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■第63話 ライバル


 

 

みんなでしゃべり笑いご飯の後に更にドリンクバーで粘って、夜9時に解散する

事にした6人。

 

 

ナチ一人だけがふくれっ面のまま、終始不機嫌そうだった。

ぶすっとして会話にもあまり参加せず、伏し目がちに膝の上の指先にばかり集中

してパチンパチンと爪を弾いて。


そんな様子を横目で見ながらリュータは困り果てていた。

 

 

ファミレスを出ると軽く手を上げて互いに挨拶を交わし、各々自宅へ向けて歩き

出した時リュータがナチを呼び止めた。


肩にやけに力が入ったその華奢な背中は、顔を見なくてもその感情がありありと

溢れ出てしまっている。ナチは一瞬リュータの声にピクンと反応するも、無視を

して歩き続ける。


すると小走りで追いかけ後ろからぎゅっとナチの腕を掴んで引き留めたリュータ。

 

 

それを見たアカリがあからさまに苛ついた表情で頬を引きつらせ、リュータを追

いかけようとした所を瞬時にリカコに止められた。

 

 

 

 『少しはナチの気持ちも考えなさい。』

 

 

 

アカリは口を尖らせてむくれながら、その言葉に黙って従った。

 

 

リュータは強く掴んでしまったナチの腕をそっと離すと、後頭部をガシガシと

掻いて背を丸め謝る。

 

 

  

 『ナチ・・・ごめんな。 アカリが嫌な思いさして・・・。』

 

 

 

そう言うリュータは、なんだかしょぼくれて本当に申し訳なさそうに見える。

 

 

 

 『・・・別に。リュータさんが謝らなくてもいいけど・・・。』

 

 

 

そう言いながらも、ナチはまだ俯いてふくれている。


スニーカーの爪先で意味も無く小石を蹴とばすと、靴底がアスファルトに擦れた

音が耳についた。

暴れん坊のアカリに負けず劣らず子供みたいなナチを、リュータはそっと見つめ

ナチの耳元へ少しだけ顔を近付けた。

 

 

 

 『月曜の夕方、さっきのスイーツ奢るから許して。』

 

 

 

そっと耳打ちをする。

 

 

突然近付いたリュータの顔と耳にかかった息。

一瞬驚いて固まったナチが急にガバっと顔を上げ、花が咲いたような笑顔になる。

 

 

すると、少し離れた所でイライラしながら2人の様子を見ていたアカリが、耳打

ちしたリュータと、それを小躍りでもしそうに喜び笑顔を作ったナチの姿に我慢

の限界とばかり、急に声を張り上げた。

 

 

 

 『リュータァァァ! 帰るよっ!! 早くしろ、バカっ!!!』

 

 

 

夜空にアカリの怒号が響き、やれやれと肩をすくめてリュータが目配せする。

 

 

『じゃぁ、月曜にな!』 そう優しく呟いて、リュータはアカリの元へと駆け戻

った。アカリを乗せたリュータのバイクが走り去り、どんどん遠く小さくなる。


小さく手を振りリュータの背中を見送るナチは、最後の最後に ”約束 ”して

もらえた事が嬉しくて嬉しくて仕方なかった。

 

  

 

 

 

ナチはリカコと一緒に静かな夜道を歩いていた。


スニーカーの靴底がアスファルトを踏みしめる音と、パンプスのヒールのそれが

住宅街の家々から漏れる灯りに優しく溶けてゆく。

 

 

 

 『ねぇリカコさん・・・


  なんであの子、私にだけあーなんだろ?』

 

 

 

ナチのぼやきを聞いて、一瞬リカコは固まりそして大笑いした。

 

 

 

 『 ”同じようなもの ”を感じるんじゃない? アンタに。』

 

 

 

そう言って、またケラケラと声を上げて笑う。

ナチはそんなリカコを横目に、その意見に全く納得出来ずにいた。

 

 

 

 『 ”同じ ”って何がぁ?!


  私、あんなにワガママじゃないし


  あんな風にリュータさんを振り回したりしないよっ!!』

 

 

 

その憤慨する様子をチラリと見て、リカコが目を細め微笑む。

 

 

 

 『 ”ライバル ”って意味で、よ。』

 

 

 

その瞬間、ナチは口を尖らせて黙りこくった。

照れくさそうな苛ついているような、なんとも言えない微妙な表情を作って。

 

 

リカコが続ける。

 

 

 

 『きっと一目でアンタがリュータを好きだって気付いたのよ。


  アカリにとっては、大好きな大好きなおにーちゃんだもん。

  

  

  リュータの目が他に向けられるのが悔しいのよ・・・。』

 

 

  

リカコはナチとアカリの前でオロオロと狼狽えていたリュータの情けない顔を

思い出していた。

 

 

 

 ( ”どっち ”も大切で可愛くてしょーがない、って顔しちゃって・・・。)

 

 

 

リカコは一人、また豪快に高笑いした。

 

 

 



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