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■第91話 宣言


 

 

 『あれっ?! リ、リコちゃ・・・』

 

 

バイトから帰宅したコースケが実家の階段下で縮まるリコに呼びかけた。


リコが自分不在の実家に居ることも謎だが、身を潜めるように階段の踏面

に手を掛け2階に行こうか行くまいか悩んでいるような、その中腰姿。


名前を呼び掛け終わる前に大きな声を出さぬよう『シッ!』と、リコが唇

に人差し指を当てて遮られたそれにも、コースケは小首を傾げた。

 

 

 

 (どぉ~した~のぉ~?)

 

 

 

コースケが大仰に口を大きく開けて、クチパクでリコに問い掛ける。

 

 

すると、

 

 

 

 (い~まぁ~、 リュータさんとぉ~、 ナ・・・)

 

 

 

目の前のリコもクチパクで説明しようとし、その唇の動きを解読しようと

したコースケが、それの無意味さに気付いて少しだけリコの耳に近付き耳

打ちする。

  

 

 

 『えっ?! 話し合いしてんの・・・?』

 

  

 

リコはリュータとナチ二人が神妙な面持ちで2階へ上がって行った話を

した。リュータは困り果てて眉根をひそめ、ナチは顔面蒼白だったそれ

を思い出し、暫く経っても一向に二人が戻って来ないので、リコは大喧

嘩でもして泣いたりしているんじゃないかと心配になってきていたのだ。

 

 

部屋に入って行って二人の間に割って入るのもどうかと思い、ただ一人

オロオロと階段を上ろうか止めようか中腰状態で狼狽えていたのだった。

 

 

 

 『・・・ねぇ、どうしたらいいと思う?』

 

 

 『取り敢えず、行ってみよう!


  ・・・ってゆうか、俺の部屋だし・・・。』

 

  

 

コースケとリコは、なるべく足音を立てないように四つん這いで階段を上

がる。そして2階廊下の奥にある部屋の前まで来て、二人は顔を見合わせ

どちらからともなくコクリと頷き合うと、部屋のドアに耳を当てて中の様

子を伺った。

 

 

すると、

 

 

 

 『うはははっ・・・!』


 『あはは~・・・・!』

 

 

 

薄いドアの数センチの厚み越しにリュータとナチの笑い声が聴こえる。


コースケとリコはドアから耳を離すと再び顔を見合わせて首を傾げた。

そして互い確認し合う様に視線だけ交わすと、恐る恐るドアをノックする。

 

 

 

  コンコン・・・

 

 

 

それはやけに他人行儀に、やけに律儀に、まるで入社試験の面接会場にでも

入室しようとしているリクルートスーツ姿のように。

 

 

 

 『・・・し、失礼しま~ぁ・・・す・・・。』

 

 

 

しずしずとドアの奥から覗き込んだコースケとリコに、リュータとナチが不

思議そうに小首を傾げ呟いた。 『何やってんの? お前ら・・・。』

 

 

至って普通に、むしろ和やかな雰囲気を醸し出すリュータとナチ。


リュータはコースケのベッドにギブスの脚を投げ出して腰掛け、ナチはその

足元に体育座りをしてベッドに背をもたれ、並んで座っている訳でもないけ

れど心なしかその二人の距離は近付いている様な気がしないでもない。

 

 

 

 『・・・イヤ。


  ぁ、あの・・・ ケンカとかしてんじゃないかと・・・。 なぁ?』

 

 

 『・・・ねぇ?』

 

 

 

慌ててコースケとリコが顔を見合わせ相槌を打ち合う。


その頬は下手くそな愛想笑いを浮かべ、なんだか仲良さそうなリュータと

ナチへと交互に視線を走らせて。

 

 

『ケンカ? ・・・なんで??』 ナチも、ハテナ顔で返した。

 

  

その全く以って不安に思う必要の無さそうな二人を目の当たりにし、正直

拍子抜けしたようにコースケとリコは気の抜けたように笑って誤魔化す。

 

 

 

 『ぁ、あはは・・・


  ・・・まぁ。 とにかく、仲良さそうで良かった良かった。


  仲良きことは美しきこと哉? あははー・・・。』

  

 

 

すると、リュータが急に真面目な顔を向け、だらしなくベッドから投げ出

していた脚を正す。

 

  

 

 『俺たち、決めた。


  もう誤魔化すの、やめた。

 

 

  これからは、ずっと一緒にいる事にしたから。』

 

  

 

リュータが高らかと宣言をした。


『付き合おう』という明確な意思確認をし合った訳ではなかったのに、

こんなにハッキリと友人の前で宣言されて、ナチは途端に頬が高揚し照れ

臭そうに俯いたが、そのほころぶ顔はとても嬉しそうだった。

 

 

 

 『ナチっ!!! 良かったねぇ・・・。』

 

 

 

リコが思い切りナチに抱きついた。


リコの胸の中で、ナチはコクリコクリと無言で頷く。嬉しすぎて幸せすぎて

声が出ないナチの頬の熱が、リコの洋服へ沁み込みじんわり熱い。

そして顔がとろけそうなくらい、二人は微笑み合った。

 

 

『リュータ・・・。』 コースケが珍しく真顔でその名を呼び掛ける。

  

 

 

 『お前・・・ なんか、格好いいなぁ・・・。』

 

  

 

すると、リュータが嫌味たっぷりに言い放った。

 

 

 

 『今頃気付いたかっ! この、ニブ男がぁあああああ!!』

 

  

 

みんなの優しい笑い声が響く。

心が温かくて温かくて、頬が火照るくらいだった。

 

 


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