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第40話:雷へ向かう道

 

 ライゼンの街を出たあと、四人が進む道は、それまでの旅路とは明らかに質の異なる空気に包まれていた


 石畳はすぐに途切れ、踏み固められた土の道へと変わるが、その地面はどこか乾ききらず、かといって湿っているわけでもない中途半端な状態を保っており、靴裏に伝わる感触も一定ではなく、わずかにざらついたかと思えば次の一歩では細かく震えるような違和感を含んでいた


 空は低い


 雲が重なり合い、層を成すように広がっている


 その奥で光が走る


 視界の端で一瞬だけ白くなる


 そして、ほんのわずかな間を置いてから、腹の奥に響くような低い音が地面を伝ってくる


 ドォン……


 その振動は空気ではなく、地面から来る


 足の裏を通って、骨に響く


 ミミが思わず肩をすくめる


「……さっきより近くない?」


 その声は冗談めいているが、視線は空から離れていない


 カイルは歩みを緩めることなく、ただ短く言う


「近いな」


 否定しない


 むしろ確信している


 ニナは空ではなく、周囲を見ている


 地面


 草の揺れ方


 風の流れ


 目に見えるものすべてから、見えない変化を拾い上げるように


「……流れ、変わってる」


 小さく言う


 アルトはその言葉を聞きながら、自分の感覚でも確かめる


 空気がまとわりつく


 軽くない


 だが、ただ重いわけでもない


 細かい刺激が混じっている


 指先


 首元


 露出している部分すべてに、微かな痺れが走る


(……これが常時か)


 ダンジョンに近づいている


 それを身体が先に理解している


 歩みは止めない


 だが、無意識に間隔が変わる


 四人の距離が、わずかに詰まる


 誰も言わない


 それでも、自然とそうなる


 道は緩やかに上り始める


 周囲の木々が少しずつ減る


 背の高い草も少なくなり、代わりに低く、硬い植物が地面に張り付くように生えている


 色も変わる


 緑が薄い


 くすんでいる


 まるで、この場所に長く留まれないかのように


 ミミが足元を見ながら言う


「……なんか元気ないね、この辺の植物」


 ニナが短く答える


「……魔力、安定してない」


 それだけで十分だった


 ここは“生き物に優しくない場所”になり始めている


 さらに進む


 風が強くなる


 一定ではない


 吹き抜けるのではなく、叩きつけるように来る


 横から


 前から


 時には下から


 そのたびに空気がざわつく


 そして――


 バチッ


 指先に走る


 ミミが思わず手を引く


「今のまた!」


 アルトも同じものを感じている


 静電気に似ている


 だが、もっと生々しい


「……雷の残り」


 アルトが呟く


 完全に消えずに、空間に残っている


 それが漂っている


 カイルが前を見たまま言う


「中はもっと濃いぞ」


 その言葉に、誰も否定しない


 やがて、道が途切れる


 岩場になる


 地面が露出し、踏むたびに硬い音が返る


 空がさらに近い


 雲が低い


 光が走る


 今度ははっきり見える


 空を裂くように


 一瞬で


 そしてすぐに――


 ドォンッ!!


 さっきよりも近い


 音ではなく、衝撃に近い


 空気が揺れる


 その振動の中で、四人は足を止める


 前方


 岩の中腹


 そこに“裂け目”がある


 自然ではない


 だが、人工でもない


 歪んでいる


 空間そのものが、無理に押し広げられたような形


 その奥から、空気が流れ出ている


 重い


 鋭い


 そして――


 濃い


 ニナが小さく言う


「……ここ」


 間違いない


 カイルが剣に手をかける


「行くか」


 ミミが一度だけ深く息を吸う


「……うん」


 アルトはその二人を見て、それからニナを見る


 視線が合う


 ほんの一瞬


 だが、それで十分だった


 アルトは首元に触れる


 青い石


 微かに温度がある


(……大丈夫)


 自然と、そう思える


「行こう」


 その一言で、四人の意識が揃う


 一歩、踏み出す


 地面の感触が変わる


 空気が変わる


 音が変わる


 外の世界が、背中の方へ遠ざかる


 そして――


 雷の中へ


 四人は迷いなく、足を踏み入れた


ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!

もしよかったら感想などいただけると、とっても嬉しいです…!

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