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転生幼女のわくわくスローライフ! ~変換スキルで異世界の開拓村を豊かにします  作者: 武蔵野純平@9/18マンガ蛮族転生3巻発
第一章 転生幼女の異世界生活(一歳)

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第10話 閑話 天使の桃 支店長カーベル

 私はカーベル。新領地ニューゲートの町にあるメゾン・グラディスの支店長だ。


 メゾン・グラディスはグラディス商会という意味ではあるが、本国フルール王国風にメゾン・グラディスで通している。

 我が商会は高級志向であり、お客様は貴族と富裕な商人だ。

 やはり高級感のある呼び方、メゾン・グラディスの方が響きが良い。


 メゾン・グラディスは本国フルール王国では成功し五大商会に数えられているが、新領地では苦戦している。


 というのも、新領地には金持ちがほとんどいない。

 また仕入れという点でも特筆すべき産品がない。

 開拓村は山ほどあるが、どこも生産するのは小麦、大麦、ジャガイモ、キャベツ……。

 つまり開拓村の村民が食べる物を生産するのだ。


 新領地への進出が早すぎたのかもしれない。

 もう、十年、二十年後ならば、新領地に金持ちが増えるだろうし、開拓村でも様々な産品を生産するようになるだろう。


 だが、現時点では……。


 商会長に命じられて新領地に来てみたが、とんだ貧乏くじ――と私は考えていた。

 今日の夕方までは……。


 今日の夕方、面白い客が来た。


 新貴族アラン・ド・ラファール新騎士爵様。

 本国ラファール男爵家のご子息であらせられる。


 ひどい身なりだった。

 いや、農民としてみれば普通だが、男爵家の子息にはとても見えなかった。

 身分を表す短剣とアラン様の堂々とした態度を見て、貴族であるとわかった。


 ラファール家御当主がアラン様の服装をご覧になったら、きつくお叱りになるに違いない。


 しかし、相当、ご苦労をされたのだろう。

 頬はこけ、肌の色艶は悪い、体つきも見ていて不安になるような細さだった。

 私は開拓の厳しさを垣間見た思いだった。


 そして、アラン様は桃とリンゴを持ち込まれた。

 どうやら果樹園作りに成功されたようだ。

 桃とリンゴは非常に高品質で、特に桃は口にするとあまりの美味しさに天にも昇る心地だった。

 甘すぎず、さっぱりしすぎず、香り、味、みずみずしさ、全てが完璧!


 本国で間違いなく売れる!

 それも高額で!


 恐らく本店は、まず王室に献上するだろう。

 国王陛下の御墨付を得て下に流す。

 間違いなくブームになる。


 やれやれ、これでようやくニューゲート支店として胸を張れる仕事が出来た。

 アラン様に感謝だ。


 そういえば、アラン様の髪の毛と瞳の色は赤系だった。

 ということは、火属性の魔法をお使いになるはず。


 ふむ……ラファール男爵家のラファールは、疾風を意味する。

 ラファール男爵家は、その名の通り風使いの名手を輩出した家だ。


 火属性では肩身の狭い思いをされたであろう。

 それもあって新領地にいらっしゃったのだろうか?


 奥方のマリー様は緑系の髪と瞳……ターコイズであった。

 恐らくは風……ひょっとしたら水にも適正があられよう。

 奥様の方がラファールらしい。

 それでラファール男爵家の子息に嫁がれたか?


 奥様のご実家、ジャグワール騎士爵家といえば槍で有名だ。

 騎乗する馬に風をまとわせ、突進するとともに槍を突き出す。

 ただ、あまり裕福な家ではなかったと記憶している。

 少なくとも本店の顧客リストにジャグワール騎士爵家はない。


 ふむ……マリー様はお美しい方だ。

 あの美しさと風の適性があるなら、騎士爵家から男爵家へ、格上に嫁がれるのも納得か。


 そして、お嬢様……キャリー様だ。

 キャリーということは、キャロライン様? 本国フルール王国風に呼ぶとカロリーヌ様だ。


 驚いたことにフェアリーをお連れになっていた。

 まだ母に抱かれていたので、一歳程度であろう。

 一歳で! フェアリー! 聞いたことがない!


 ああ、惜しむらくは、髪の毛も瞳も金色……。

 つまり光属性ということだ。

 よりにもよってハズレ属性の光とは……。

 魔法使いとしては大成できまい。

 光属性の魔法使いは、照明係として王宮のシャンデリアを輝かせるのがせいぜいなのだ。


 だが、キャリー様は知性があるかもしれない。

 桃とリンゴの試食を勧めたのはキャリー様だ。

 いや……、あれは単に子供が美味しい物を人に勧めただけかもしれない……。

 そうだ。キャリー様は、まだ幼い。

 商談の流れなど理解されていまい。

 うん。知らないおじさんに美味しい物を食べさせようとしただけだろう。

 心根の優しい親切なお嬢様なのだ。きっとそうだ。


 さて、本店向けの報告書を書こう。


 有望な商品を発見……。

 そうだな……、天国の味がする桃……天国の桃……。

 いや、天使のようなキャリー様が報せてくれた桃なのだ。

 天使の桃が良かろう。


 それから、マジックバッグをアラン様に貸与するよう本店に提案してみよう。

 桃とリンゴはしっかりと藁にくるまれていたが、輸送中にアクシデントがあってはいけない。

 マジックバッグの方が安心だ。


 私は『天使の桃』について、本店に報告書を送った。

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