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■第85話 2人の新たなる一歩


 

 

コースケは真っ直ぐリコを見つめたまま、話を続けた。

 

  

 『マリの事が好きなのか・・・ 前にリコちゃん、訊いたろ・・・?


  俺とアニキとマリの事も、知ってんだよな・・・?

 

 

  長い付き合いだし、もう家族みたいなもんだし、


  どうしても放っておけないんだ・・・ マリも、たっくんも・・・

 

 

  それが、どんな意味なのかも正直分かんねぇ・・・

 

 

 

  でも、きっと、俺は。

 

 

  マリが泣いてたら、慰めに行く・・・


  マリが困ってたら、助けに行く・・・

 

 

 

  そんな状態で誰かと向き合ったって、傷つけるだけだと思う・・・


  例え、それが ”家族愛 ”だとしても。

 

 

  それを理解しようと必死に誰かが我慢する姿は、


  俺は見たくないし、そんな事させたくない・・・

 

 

  だから。


  今は誰とも付き合えない・・・ 付き合わないんだ・・・。』

 

  

 

コースケの真剣な言葉を、リコは最後まで黙って聞いていた。


真っ白い頬を透明な雫が伝い流れる。

しかしそれは哀しい涙というよりは、どこか頼もしく誇らしいそれだった。

 

 

リコは心の中で、やはりコースケを好きになって良かったと痛感していた。

  

 

 

 『ちゃんと話してくれて、ありがとう・・・。』

  

 

 

そう言って、リコは微笑む。


そして、ゆっくりゆっくり大きく深呼吸をするとコースケを真正面から真っ

直ぐ見つめて胸を張って言った。

 

 

 

 『やっぱり私は、あなたが好きです。


  1年経っても、その気持ちはなにひとつ変わらない。

  

  

  ・・・このまま、好きでいさせて下さい・・・・・・。』

 

 

 

その凛とした透き通るような声音に、コースケは少し哀し気に眉根をひそめ

何かを言いかけ、リコが慌ててその口許を手で塞ぎそれを遮る。

 

  

 

 『私がそうしたいから、勝手にそうするだけっ!


  別に、コーチャン先生にそれを止める権利なんて無いからねっ!』

 

 

 

明るく頬を緩めて言い放つリコに、コースケは少し泣き出しそうな目を向

ける。そこまでしてもまだ想い続けてもらえる価値など、自分自身にある

のか分からず、ただただ不甲斐なさだけ募って。 

 

 

しかし、目の前のリコは眩しいくらいに明るく笑っている。

まっすぐ笑ってくれている。

 

 

コースケは、リコの手の平で口を塞がれ ”降参 ”とばかりに両手を上げる

とコクリコクリと首を数回縦に振り頷いた。


そして、『苦しい~~! 殺す気か~~ぁ!!』 と大袈裟に肩で息をする。

 

 

リコは、敢えて大仰に茶化してその場を和ませようとするコースケの優し

さと温かさを感じ、鼻の奥にツンと込み上げる熱いものを必死に堪えた。

 

 

そして二人、顔を見合わせ声を上げて笑った。

 

新たなる一歩を踏み出したリコとコースケだった。

 

  

 

 

 

その後は二人でケーキを食べながら、互いのこの1年間の色々な話をした。


コースケが子供たちにバカにされながら必死に絵の練習をしていた事。

リカコは休学届を出して、たった一行だけの素っ気ないメールを寄越し海外

に行ってしまった事。

リュータがナチの去った後、廃人のようになっていた事。

 

 

そして、

 

 

ナチに似た子に思わず見惚れて余所見をし、バイクで横転して事故った事を。

 

 

 


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