表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/47

5-5 咲き誇る桜


「桜内さん!一体何かあった?」

「朝田さん…僕、あとどれくらい努力すれば?」

桜内は苦笑いして問いかける。

「先輩がいない上、連続二つの事件が起こり、僕だってみんなに頼っているばっかりのではなく、なるべく手がかりや証人を探しに行ったのに…!

「なのに…!なのにどうして…!

「三件目が…」

三件目。

綿はキーワードにすぐ反応した。

桜内の机にはひとつ、事件の書類が置いてあった。

それは綿がまた読んだことのない資料だ。


「…あのさ、桜内、桜は好きか?」

「え?」

桜内の困惑な目線を無視して、綿はただ微笑んでいた。

「好きか?」

「いいえ…むしろ、大嫌いです。」

「どうして?」

「桜の花は実れないでしょ?どれだけ努力をしても報われない。」

「…僕は、桜のことが大好きだ。」

「美しいからですか?」

「それもあるが、一番惹かれたのは、絶対諦めていないところだ。」

「…!」

「咲いても無駄だと知っていても、桜は毎年花を咲かせる。奇跡などないと知っていても、諦めたりはしなかった。

「桜内だって、ここで諦めたりしないでしょ?」


桜内!桜内!

うん?

桜のこと、好き?

桜なんて大嫌い。

なんで?

君の努力を…全部無駄にするから。


「…朝田さん、ありがとうございます。」

「力になれてなにより。さっき、三件目の事件が出たって?」

「はい。資料はこちらです。」

死者は娼婦の黒メイナ、本名は不明。

通報した人はタクシー運転手の土橋巡太。彼は一晩中仕事をしたあと、自分のアパートの前に車を泊めてひと休みしようとしたところ、死体の足の部分を見かけてしまって、死体だと判明した時点で速やかに警察に通報した。当時は朝方五時四十五分だった。

死者の顔と手首、胸元に多数のあざが残されており、首もとには左から右への切り傷があったが、息が止まったあとの傷だと推定された。

彼女の腹は切り裂かれ、小腸は引っ張り出され、肩のほうに置かれていた。子宮と膀胱は見つからず、切り落とされたと考えられる。

凶器は鋭く長い刀である可能性が高い。推定死亡時刻は四時頃。

「死者の身分を判明したのは…あ、笛木か。」

「はい。」

「今のところ、怪しい手がかりは?」

「特にありません。今部下たちに目撃情報を集めてもらっています。」

「わかった。ほかに手がかりが見つかったら連絡してくれ。」

「お願いします。」


同日の夕方、桜内から電話が来た。

しかし、それは三件目ではなく、二件目の事件の手がかりだった。

ポリーの同居人だった男子赤根樹磨は、自ら警察に連絡した。

「赤根さんの話によると、彼はずっとポリーを探していて、そして毎週発行の新聞でポリーの写真を見かけたので、それで警察に連絡したんだ。」

「その赤根から何か大事な情報をもらえたか?」

「ポリーさんについてもそこまで知らないみたいですが、元の苗字は安中で、エンジニアの元夫がいる、だそうです。手がかりそう多くはないが、一応こちらでも調べています。」

「わかった。」

電話を切ったあと、綿は桜内から聞いた情報を一々ノートに書き込む。

「朝田…?珍しいんだな。こういうメモ取るんだな。」

「これは、やなにすぐに現状を把握してもらうために作ってるんだ。」

「…!そうか。」

綿はやなの帰りを未だに諦めていない。

そう思うと、義孝はふと微笑む。


翌日、四月九日。

綿は午後に桜内のところに行って、ほかの証人の証言資料をもらう。

そして、義孝は別行動で、事件現場の周りで目撃情報を収集しようとした。

教会の前でしばらく待っていたが、義孝は使える目撃情報を得れず、がっかりするところに、いつぞや見たことのある姿が現れた。

「糸草さん!」

「黒澤さん!ああ、同い年みたいですし、糸草で構いませんよ。」

「でしたら名前の義孝と呼んでください。」

「そうします。義孝はここで何をしていますか?」

「三月十九日の朝方にここら辺を通りかかって、怪しい人物を見かけた人がいないかを調べています。」

「それでしたら、渡部さんに聞いてみませんか。」

「渡部…?」

「はい、葬儀も風習を研究している女の子で、よくそこの墓地に行きます。毎朝通うらしいので、十九日?も来たのかもしれません。」

「…!ありがとうございます、糸草!助かりました!」

「いいえ。渡部さんはそこ、青い屋根のところの二階に住んでいます。明るい人なので、快く手伝ってくれると思います。」

「今聞きに行ってきます!」

義孝は慌てて山を降りる。糸草はふと笑い、墓地の方へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ