謎の少年はとんでもないランク詐欺でした。
※一日遅れの更新になってしまい、申し訳ないです。
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「……ッ、くっ……!」
声にならぬ呻きが、部屋の中に響いた。
全員の視線が、背後の扉へ向く。
そこには……本来であれば絶対安静であるはずの男が騎士学園の生徒に支えられて立っていた。
「カイ!?ダメよ動かないで!」
ミアが悲鳴に近い声で制止するも、カイは荒い息を繰り返しながら、鋭い眼差しでラグナを射抜く。
「はぁ、はぁ……お前、あの数のグラントと……それに指揮官のソルジャー。 あれらを……全部倒したのか……?」
カイの言葉に室内がざわつく。
その問いにラグナは僅かに目を伏せた。
「俺一人だけで倒したって訳では無いですけど……砦の周辺にいたゴブリン達は全部討伐したと思います」
「そうか……おめぇ、何もんだ?」
カイが絞り出すように訊く。
どう答えたらいいのか悩むラグナは、静かに自分のギルドカードをミアに手渡した。
「ギルドカード?ランクは……えっ?」
ラグナからギルドカードを受け取ったミアは名前とランクの確認をした所で目を見開いた。
「えっ……?噓でしょ……?」
「お、おい、ミア。どうした?」
ミアがこれを見せてもいいのか悩んでいると、
「ふぅ、ふぅ……見せてくれ」
そう言いながらもカイは明らかに息が荒くなっていた。
限界が近づいてきているのは明らかだった。
それでも仲間や子供達を救った命の恩人が何者なのか。
それを確認するまでは気絶は出来ないと意識を保ちながら、ミアが手に持っていたカードを覗き込んだ。
まだ作られたばかりであろう綺麗な状態のギルドカードだった。
「名前はラグナか……んでランクが……」
その文字を読み取った瞬間、
「……ぷっ……くっくっくっ……ははっ、ははははははは!!!」
カイが笑った。
それは明らかに苦痛による笑みではなかった。
むしろ清々しいまでの豪快な笑いだった。
「ラグナ……って言ったな?」
「はい」
「とんだ……ランク詐欺じゃねぇか」
「えっと……冒険者登録したばっかりで……」
「はっははっ、最高だぜぇ……ミア、この坊主、お前と同じCランクだとよ?くっくっくっ……いや、それどころかBランクの俺ですらも苦戦した奴を……しかもあの数だぜ?それを倒したのが……くっくっくっ……いてぇ」
それを見た生徒達は驚愕の声を上げた。
「俺らと同じくらいの年齢だよな……?」
「Cランクって時点でもすげぇだろ……」
「でもあの数のゴブリン達を1人でって……」
生徒達の中にはランクのシステムをよく理解していない者も多かったが、それでも普通の人間の枠から外れている事だけは改めて理解できた。
「……っと!」
笑った瞬間の呼吸が致命的だったのだろう。
騎士学園の生徒に支えられていたカイの身体から力が抜け、膝から崩れ落ちた。
ラグナはすぐさま駆け寄り、その身体を両腕で支えた。
「無茶はダメですよ」
「へへ……悪ぃな……坊主……」
「坊主は止めてください」
苦笑しながらも、ラグナはカイの腕に負担がかからないよう、慎重に支え直し、壁際へと座らせた。
カイは深く息を吐き出すと、そのまま項垂れるように頭を垂れた。
「……最後に一つ聞かせてくれ……お前……冒険者になったのは最近の話だって……?」
「ええ。登録したばかりです」
「……はは……道理で見た事ないわけだ……こんな馬鹿げた実力の奴がいたら……噂くらい耳に入っても……おかしくねぇからな……ありがとよ……」
それが最後の言葉だった。
カイの全身から力が抜け、ゆっくりと瞼が下りていく。
完全に気を失ったようだった。
「ゆっくり休めるところに運びましょう。丁寧にお願いします」
騎士学園の生徒たちに指示を出すと、彼らは一瞬の戸惑いの後、即座に行動に移した。
担架が用意され、カイはそっと載せられて奥の部屋へと運ばれていった。
重い空気が張り詰めた一室に残されたのは、ラグナと数名の生徒だけ。
「さて……」
ラグナは短く息を吐くと、残った生徒たちへと向き直った。
「ひとつ確認したい事があるんですけど、商業学園と騎士学園の生徒さん達でいいんですよね?」
ラグナの問いに頷く生徒達。
「えっと……先生たちは……?」
と、ラグナが訊ねると
「騎士学園の教官たちはゴブリン・グラントとの戦闘で負傷して……商業学園は……」
騎士学園の生徒らしき生徒が語尾を濁した。
すると商業学園の生徒の一人が続きを話し始めた。
「商業学園は教員が二人、そして商人が特別講師として一人いたんです……教員の一人は最初の襲撃で死にました……そして残りの教員は僕たちを裏切って自分達だけ生き残ろうとして……死にました」
そのあまりに無慈悲な事実を聞いたラグナは絶句してしまう……
『マジか……何やってんだよ……教員が……』
商人らしいといえば商人らしい行動なのかもしれないが、仮にも教員という存在がそんなことをしたなんて信じたくもない内容だった。
「それじゃあ、騎士学園の生徒の代表ってどなたですか?」
「俺ですが……」
名乗り出たのは筋肉質な体躯の男子生徒だった。
彼の目にはラグナへの警戒と感謝と疲れが混じっていた。
「少し休憩した後に騎士学園の生徒達に手伝ってもらいたい事があるのですが……」
そう伝えると更に警戒感を示した生徒達に、ラグナは努めて穏やかな声で切り出した。
「この砦の内外に転がっているゴブリン達を一カ所に集めてもらいたいんです。このまま放置していても良い事はありません。衛生面はもちろん、臭いに釣られて他の魔物が集まってきてしまう可能性も高いですし……それに……」
ラグナは意図的に言葉を区切ると、広間の隅にうずくまる女生徒達へと視線を向けるのだった。
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