■第98話 全員集合
コースケが揃い、更に賑やかな夕食となった。
和室に準備した座卓はみんなが肩を寄せ合って座り、少し狭いけれどそれが
より活気を生み、和やかで明るいムードが助長される。
リコが改めてタケを紹介する。
コースケは笑顔で『よろしくー。』と手を出し、タケもそれに応えて二人は
”はじめまして ”の握手をした。
コースケの手が友好の意を込めぎゅっと掴むも、タケのそれは力なくただ前
に差し出されただけで握り返すこともない。一瞬コースケはタケに目を遣る
とまるで感情の無い空虚な視線が送られ、すぐさま逸らされた。
タケが、まだ聞いていなかったリコ・ナチとコースケ達の出会いの経緯を訊
ねる。高校生と大学生が、どういう流れでこんな風に自宅に遊びに来るまで
親しくなるのか正直腑に落ちない。これがバイトをしていてその先輩後輩と
かなら分からないでもないが、リコもナチもバイト禁止の女子高なのだ。
すると、コースケが懐かしそうに微笑みながら話し始めた。
『俺が本屋にいるところを、リコちゃんに逆ナンされたんだよ。』
リコは一瞬驚いて恥ずかしそうに言葉に詰まり、しかしどうしても緩んでし
まう頬を必死にいなし、更に誇張して話に乗る。
『そうそう!
イケメンが困ってそうだなぁ~と思って、声かけたのっ!!』
そしてリュータ達も話を合わせ始めた。
『コースケがJKから逆ナンされたってゆーから、
学祭さそって~ぇ、飯行って~ぇ、
俺たちは付き合い始めちゃって、・・・みたいな?』
リュータがナチに馬鹿みたいに大袈裟に甘いウインクを投げる。
ナチは白けた顔で『バカじゃないの?』と返しながらも、堪え切れずに
ぷっと吹き出した。
それが津波のように伝染し、リコ・ナチ・コースケ・リュータ4人で盛り
上がり爆笑する。愉しそうな高音と低音の笑い声はカルテットとなり部屋
中に小気味よく響き渡った。
そんな中、タケだけが話が分からず、四人に合わせてなんとなく作り笑顔
を浮かべていた。
すると、小さく乾いた笑い声で暫しその場の空気に合わせていたタケが、
急に昔の話をし始めた。
中学時代のリコがああだった、こうだった。
ナチがあんな事した、こんな事した。
タケはがむしゃらになって自分とリコ・ナチだけの思い出話をやや大袈裟に
身振り手振りを付けて披露している。時間で言えばコースケ達よりもタケの
方が長く二人と一緒にいたのだから、まだまだ語りつくせない思い出はある
のだ。
そのどこか必死なタケの姿に、コースケがなんとなく気配を察した。
『タケ達の話、もっと聞かしてくれよ~!』
コースケが笑ってタケに話を振る。
タケは少しだけ顎を上げ見ようによっては挑発的に、少し得意気に話し始め
再び恥ずかしい暴露大会になってみんなで笑い転げた。
散々しゃべって笑って、そしてお腹がはち切れそうに美味しいものを食べて
飲んで、和室で各々まったりと休息を取っていた。
コースケは笑い過ぎた火照った頬で少し涼もうと和室を抜け出し、外の玄関ポ
ーチの段差に腰掛けてひとり休んでいた。
視界からコースケの姿が消えた事にリコが気付き、キョロキョロと探し回ると
玄関ドアを開けた先にその大きな背中を見付け、嬉しそうに玄関履きを爪先に
引っ掛け、そっとその隣に座った。
『久しぶりにこうやってみんなで騒いだなぁ~・・・。』
嬉しそうに笑うコースケを、リコは横目でチラリ見て笑顔で『うん。』と頷く。
『リカコさんにもいてほしかったけどね~。』と、海外のリカコを思った。
すると、『タケは、イイ奴だな。』
コースケはタケがどれだけリコやナチを大切に思っているか、このたった数時
間という短い時間でもハッキリ分かり、優しく呟く。
コースケの言葉に、『ナチと同じくらい親友だからね!』とリコが嬉しそうに
誇らしげに返した。
自分の友達をコースケに紹介出来て、おまけに褒められてリコは素直に嬉しか
った。その分かり易いリコの得意気な横顔を見て、コースケは中学時代の恥ず
かしいエピソードを蒸し返して、からかう。
まだ3月の夜風はたいぶ冷たくて、ふたりの笑い声は白く煙って静かに流れた。
羽織るものを持ってきていなかったので、どんどん体は冷えていく。
しかしそれでも、リコはこのままコースケの隣で並んで座っていたかった。
すると二人で笑い合っていたところに、タケがやって来た。
中々戻らないリコを探して、和室を抜け出して来ていたのだった。
『こんな所で2人で何してんの?』
それはどこか少し棘がある口調に聞こえ、コースケがさっと立ち上がる。
『ちょっと涼んでただけだよ。
タケも気持ち良いから座れば?
俺はまた、中に入って飲んでくるからさ~。』
微妙な空気を察し、コースケは玄関内へと戻って行く。
リコは玄関ポーチの段差に腰掛けたまま上半身だけ振り返り、その姿を目で
追うと慌てて立ち上がり後をついて中に入ろうとした。
その腕を、タケが咄嗟にギュっと掴む。そしてリコの腕を引き寄せて隣に座
らせようと力を入れる。
『タケ・・・ 痛いよ。 力、入れ過ぎ・・・。』
タケが尚も腕を強く掴んだまま、黙ってリコを睨みつけた。




