5-8 切り裂きROSI
二日後、四月二十七日。
桜内に一通の手紙が届いた。
「親愛なる君へ:
僕のことを、袋のネズミだと思ってくれているのかもしれませんが、僕はご覧の通り自由自在ですね。
皆さんが、いかにも聡明で、極めて正しい方向
い向けて調査しているところを見ると、ついつい失笑してしまいます。
捕まれるまで、僕はやめない。
この間の女性に悲鳴を上げる時間すら与えず、完璧に仕上げたので、今捕まれては困ります。
すぐ次の作品をお見せしますよ。
証拠に、耳でも送っておきましょうか。
それでは、ごきげんよう。
切り裂きROSI
追伸。
この手紙の公表は考えるものかもしれませんよ。」
警察署についた綿と義孝は、すぐ手紙を読んだ。
「気にくわない口調だが…」
「だが?」
「この手紙が本物なら、洒落にならないぞ。犯人、やめるつもりはないようだ。」
「朝田さん、手紙の内容を公表したほうがいいのでしょうか?」
「…向こうの意のままに行動したくないが、今公表してもパニックを起こすだけだろう。」
「わかりました。」
桜内は綿の指示通り、手紙を金庫に入れた。
翌日、四月二十八日。
黒メイナ、または中馬明奈の元夫である中馬順太の住所は見つかった。
中馬順太本人はすでに他界したが、そこに住んでいる明奈の子供たちに訪ねると、三人はそう決めた。
「あの女の話などしたくありません。どうぞお引き取りください。」
「姉さん、話ぐらい聞きましょうよ。」
「黙って!あんなのお母さんじゃないし、これ以上関わりたくもない。」
明奈の娘はそう言いきった。
それを聞いてた義孝は踏み出し、その十六歳の少女と目を合わせる。
「自分も、君の同じぐらいの年のとき、両親と離れて、兄妹と一緒に生活していました。」
「…あなたも?」
「ええ。寂しかったでしょう。頑張ったのでしょう。」
少女を頭を撫でて、義孝は笑った。
「ここ何年間、お疲れさま。」
明奈の子供たちから、三人は生前の明奈のことを少し知れた。
明奈の大酒飲みと浮気のことを考え、順太は子供たちのために、明奈と別居する決断をしたが、その後病気で亡くなった。
明奈は一度たりとも子供の様子を見に来なかったが、よく愛情の溢れた手紙を送っていただそうだ。
過去の話ばっかりする。
アリサの言った言葉は、再び三人の頭の中をよぎる。
二人の死者、ポリーごと安中真悠璃、そして黒メイナごと中馬明奈、二人の過去に関する調査は進めたものの、肝心な犯人に関する情報は未だに少ない。
そのまま二日経過。
四月三十日の朝方一時、警察署に通報の電話が来た。
まだ残業している桜内は連絡を受け、すぐ現場に向けた。
そこには一人女性の死体が残されたが、前の事件と違って、彼女の首には深い切り傷があったが、腹に傷はなかった。
桜内が現場の状況を把握し始めようとしたごろ、一時四十五分、もうひとつの電話が来た。
もう一人の死体。
彼女の首や腹にいくつかの深い切り傷があって、通りすがりの警察に見つかるまで、静に地面に横になっていた。
そして、その警察はほかでもない、笛木志月だった。
報告を受けた桜内は部下を両チームに分けて、二つの現場に向かわせた。
同日の朝方三時、一人の警察は血まみれのエプロンを見つけ、さらに、その周辺の壁に「あいじょう、ころしきらずに、うしなうか」と書いた落書きを見つけた。
実際に落書きを確認したあと、桜内は綿に意見を求めたのち、サンプル収集後落書きを消させた。
急なことのため、二つの事件の資料は、同日の午後五時についに綿と義孝の手に届いた。
「では説明します。まずは四件目、一時に見つかった死者は娼婦、長リージさんです。
「発見者は出水壘壽さんです。彼は犬の飼い主ご飯会に参加するため出掛け、そして死体を発見しました。
「長リージさんの首、左側の首に深い切り傷が残され、腹のあたりには傷はありませんでした。
「以上です。ご質問は?」
「目撃者の証言に証明できる人を見つけたか?」
「その会合が開催されたこと、出水さんの参加証、そしてご飯会の参加者に出水さんの知り合いがいること、ぐらいですかね。」
「なるほど。今回は首だけで済んだな。次の事件の説明をお願い。」
「五件目の死者は江戸風理さん。本名です。そして、江戸さんも娼婦です。
「二件目と三件目と同じ、彼女は首と腹が切られました。それに加えて、一部の子宮と腎臓が切られて持っていかれました。
「また、その後見つかった血まみれのエプロンとその上の血も、すべて江戸さんのものであることが証明されました。
「それから…江戸さんの耳に傷があります。前の手紙の内容に一致しています。
「四月二十九日の夜頃に、江戸さんは酔いつぶれて、警察署に保護された記録がありましたが、四月三十日の朝方一時に出ました。」
「死体の発見者は?」
「そこら辺に巡回している笛木志月さんです。通報したのは一時四十五分です。」
「さっき言ってたエプロンって、落書きと一緒にいたエプロンであってる?」
「あってます。」
「落書き…筆跡検定は?」
「結果はまだです。」
綿は不満そうに目をそらした。
犯人の思い通りになりつつある。




