見た目少年、中身バケモノ。
※体調を崩してしまい一週間お休みしてしまいました。
申し訳ありません。
建物内では自分たちの命が助かったと喜び合う声が溢れかえっていた。
しかし、その喧噪もラグナがイルマを抱えて中に入って来るや否や、瞬く間に消え失せた。
自分たちはビクビクしながらゴブリンからの攻撃に怯えていたのに、目の前にいる自分達と変わらぬ年齢だと思われる少年は、あろうことかゴブリンの群れやその上位種との戦いを繰り広げていたのだ。
凄惨な状況下で戦い続けていた少年は魔物たちの返り血を大量に浴びており、生徒達からすればその姿は恐怖の対象でしかなかった。
その視線を一身に受けたラグナは、困ったように眉を下げながらも、優しい表情を浮かべて言った。
「すみません。イルマを休ませたいのですが、部屋は空いてませんか?」
その意外な程に紳士的な物言いに、生徒達の身体がビクンと反応する。
「あ、あの……」
おずおずと、一人の少女が小さく手をあげながら声を上げた。
「二階だったら部屋が用意出来るかもしれないです……」
「ありがとうございます。案内をお願いできますか?」
「は、はい!」
ラグナが少女の方へと歩き出すと、生徒達は道を開ける様に左右に分かれていく。
頭の中では命の恩人に取る態度ではない事は理解しているのだが、どう対応していいのかわからなかったのだ。
ラグナはそんな事を気にする様子もなく、少女の案内のもと二階へと上がり、その部屋へと向かう。
コンコン
「ご、ごめんなさい! 部屋の準備って終わってますか!?」
「は、はい。もう簡易ベッドの組み立ては終わっているので後は片付けさえ終わればって……イルマさん!?」
少女の声に慌てたように女子生徒達が部屋から飛び出してくると、抱えられたイルマに驚きながらラグナに道を譲る。
「失礼します」
部屋に入ると、ラグナは組み立てられたばかりのベッドへとイルマをそっと寝かせた。
「イルマさん……大丈夫かしら?」
「大丈夫だと思います。気を失っているだけですから、安心してください」
いくらマリオン様だろうと、そこだけは安心している。
心配そうに覗き込む女子生徒に対してラグナはそう答えると、イルマの頭を撫でようと手を伸ばした所で、ふと動きを止めた。
自分の手が、魔物と自身の血で汚れていたからだ。
「すみません。少し汚れを落としたいんですが、水場はありますか?」
「あ……裏に井戸があったので、そちらでしたら……」
「そうですか……ありがとうございます。それじゃあ、イルマの事を頼んでもいいですか?」
「は、はいっ! お任せください!」
「よろしくお願いします」
ラグナはそう言うと、女子生徒達に向かって深々と頭を下げた。
そして部屋を出ようとした所で、
「あ、あのっ!」
と、ラグナをここまで案内してくれた生徒が声を掛けた。
「はい?」
「……一つ聞いても良いでしょうか?」
「ええ。答えられる事ならば」
すると彼女は、戸惑いながらもこう質問するのだった。
「イルマさんの事をご存じのようですが、関係を伺っても良いのでしょうか……?」
イルマの事を何故知っているのかという素朴な疑問だった。
「彼女とは幼い頃からの知り合いなんですよ。いわゆる、幼馴染ってやつですかね」
「と言う事はあなたもヒノハバラ国出身で……?」
「……そうなるかな」
ヒノハバラ国出身という事実を改めて突き付けられたラグナは、複雑な心境となった。
自分はあの国に殺されかけ、実際にヒノハバラ国のラグナという存在は、表向き死んだことになっているのだから。
すると、女子生徒が急に頭を下げながら、
「私たちの命を助けてくださって、本当にありがとうございました!」
と大声でお礼を言うと、他の生徒達もそれに続いた。
「「ありがとうございました!」」
その純粋な感謝の言葉に、ラグナは表情を緩める。
「間に合って本当に良かったです。それじゃあ、後の事はよろしくお願いします」
「はい、お任せください」
女子生徒達に深く一礼し、ラグナは部屋を後にした。
『……まずは、この血を落とさないとな』
ゴブリンや自身の血が固まり、パリパリしている事の不快感や、鼻をつく鉄錆の臭いが酷い。
一刻も早く井戸へ行こうと、ラグナは足早に階段を降りた。
しかし、一階の広間の空気はそれを許してくれそうになかった。
向けられる視線は、まるで怪物を見るような恐怖に包まれている。
「あ、すみません。通ります」
ラグナが小声で言うと、その声にビクッとした生徒達はサーっと道を開けた。
『……まぁ仕方ないよね』
同級生たちが異質なのだ。
普通の子供から見れば、バケモノだと思われても仕方ない戦闘を行っていたのだから。
ラグナは少し俯きつつ井戸へと向かおうとしたその時、
「待ってください……!」
「はい?」
振り返ると、冒険者パーティ『蒼き海蛇』の疑似魔法士であるミアが、すがりつくような、それでいて少し怯えるような複雑な表情でこちらを見ていた。
「助けてくれてありがとう。……でも、貴方は一体何者なんですか……?」
その悲痛な問いに、ラグナは困ったように頬を掻いた。
どう説明しても、信じてもらえない気がしたからだ。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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