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豊葦原のうみつばめ  作者: 空殻
入学試験編
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第六話 四ノ島の試験 夜営


 八雲は初級風属性魔法”旋風(つむじ)”によって、周辺の落ち葉や木の枝を拾い集める。海燕が川沿いの粘土を使い、初級土属性魔法”凝石(ぎょうせき)”で簡単な器を形成すると、八雲の”旋風(つむじ)”で土器を固め、瑠璃がそれを初級火属性魔法”(ともしび)”で焼き、文次郎が初級水属性魔法”水泡(すいほう)”で冷やす。

 日が没し空が茜色から月明かりのない暗闇へと変わる中で、海燕たちは夜営の準備をしていた。八雲の風魔法のお陰で火の燃料には困らず、ぱちぱちと音を立てる火の灯りが四人を照らし出す。


「みんなで作業を分担すると楽だぜ。魔力の消費も抑えられる!」


 海燕がそう言うと、瑠璃もそれに同意する。


「そうね。ここまで迅速に夜営の準備が出来たのは、皆の力があってこそです」


 そう瑠璃が言うと、文次郎の腹がぐうと寝息を立てた。


「何はともあれ晩飯だな。皆から拝借した干飯もあるし、今晩はご馳走だ」


 八雲がそう言うように、海燕たちは現在、食糧に困ってはいない。彼らには、八雲が殺し捌いた充分すぎるほどの熊肉と猪の骨や、亡くなった受験生たちから回収した干飯、瑠璃の指導に従って採集した魔蕗(まぶき)大葉魔(おおばま)などの山菜が山ほどあった。


 それを調理するための簡易的な鍋やまな板、四人分の器と木箸も完成し、いよいよ調理ということになった。


「水は魔法で精製すればいいし……すごく豪華な晩飯になりそうだなぁ。本当に俺も食べていいのか?」

 

 文次郎は若干罪悪感のある顔で三人に問う。熊肉に関しては文次郎は何ら関与していないことなのだ。


「当たり前だ。ガンガン食べて体力を回復させてくれ。特に瑠璃と文次郎は、上級魔法を使って疲れてるだろ?」


「いやー恥ずかしながら……」


「腹ペコです」


 文次郎と瑠璃は恥ずかしそうに頭をかくが、それは恥じるべきではないことだった。上級魔法は、八雲や海燕も習得していない高位の技術である。一度に大量の魔力を消費するということは、それだけ身体に負担がかかる。その回復のために大量の栄養が必要となるのは明白だ。


「沢山食べられるかどうかは味次第だろ。八雲おめー料理できんのか?」


 そして、問題は誰が何の料理を作るか、ということだが、総責任者として名乗りをあげたのは八雲だった。


「夜営なら何度も経験があるから、肉の味付けは任せてくれ」


 と、自分から申し出たのである。


(意外と気を遣えるやつなんだな)

 

 八雲の言葉を聞いて、海燕は感心した。

 そもそも海燕がここで夜営を提案したのは、夜のもののけとの戦闘を避けたかったという理由もあるが、瑠璃と文次郎を休ませるためでもあった。昼間の戦闘で上級魔法を使った二人の疲労は、上級魔法が使えない海燕や使っていない八雲の比ではない。二人はゆっくりと休ませてつぎに備えるべきだった。



「俺も何か手伝おうか?火の管理とかさ」


 文次郎がそう聞くが、八雲は首を横に振る。


「いや、文次は周囲の警戒を頼む。海燕、水を出せるか?」


 言ってから八雲はしまったと思った。大猪との戦いで聞いていたのに。


「わりい、そりゃ無理だ。昔から水属性は苦手でよ」


「なら火の管理を頼む。あ、肉を焼くついでに出汁をとって、干し飯も戻してくれ」


「あいよぉ」


 八雲が予め捌いていた熊肉を軽く刻んで食べられる状態にし、肉と山菜を木串に刺していく。細かく砕いた岩塩をふられた熊肉を見て瑠璃は、あることを思い出す。


「そういえば八雲くん、私、先ほど山椒を採っておいたのを忘れてました!熊肉にかけますか?」


「良いね。肉の味には困らないな」


 その間、八雲は採集した魔蕗などの山菜を刻み、海燕が調理している汁が煮立つのを待つ。

 文次郎は瑠璃が持ってきた岩塩を削り取り、小皿に入れた。


「もし味が薄かったりしたらこれも使おうぜ!瑠璃ちゃん、この塩味見してくれない?」


「はい、では一粒頂きますす」


 瑠璃は文次郎の小皿から一つまみ取ると口に含んだ。

「ん~。塩粒の大きさもちょうどいいですね。美味しいです」


 岩塩は海水にはないほのかなを瑠璃の舌に伝えてくる。


「そうか、良かったぜ」


 文次郎はほっとしたように、しかし嬉しそうに微笑む。



「”炎環”」


 海燕の初級火属性魔法”炎環”によって、木串に刺した熊肉の周囲を、輪のようにうねる炎が熱し、表面からこんがりと焼いていく。ばちばちと音を立てて熊肉が焼ける音が、四人の空腹を刺激し始める。


(見た目通りのすごい野戦料理ですね……)


 熊肉から滴り落ちる油を見た瑠璃は苦笑するのだが、


「あー腹減ってきた!」


 文次郎はその肉の香りに脳を刺激されたのか、笑顔で肉が焼ける音を見守る。それにつられて、瑠璃も苦笑ではなく、微笑みの中でうんと背伸びをする。


(でも、まあ。たまにはこういうのも悪くないか……)


 と瑠璃が思っていると、文次郎ががこっそりと海燕の裏に回る。海燕は大猪の骨と、魔熊の骨を煮込むのに夢中で気付いていない。


(文次郎くん?)


 瑠璃が文次郎を訝し気に見るが、文次郎は唇に手をあててにやりと笑う。


「”紅葉”!」


 文次郎は海燕の後ろで初級火属性魔法、”灯”を発動する。

 海燕の真後ろで揺らめく炎は海燕の赤い髪の毛と相まって赤く染まった落ち葉のように揺らめき、大地へと散っていく。

 

 瑠璃は思わず、その発想のくだらなさにくすりと笑う。


「ぶっ……!」


「ははっ……!」


 それにつられて八雲も笑った。


「って他人の髪を何焼こうとしてんだ文次ぃ!禿げるだろーが!?」


「…いやー、出来心でつい…あんまりにも奇麗な赤髪だったんで、やって、いや、遊んでみたくなって…」


 文次郎は会心の笑みで海燕の絞め業を受けていた。


「ついじゃねぇよ!?出来心で遊ぶのかオメー!?ったくよー……!」


(寺子屋生ですか男子たちは?)


 ぎゃあぎゃあと騒ぎだす文次郎と海燕を仲裁しようと、瑠璃は割り込んだ。


「ちょっと男子ー?何やってるんですか?料理中よ?」


「いや俺がやったんじゃねぇからな!?」


 海燕は文次郎にかけていた腕をふりほどき、再び火を熾す作業に戻る。我関せずという体で傍観していた八雲は、にこりと瑠璃に笑いかける。


「ほっといてやれ瑠璃。俺たち男子はな、怖い時と腹が減った時はふざけていないと死んでしまう生き物なんだ」



「……ほほう、なるほど?」


(思い返せばあいつもそうだったような)


 瑠璃は自分につきまとってきた男子のことを思い出す。一瞬、その男子に見捨てられた嫌な記憶まで思い出しかけそうになるが、


「納得すんじゃねぇ瑠璃!」


「いやいや面白いからいいじゃないか。似合ってるぞ炎」


 海燕のツッコミで、瑠璃は男の記憶を一時的に追い出した。


「いやー……!はじめて海燕の髪を見た時から一度やってみたかったんだ!これで人生に一片の悔いはねぇ!」


「文次の人生軽くねぇか!?」



 瑠璃が、八雲が、文次郎がボケをかませば海燕は必ず合いの手を入れる。四人はそうして騒ぎながら、少しずつ料理を完成へと近付いていった。




「どうだ、海燕?出汁の方は?」


 八雲はこんがりと焼けた熊肉を頬張りながら、海燕に問いかける。

 海燕は左手で大猪の骨を煮込み、右手で魔熊の骨を煮込みながら出汁をとっていた。


「そうだな…」


 海燕は灰汁を掬っていた手を止め、木匙で出汁の味を確かめる。


「熊肉の方はいー出汁が取れたぜ。だがまぁ、大猪はもうちょいかかる。猪汁が喰えんのは明日だな……」


 大猪の骨から魔力と旨味が染み出るのは時間がかかる。じっくりと煮込んでから明日の朝に食べるべきだろう。


「なら、猪汁は明日以降の魔力補充用にとっておこうか。皆はそれでいいか?」


「賛成です」


「いいと思うぜ!」

 

 それと比較すると、右手で煮込んでいた魔熊の骨は素直にその成分を引き出していた。出汁は赤く染まり、魔熊の魔力とほのかな甘さ、そしてすっきりとした後味の出汁となった。

 

「おー、いい匂いになってきたな。どうせだし、熊肉ももっと焼くか!」


 八雲は熊肉の出汁の香りで食欲を刺激されたらしく、熊肉を更に切り分けて火で炙りはじめた。八雲が倒した熊の肉は、山で仮に遭難したとしても四人全員が三日は生き延びれるだけの量がある。


「良いじゃねぇか!火の加減は俺にやらせろよ!」


 海燕も、串に刺した熊肉に初級火属性魔法・火車を発動させじっくりと肉を炙る。


(……んん?)


 火の通りがいいようにきちんと切り分けられた熊肉を頬張りながら、文次郎は海燕の熾した火に違和感を覚える。通した火の魔力量にしては、熊肉の中までしっかりと火が通っていた。


 肉が焼ける様子と、熊肉の出汁が出来上がる様子を見て、八雲は何かを思い出したのか海燕に話しかけてきた。


「そう言えば海燕。今お前が使ってる火の魔法とか、大猪との戦いの時に使った火の魔法。やけに火力が高かったな?あれは海燕が開発したのか?」


 豊葦の国の魔法は、道場や寺子屋で学ぶ。その種類は体系化されていて、基本的に学べる初級魔法、中級魔法はどこでも変わらない。

 しかし、地域によっては、他所の地域で使わない魔法を教えることもある。生息しているもののけの種類によって、必須とされる魔法が異なるのは当然だった。その中には、他所の地域では存在すらしない魔法もあると、八雲は道場の先輩から教わっていた。


 必然的に、海燕使っていた魔法は、道場や寺の指導者にしか教えることを許されていない上級魔法か、自分自身で開発した独自の魔法か、特定の地域でしか伝わっていない魔法のいずれかということになる。


「ああ、あれか?あれは俺の魔法じゃねぇよ。うちの島の宗教はけっこう独特でな?そこで使われてた魔法なんだ」


「そうなんですか?そう言えば大猪との戦いの時も、木に火を灯していましたね」


 瑠璃は熊汁を飲みながら大猪との戦いを思い返してみる。確かにあの時、海燕は直接火をぶつけるのではなく、わざわざ木に火を灯し、それをぶつけていた。


「そうだな。あれは……あれだ。あれだよ。木にもその木自体の魔力はあんだろ?それに反応するように俺自身の炎の魔力を調整して、魔力を合成してんだよ」


「おいおい、そんなこと俺たちにバラしちまっていいのかよ!?そりゃ立派に金がとれる”知識”なんだぜ!?」


 文次郎は慌てて海燕を止めようとする。退魔師が教える魔法というのは、退魔師の犠牲の上で残されてきた技術の結晶だ。平民はそれを学ぶためにわずかな蓄えを払って道場に行くのだ。


(無料で教えていいもんじゃないだろ!?)

 

「命懸けの状況で出し渋るようなネタじゃねぇよ。そもそも、島土着の宗教行事に使ってた魔法だ。隠すようなことでもねぇしな」


「そ、そうか……ありがとう」


「礼なんていらねーよ」


 ふん、と海燕は干し飯をかきこみ、ばりばりと音を立てながら喉を通す。



「……何ですかそれは。魔力の制御ってとても大変なんですけど?」


 瑠璃は肩までかかる青い髪を弄り、若干納得できないような面持ちだった。己自身のものではない魔力を制御することは、難しい。”紅蓮紅輪(ぐれんこうりん)”という上級魔法の制御に失敗した経験もあって、瑠璃は木の魔力を利用するという理論には懐疑的だった。


「”木洩火(こもれび)”は元々込めてる魔力量が大したことねぇからな。木洩火は中級魔法だし。瑠璃の上級魔法と違って、そこまで燃え広がらねー塩梅で使っんだよ」


 海燕は熊肉を食べながら答える。丁度いい塩加減と山椒の酸味が気に入ったようで、すぐに串を平らげてしまう。


「でも私、そんな高等技術できないですよ?」


「たしかに瑠璃の言うとおりだな。本気で修得するのは骨が焼けそうだ」


「骨が折れそうだ、だろ」


 瑠璃がそう言うことは、何も瑠璃が未熟だからではない、と八雲は思う。


 人間の魔力は、その人個人によっても微妙にその質が異なる。魔力とは現実の法則を超えた悪魔の力であり、たとえ兄弟であってもその質は異なるのだ。同じ火属性、同じ難易度の魔法を使っても、個人によって魔力の範囲が異なるので、他人の放った魔法を己の意志で制御することは普通はできない。まして、木の材質だけではなく木の魔力を利用して己の魔力と調合した上でそれを制御するのは、技術として難易度が高い。


 ……そんな中で、突破口を見つけている人間もいた。文次郎だった。 


(いや、これ本当に難しいか?)

  

 文次郎は目を閉じて自分の意識を魔法だけに集中する。周囲の会話の音も、木々のざわめきも、川のせせらぎも全て消え、世界は文次郎だけになる。文次郎は右手で串を持っていて、左手に炎の魔力を集中させる。右手にもっている串の触感は、さらさらしていて握りやすい。

 そして、右手に感じる木の魔力に呼応するように左手に火を灯す。


(これが……火の魔力)


 その火を眺めながら文次郎は思う。これをどうやって増幅させるか。それを考えながら、文次郎は再び目を閉じる。


 火の魔力を掌から感じると、身体が温かくなっていく。その暖かさは血液を通して血管の中を流れるように感じることが出来た。その感覚に身を委ねると、次第にその魔力が体内を循環しているような気がしてくる。

 実際に、火の魔力は血液のように文次郎の体内を駆け巡っていた。


(探し出せ……炎をもっと燃やせるように、魔力を()()()()を作り替えろ)


 そして、体内に巡る魔力が熱を帯びていることを自覚した。


(よし!これだ!!)


 文次郎は目を開け、串を両手で持ち、意識を集中させる。


 すると、串に異変が起きた。串そのものが炎となったかのように火の勢いが増し、先端の枝が勢いよく燃え上がる


「……よっしゃあ!!!」 


 三人が声のあった方向、文次郎を見ると、彼は手元の串を見事に芯から燃やしていた。


「「「……」」」

 三人は文次郎の串を見て絶句する。文次郎は、”木洩火”を成功させたのだ。それも一発で。


「やり方を教えて貰ったお陰で、上手く出来たぜ」


「おいおいおいおい……」


 海燕は文次郎の手元で燃え盛る炎を見て、眉を顰める。


(俺ぁそれ使うのに二か月かかったんだぞ?)


「すごい……!」


「魔法では負けたな。大したもんだ」


 瑠璃たちが拍手する中、文次郎は額に流れる汗を拭う。


「ふう。上手くいったぜ……!」


「ったく。あっさり成功させやがって。おめーは天才だよ、文次郎」


「多分だけどさ、この魔法が知られてないのは危ないからだろ?

 文次郎は思案する。海燕と自分たちとで、本当にそこまで技術的な差があるのだろうか。

 そして結論づける。そこまでの差はないと。


「これだけ便利で()()な魔法が東部で知られてないのは、家が殆ど全部木で出来てるからだろうなぁ。皆のとこもそうだろ?」


 文次郎は海燕の魔法を見ながら推測する。


「簡単?」


「だってそうだろ。皆がこれを使えちまったら……」


今回文次郎が木洩火を習得できたのは、文次郎が天才だったからだ。しかし仮に、木洩火を豊葦原中の平民出身者が知っていたとすれば。文次郎ほどの天才でなくても、火属性の魔法に適性があって寺子屋でもこれが学べたのならば。


「……火付け強盗が多発しまくるぜ。

間違いなく豊葦原の治安は悪化する」

 

 何故なら。火付けや一揆で起きる火の勢いが、それまでより段違いに上昇してしまうからだ。


 防火の護符を貼り、対火性のある防壁魔法を家自体にかけている退魔師の家はまだいい。しかし、そうした退魔師との繋がりを持たない一般的な平民の家が、木洩火に耐えられるとは思えない。

 

 もしこの魔法が公になれば、家を焼かれ路頭に迷う人間が増えてしまうことだろう。力を得て、他人をそういう目に遭わせたいという人間を八雲は知っていた。


「……まぁ、そうだな。北の大地では火は必要だが、この魔法は少し危険すぎる」


「……そうですね。民家も神社もお寺もほとんど木ですし」


「……そうか、民家が燃えたらやべぇもんな……」


 海燕は己の軽率さを恥じた。島の外で最初に出来た友人たちに、良いところを見せようと見栄を張ったところはあったのだ。


「機会があれば使わせて貰うよ。ただ、文次郎の言葉にも一理あるから、人の多い場所で見せびらかすのは無しだ」


「まだ使えはしませんが、練習はさせてもらいます。海燕くん、文次郎くん、間違っていたら教えてくれますか?」


「おう任せろ」


 瑠璃と八雲は、難易度の高い魔法をあっさりと使われたことに動揺しながら誓う。特に瑠璃は、炎の魔法の制御に失敗した身である。色んな意味で余計な火遊びをする気はなかった。


「……ま、お気に入りの魔法が本気で”簡単”扱いされたのは癪だが。おめーらならうっかり口を滑らしたりしねぇし、上手くこの魔法を使うだろ?退魔師なんだからよ」


 動揺から立ち直った海燕は、しぶしぶながらもそう告げた。故郷の魔法なので、出来れば皆の役に立って欲しかったのだ。


「ああ、約束する。この魔法については口外しない。退魔師として誓うよ」


(……俺は無理だが。頭の良いやつならこれの対策魔法も思いつくだろうしな)


 八雲は言葉とは裏腹に、自分自身の交友関係を思い返して、知人にだけはこの魔法を明かそうと決めた。

 海燕には嘘をつくことになるが、現実にこの魔法が存在した以上、その対策魔法の存在は絶対に必要なのだ。


「おう。八雲は律儀だな」


 そうとは露知らず、海燕は八雲を誠実な男だと思ったのだが。


「まぁ、私は大丈夫ですよ。今理論を聞いても実践は出来ませんから」


「……そうか?瑠璃は上級までいけんだから才能は俺以上にあると思うんだがな」


 文次郎以上に、とは言わない。海燕はお世辞と事実の区別はつけられるのだ。

 海燕は瑠璃に親指を立てる。その姿を見て、


(海燕は瑠璃に優しいな……)

 と、八雲は思う。


「えへへ……」


 瑠璃は嬉しそうに照れる。

 燃え盛る薪が四人を暖める中、彼らはもののけを警戒しながら夜営を続けていた。

魔法があって情報格差がある世界だと、”規制された結果一般的に知られてない魔法”って一杯ありそう。

木洩火もその一つです。

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