第21話 冒険者ギルドにて
父さま、私、妖精のベルは、感涙の海に溺れる司祭様をおいて教会を離れた。
ニューゲートの町ではやることが沢山あるのよ。
いつまでも司祭様にだけ付き合っていられない。
次は冒険者ギルドだ。
キャロライン村で仕留めた魔物ホーンラビットの素材を売るのだ。
魔物の肉は村中で分け合って食べ、毛皮は防寒用の敷物として使う。
魔石と角を冒険者ギルドで売却するのだ。
父さまによると、たいした金額ではないそうだが、旅費くらいになるので毎回必ず立ち寄っているそうだ。
冒険者ギルドは教会の近く、つまり町の中心にあった。
他の建物と同じ木製の建物だ。
冒険者は荒事専門の人なので、気の荒い人が多いらしい。
私はちょっと怖いなと思ったので、父にだっこをねだる。
「父さま、だっこして」
「さあ、キャリーおいで」
父さまは私を優しく抱き上げてくれた。
扉を開けて冒険者ギルドの中に入ると、夕方にきたせいだろうか、沢山の人がいた。
革鎧をみにつけ、剣をぶらさげている人。
魔法使いのローブ姿の人。
あきらかに人間じゃない人……いや、人なのか? 動物なのか? 前世のマンガに出て来た獣人?
ファンタジーな人たちが沢山いる。
私は面白くて思わず笑顔になる。
「わあ!」
――ザワッ!
「えっ!?」
私の声に反応したのだろうか?
冒険者たちが一斉に振り向いて、私を見る。
沢山の冒険者に見られて、ちょっと居心地が悪い。
なんだろう?
父さまが私を抱っこしたまま一歩踏み出す。
すると、モーゼの海みたいにザザッと冒険者たちが左右に分かれた。
冒険者ギルドの奥に銀行のようなカウンターがある。
入り口からカウンターまで道が出来た。
父さまがゆっくりと、冒険者の間に出来た道を進む。
すると左右の冒険者の声が聞こえてくる。
「オイ! 何だ! あの魔力は!」
「ヤバイだろう!」
「バケモンかよ!」
何か色々言われてる。
中には父さまのことを知っている冒険者もいるみたい。
「あの人……お貴族様だろう? 前に見たことあるぞ……」
「あんな魔力だったか?」
「いや……ごく普通というか、魔法使いとしては少なめだったと思う」
「えっ……!? じゃあ、あの魔力は!?」
「よく見ろ。あの女の子から発せられてる魔力だ」
「フェアリーもいるじゃねえか!」
めざとい人がベルを見つけたようだ。
私は麦わら帽子をかぶっていて、ベルは帽子をちょこっと持ち上げて顔を出している。
もちろん麦わら帽子には、私の宝物である水色のリボンがついている。
父さまは受付カウンターに到着。
係の女性に話しかけた。
「私はラ・ファール男爵家三男のアランだ。現在は新騎士爵として新領地で開拓を行っている。開拓地でとれた魔物の素材を買い取ってもらいたい」
「かしこまりました。それではお売り頂ける素材をお出し下さい」
父さまと受付カウンターのお姉さんが色々やり取りをしている。
すると、とてもきれいな女性が話しかけてきた。
ストレートのプラチナブロンドのほっそりとした美人さんだ。
緑色の服を着て、背中に弓を背負っている。
特徴的なのは、耳が長い。
まさか……エルフ!?
エルフっぽいお姉さんは、父さまに話しかけた。
「失礼。膨大な魔力をお持ちなのは、あなたの娘さん?」
「そうだ。まだ魔力の制御が出来ていないんだ。すまないね」
「お話ししても?」
「構わんよ」
お姉さんは、私にニッコリと微笑んだ。
私もお姉さんを見る。
髪の毛はプラチナブロンドだけど、瞳の色は緑だ。
「はじめまして、お嬢さん。私はリーナ」
「はじめまして、キャリーです。お姉さんはエルフ?」
「そうよ。キャリーちゃんは、すごい魔力ね」
「儀式をしたの。そしたら魔力ドバドバ」
「そっかぁ~。連れているフェアリーも凄いわね」
「うん」
リーナさんは、優しく私に話しかけてくれた。
とても優しそうな印象。
私は疑問に思ったことをエルフのリーナさんに聞いてみることにした。
「どうして、みんな私の魔力が多いってわかるの?」
「冒険者は魔物と戦ったり、魔法を使ったりするから他人の魔力に敏感なのよ」
「そーなんだ!」
それで私が冒険者ギルドに入ったら、ざわついたのか。
私の魔力なんて放っておいて欲しい。
「お姉さんは魔法を使えるの?」
「使えるわよ。風と光よ」
光! 私と同じだ!
「私も光! 教えて下さい!」
「うふふ。いいわよ。光は簡単よ。ライト!」
リーナさんが、ほっそりとした長い指をスッとかざすと空中に光る球が出現した。
バレーボールくらいの大きさで光っている。
宙に浮く照明器具だね。
「コツはしっかりとイメージすることよ」
なるほど。父さまや母さまから聞いていたけど、イメージをしっかり作れば魔法が発動するんだ。
「私もやってみる! ライト!」
私はしっかりと光輝くバレーボールをイメージして、リーナさんがやったように空中を指さした。
すると激しい光が冒険者ギルドの中を照らしまくった!
「うあああ!」
「目が! 目がぁぁ!」
「ま、まぶしいぃぃいいいいいい!!」
失敗した!
私の光魔法は、閃光弾以上の威力で冒険者たちに目潰しをしてしまった!
「キャリーちゃん! 魔法を消して! 早く!」
「あわわわわ!」
私は焦った!
大いに焦った!
目をつぶった状態で何とか魔法を消そうと試みるがどうすればよいかわからない。
そうだ!
イメージだ!
灯りを消すイメージ!
私はトイレのスイッチを消すイメージで手を動かす。
――カチッ!
光る球は消えた。
良かったぁ~、と私はホッとした。
だが、ホッとしたのは一瞬だけだった。
私の耳には、沢山のうめき声が聞こえる。
何が起きているのだろう……?
恐る恐る目を開いた。
すると冒険者ギルドの床に沢山の冒険者がひざまずいてうめいていた。
図らずも……、私の強烈な光魔法が多数の冒険者を制圧してしまったのだ。
私を抱いている父さまがボソッと私の名前を呼んだ。
「キャリー……」
「とっ……父さま! ちっ……違うの! わざとじゃないよ!」
「ああ、わかってるよ。でも、ビックリするから魔法を使う時は気をつけなくてはいけないよ」
叱られると思ったが、父さまは私に優しく微笑んでくれた。
なぜだか私は涙がポロポロ出て来た。
「ご……ごめんなさーい!」
「よし、よし」
私は泣きじゃくり、父さまが私の背中をポンポン叩いてくれた。
いや、本当にごめんなさい!





