやって、天然痘の抗体獲得を目指すの。
牛さんは、幌馬車の後ろにつないであって歩いてもらっている。
馬より歩くのが遅いので、ちょっとノンビリしたスピードになっているけど、まあ仕方ないね。
それから、ニワトリも買った。
こちらも雌雄で全部で十匹。
卵が手に入る!
朝、目玉焼きが食べられる幸せ!
エッグトーストを作りたい。
ニワトリさんは、籠に入れて荷台に置いてある。
こっこ、こっことうるさい。
マジックバッグには生き物は入らないから仕方ないね。
そして、マジックバッグには女性陣からリクエストがあった食品が沢山入っている。
まずは塩!
日々の食事で使うし、保存食のキャベツの塩漬け――ザワークラウトを作るのに欠かせない。
酢、ビネガーもリクエストで多かった。
キャベツの塩漬けばかりだと飽きちゃうから、キャベツの酢漬けを作るんだって。
酢は穀物やリンゴから作れたと思うんだよね。
今度、挑戦してみよう。
食用油も買ってみた。
メゾン・グラディスのカーベルさんに勧められた。
多分、仕入れたけど売れてないんだろうね。
狩りをすれば獣脂が手に入るから、肉を焼くなら獣脂で食用油の代用が出来るもの。
ガンガン買い叩いて大量に買い込んだ。
揚げ物を作ろう。
卵と酢と食用油……密かにマヨネーズも狙っている。
それから私が欲しかったチーズ。
でっかい円盤みたいなチーズだよ!
ホールチーズっていうんだって。
パンを焼いて母さまにチーズトーストを食べさせるんだ。
栄養一杯のチーズで幸せパワー注入だよ。
野菜の種も色々用意してもらった。
カボチャ、ニンジン、玉ねぎなど、気候にあった物を数種類。
けれどトマトはないみたい。
ベルも知らないと言っていたので、この異世界には存在しない野菜みたい。
そして、私の魔銃……。
昨日の取り引きで、私は支店長のカーベルさんにお願いした。
「わたちでも使える魔銃はないでしゅか?」
「お嬢様は二歳でございますね? 魔銃は早いのでは?」
「開拓村は魔物が出ましゅ。身を守るのに魔銃が必要でしゅ」
「アラン様……。よろしいのですか?」
「カーベル。キャリーは思慮深い子だ。祝福の儀式も受けた。魔銃を持って家族や領民たちを守りたいと言うのだ。協力してやてくれ」
カーベルさんは、散々迷ったが私でも扱えそうな魔銃を持ってきてくれた。
カーベルさんは、磨き上げられた茶色い木箱の蓋を開けた。
木箱の中は緑色のベルベット生地が貼られていて、いかにも高級そうだ。
木箱の中央には銃――拳銃が入っていた。
「少々古い型ですが、こちらの魔銃でしたら幼いお嬢様でも扱えるかもしれません。魔銃師ジョン・ウォードンの一品です」
カーベルさんがうやうやしく魔銃を私に渡す。
両手で持ってみると意外と軽い。
ヨーロッパ貴族の決闘で使われそうな、金細工が施された銃に似ている。
軽い木が使われていて私でも持てる。
右手で引き金近くを持ち、左腕の前腕に銃身をのせて構えてみる。
大丈夫、狙って撃てる。
「魔銃に力は必要ありません。魔力があれば良いのです」
「これくだしゃい」
こうして私は魔銃を手に入れた。
革ベルトを使って、魔銃を腰に差している。
最後に……。
安物のエールとワイン。
私は支店長のカーベルさんに交渉したのだ。
「お嬢様。エールとワインをオマケしろという要求はいささか――」
「父さまや村の男性陣にゴマをすってくらしゃい。畑作りや収穫作業で汗を流しているのは男性陣でしゅよ?」
「……」
「一番安いので良いのでしゅ。メゾン・グラディスからの差し入れと伝えましゅ」
「お嬢様にはかないませんな」
一番安い物だが男性陣は喜ぶだろう。
「今回はお土産が沢山あるなぁ」
「きっとみんな喜ぶのでしゅ!」
私も父さまもご機嫌だ!





