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5-10 アルタイル

腎臓の検定報告が出てから一週間経ったが、新しい情報はなかった。

ところが、五月二十五日。

その日、龍崎洵太は慌てて警察署に駆けつけて、桜内に会いたがっていた。

「桜内さん!自首します!」

「自首?」

「ここ数日、毎日毎日男の人から電話が来て、早く罪を認めろと。もう耐えられません!」

「罪を認めるって、どんな罪ですか?」

桜内は綿の言葉を思い出した。

洵太はせいせい衣梨紗みたいに、悪いことをしたかもしれないが、人殺しではないんだと。

「僕は…あの人の子宮を取りました。」

「子宮…ああ。妻のためですか?」

「はい。」

「人を殺めたというわけではないが、罪のある行為のは変わりません。」

「わかっています…ただ、もうひとつ伝えたいことがあります。」

「もうひとつ?」

「僕…その犯人を見ました。」

洵太の言葉があまりにも唐突で、桜内も一瞬反応できなかった。


「それでは、龍崎さんの証言もあわせて、改めて時間軸をまとめてみます。」

綿と義孝にうなずいたあと、桜内は自分のノートを開く。

「推定死亡時刻である四時に、明奈さんは殺害されました。

「四時三十分、通りかかった龍崎洵太は、死体をさばけている男性を見かけました。

「龍崎洵太は妻の病気を治すために、子宮をもらう条件で、犯人の犯行を庇いました。

「そして五時三十分、臘山衣梨紗は通りかかりました。犯人はすでに離れたのでしょう。

「そこで土橋巡太が通りかかり、臘山と話し合った結果、五時四十五分に通報すると決めました。」


「朝田、龍崎洵太が見たあの男って、犯人の可能性が高いよね?」

「そうだな。あの男性の顔や衣装について、何かわかることは?」

「ジャケット着ていることと、マスクに帽子、あまり特徴といえるものはないと言いました。」

「なるほど。龍崎に電話をかけた人、何かを把握しているのに、僕たちには直接言えない事情があるのかな。」

「一応調べてみましたが、絞れませんでした。」

洵太が提供した情報は大きかったが、これ以上の手がかりは見つからなかった。


その後、桜内は諦めずにすべての手がかりを調べていた。

そこで、六月三日に、長リージの元夫である須田純太を見つけた。

名前や死因も知っているのにもかかわらず、かなり時間がかかったのは、精神錯乱のせいか、長リージが話した純太の死因は、本当の死因とは全然違ったからだ。

須田純太本人はすでに亡くなったが、桜内の部下は、かつて須田夫婦と仲良かった社員の人だった。

「須田繪麗莎さんで間違いありません…そうなんですか。そのあと、あんな大変な生活を。」

「カフェでの須田さんはどんな方でしたか?」

「とても優しい人でした。ただ、経営の状況が良くないことで、須田さんがカフェを売ってから二年後、須田さんと別居しただそうです。」

「須田さんはいつ亡くなられたのでしょうか?」

「繪麗莎さんが…四十一歳のごろです。繪麗莎さんもその事故から精神がおかしくなりました。」

「そうなんですね。」


桜内は、その社員の話をノートにメモして、再び顔を上げる。

「実は、須田さんは殺害された前日に、旧友と会ったという証言がありました。心当たりはありますか?」

「須田さんは優しい方ですが、友人にはあまり遠慮しないため、友人それほど多くないんだそうです。」

「そうですか。」

「須田さんがあそこまで嬉しくなるような旧友だとすれば、アルタイルさんかもしれませんね。」

「アルタイルさん?」

「須田さん、旦那のほう、がつけたあだ名です。本名は知りませんが、彦星と関係のある本名だからアルタイルだと、須田さんから聞いたことがあります。」

「なるほど。アルタイルさんは須田さんと仲良かったんですか?」

「かなり話が合ったと思いますよ。いつも楽しそうにおしゃべりをしていました。」

「そのアルタイルさんはまだここら辺に住んでいますか?」

「いや、結婚したあと引っ越しただそうです。そのあとの話は聞いていませんでした。」

「そうですか。ご協力ありがとうございます。」


警察署に戻ったあと、桜内は得た情報を漏れずに綿と義孝に伝えた。

「ふーん。このアルタイルってやつ、ひょっとしたら、長リージが十二時三十五分あたりにおしゃべりをしていた相手のかもしれないな。」

「朝田さん的には、アルタイルさんが犯人という可能性は薄いということですか?」

「いや、そのあとまた戻ってきた可能性だってある。ただ…」

「ただ?」

「同じ人が犯した連続殺人事件というなら、男性であるべきだろう。」

「そうですね。」

「しかし、ポリーの件では、安中さん曰く、彼女は男性不信の人だったはず。ポリーのルームメートである堀田さんもそう言ってた。」

「ということは、犯人は複数いますか?」

「無視できない可能性、ということだ。視野を狭くするわけにはいかない。」


カフェの社員との会談後、四日経過。

六月八日の夜、桜内の部下から連絡が来た。

枝川末利が動いた。

彼は夜十一時頃に、二人の男女がアパートに入るまで尾行していた。

それは、十一時四十五分のことだった。

末利の時間は無駄じゃなかった。

零時過ぎ、六月九日の朝方一時二十分、二人のうちの男だけがアパートから出た。

二時間も続いた女性の歌声も、彼が現れる直前に止めた。

男は、駐車場にまっすぐ向かう。末利はそのあとをつき、どんどん距離を縮む。

そして、彼がチャンスを狙い、拳を振ろうとしたところ、数名の警察が現れて、二人を囲んだ。

「動くな!手を上げろ!」

桜内は拳銃を握りしめながら、前に出て、男のマスクを外した。

「おい…」

なんで君はここにいる。

笛木志月。

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