■第82話 コースケの考え事
コースケは自宅の自室でひとり、考え事をしていた。
ベッドに腰掛けるコースケのその膝の上には、リュータの愛猫あおいが丸
くなって眠っている。最近やっとこの部屋に慣れてきたあおいだが、最初
はエサも口にしてくれずコースケを焦らせた。リュータが入院して世話が
出来ない為、コースケがあおいを預かっていたのだった。
小さな寝息を立てるあおいを優しく優しく撫でながら、コースケは考えて
いた。久しぶりに再会したリコの事を。
1年前、ふいにリコから気持ちを打ち明けられ、今までそんなこと想像だ
にしていなかったコースケは激しく動揺してしまった。ただただ呆然とし
て声を失い、リコのことを気に掛ける心の余裕など全くなくて。
その動揺はあまりに分かり易かった為、あっさりとリコに伝わった。
そして、リコを傷つけた・・・
あの時コースケはなんと返事をすればよかったのか、未だに分からない。
”ありがとう ”でもない、”ごめん ”という言葉は違う。
ただただ、そんなリコの気持ちに全く気付けずにいた脳天気な自分に対し
腹が立ち自己嫌悪に陥った。
例え無自覚だったにせよ、リコの気持ちを利用してイラスト描きの手伝い
をさせていた事になるのかもしれないと思うと、もうどうしていいか分か
らなくなった。
リコが言わないのをいいことに ”気持ち ”に胡坐をかいて、都合よく使
っていただけなのではないかと。
それからリコからは連絡が来なくなり、こちらから連絡なんて出来るはず
もなく長い時間が過ぎ、気付くともう1年も経っていた。
しかし、コースケはリコの事をいつも気に掛けていたのだった。
志望校は絞り込んだのかな・・・
そろそろ受験かな・・・
元気にやってるかな・・・
すると、先日病院で思いもしなかった再会を果たした。
リコは何も変わらず、1年前のまま笑顔だった。
むしろ、一本芯の通った凛とした顔になっていたようにも見えた。
また言葉を交わせた事がコースケは嬉しかった。
リコが明るく前を向いてくれていて嬉しかった。
(また、みんなで集まって騒げたらいいのにな・・・。)
あおいに目を落とし、弱々しく微笑んだその時。
ジーンズの尻ポケットに突っ込んだままのケータイにメール着信のメロディ
が響き、突然の騒がしいそれにあおいがビクっと反応する。
◆From:リコちゃん
◆Title:美大合格しました!
◆今、掲示板で確認してきました!
嬉しくて思わずメールしちゃいました(笑)
ケータイの画面を見つめ、コースケは目を見張って固まる。
そして一拍遅れて押し寄せた驚きと喜びに、思いっきりガッツポーズをして
腰掛けていたベッドから飛び上がった。その勢いに、膝の上のあおいがビッ
クリして毛を逆立て飛び退く。
すると、
『もしもし・・・ 俺・・・。』
『・・・?
・・・コ・・・ コーチャン、先生・・・??』
ケータイを当てた耳がやけにジリジリと熱い。
コースケはリコに電話をしていた・・・




