22:水路
「…で、このPDFファイルの中に脱出に役立つ地図はあったかい?」
「ええ、PDFファイルの中に非常出口までの道のりを記した地図が入っておりました。既に施設内の地図とこのPDFファイルに入っている地図を照合して道案内ができそうです」
施設に関するPDFファイルを見つけ出したミホは実に大手柄を立てたわけだ。
しかしこのパソコンはセキュリティーロックが掛かっているはずなのだが、どうやってロックを解除したのだろうか?
エクスは疑問に思いつつも、おそらくミホの両親のどちらかが、この施設の建設に関わっていた技術者だったかもしれない可能性を考慮していた。
そうでなければ説明がつかない。
だが、きっと父親は感染者の仲間入りをしてしまったのだろう。
脱出する際に死んだのか、それとも今回の騒動の最中に死んだのかは知らないが、あまり深入りしないことがよさそうだとエクスは判断した。
「よし…道のりが分かれば一先ずここを脱出するぞ、拳銃の弾も大丈夫だけど…ミホさんは拳銃を使うかい?」
「いえ、拳銃を持ったことや撃った事がないし…それに、拳銃よりもこっちの方がいいわ」
ミホが手にしたのはエクスが手渡そうとしたSSP220拳銃ではなく、整備課のロッカールームに入っていたバールを手に取って両手で握りしめる。
野球選手のように、しっかりと脇を締めて何時でも感染者が来ても殴れる体制を整える。
感染者との近接戦闘は可能な限り控えた方がいいのだが、エクスはあまりミホに強くは言えなかった。
というのも、ミホの眼つきが先ほどよりも眉間にしわを寄せてエクスを睨むように言ってきたからだ。
(このバールでいい、それ以上私に何も言うな………)
…と、心の何処かで囁く声がエクスに聞こえたこともあり、感染者の血に気を付けてと言う程度に留めておいた。
「…ん、また銃声か………そろそろこっちにも来そうだな、あまりここに長居するのは無用だ。アヤ、出口までの案内を頼む」
「了解いたしました。では、これより保護施設から脱出するまでのルートを選択いたします。お二人は私から離れないようにお願いいたします。」
「おう、了解した」
「…分かったから早くして」
不機嫌なミホをよそに、エクス達は整備課からの移動を開始する。
RM870ショットガンを構えて部屋の外に出てると真ん中にミホを、最後尾をエクスが警戒する形で移動を始める。
ショットガンを片手で構えるアヤに、バールを握りしめて鋭い目つきのミホ、拳銃を二丁持ちで周囲を気にしながら進むエクス。
銃声が鳴り響くA区画内に蠢く感染者の群れを可能な限り避けながら移動していく。
整備課を出て5分後に、曲がり角に差し掛かった時に、待ち構えていた感染者がアヤのショットガン目掛けて飛びついてきた。
感染者の姿は一つ目の化け物と化している女性であったようだが既に理性を無くし、無差別に人を攻撃してくる奴らの仲間と化してしまっている。
大きく口を開けてアヤのショットガンの先端を掴もうとするが、間一髪の所でアヤはショットガンを引いたお陰で難を逃れる。
「危害を加えるのを止めてください、さもなくば撃ちます」
直ぐに、アヤはショットガンを構えて感染者の頭に狙いを定める。
アヤの警告を無視して襲い掛かろうとする感染者の頭を目掛けて散弾が放たれる。
無数の散弾が感染者の頭部に着弾すると、無数の弾丸が感染者にめり込んでいき、頭部の頭蓋骨や目玉を肉片と化して床に倒れ込む。
頭部を大きく損壊した死体は床に前のめりに倒れ込むと、異臭を放ちながら紫色の血を床に飾りつける。
その死体を乗り越えて先に進むと、通路で待っていたのは周囲を警戒する兵士たちの姿と、命乞いをしているA区画内の住民の姿であった。




