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■第62話 続・ナチVSアカリ


 

 

終始、アカリペースで会話は進んでゆく。


最初はそれも我慢していたナチだったが、アカリはナチが口を開くと決まって

それに被せるように自分の話をしはじめる。

ナチが不機嫌なふくれっ面になってゆくのに、そう時間は掛からなかった。

 

 

リュータはそんなナチをチラリと横目で見て、困り果てた顔で俯き後頭部をガシ

ガシと掻き毟る。小さくため息をついて再度ナチへと視線を向けると、一瞬目が

合ったものの即座にナチはぷいっと顔を背けてしまった。

 

 

慌てたリュータはナチの方へメニューを差し出し、表紙をめくってすぐのページ

にある ”秋の新作スイーツ ”特集を見せる。

 

 

 

 『ほら、ナチ!


  秋の新作スイーツ出てんぞ? いいのか?いいのかぁ??』

 

 

 

リュータが自分に話し掛けてくれた事とスイーツというワードに、ナチの顔が

パっと明るくなる。満面の笑みで身を乗り出してメニューを覗き込みかけると

アカリが即座に手を伸ばしそれを横取りした。

 

 

 

 『あ、本当だー。


  リュータ、これ食べたい。 注文して。』

 

 

 『・・・。』

 

 

 

図らずもアカリに奪われてしまったメニュー表をナチは呆然と見ていた。


次第に真っ赤に染まってゆく頬。ナチはバンっと勢いよくテーブルを叩いて立ち

上がり、怒ったような泣きそうな顔をしかめてトイレへ向かって走って行った。

 

 

 

 『アカリ、いい加減にしな?』

 

 

 

さすがにアカリのそれを見かねたリカコが注意する。


しかしアカリは悪びれない様子で、長い髪の毛を指先にクルクル巻き付けながら

呆気らかんと笑って言った。 『だって、面白いじゃーん。』

 

 

”面白い ”という割りにはアカリの顔は微塵も笑ってはいなかった。

 

 

 

 

 

リコはナチを追いかけてトイレへと向かった。


女子トイレの扉をくぐると、3つある個室の内ひとつだけが閉まっている。

リコはしずしずと様子を伺いながら小さくノックして声をかけた。

 

 

 

 『ナチ?


  ・・・ねぇ、ナチ。 大丈夫?』

 

 

 

しかし返答はない。


泣いているのではと心配したリコだったが、すすり泣く声も怒り狂うそれも

呼吸の音さえも聴こえない。

 

 

 

 『ねぇ、ナチ・・・


  ちょっとからかわれてるだけだよ、気にしないで!』

 

 

 

すると、バンっと大きな音を立ててドアが開いてナチが出て来た。

 

 

 

 『なんなの? なんなの? なんなのぉぉぉ?!


  私、なんで初対面の人にあんな態度とらんなきゃいけないのっ?!』

 

 

 

あまりに怒り心頭で頭に血が上って、ナチはファミレスのトイレ内だという事も

忘れて叫びまくる。地団駄を踏み両の拳を乱暴に振り回し、悔しくて仕方がなさ

そうに顔を歪めて。

 

 

リコもアカリの態度は目に余るものがあると思った。

あれはナチが怒るのも無理はない。


しかし、どことなく憎めない感じがした。困ったものだとは思うけれど、だから

といってアカリを嫌いになるかと言われれば、そこまでではないような。

 

 

アカリはまるで ”小さな子供 ”なのだ。

大好きなお兄ちゃんを独り占めしたい欲求を抑えられない、小さな小さな子供。

 

 

 

 『学校だってあるんだし・・・


  本気で家出なんて言ってないよ、きっと。

 

 

  ほら、ナチ。戻ろう?


  あんな子供っぽい挑発に乗っちゃダメだよ!!』

 

 

 

トイレ内でリコに説得され、ナチは渋々席に戻った。

その顔はまだ不貞腐れていて、不機嫌そうに目を落とし誰とも目を合わせようと

しない。


リュータがリコにチラっと視線を向け ”スマン ”と目で合図した。

リコは困った顔で肩をすくめて、それに合図し返す。

 

 

すると、

 

 

 

 『遅かったじゃん? うんこ??』

 

 

 

ナチが着席早々、アカリが待ってましたとばかりに攻撃した。

 

  

 

 『う ん こ じゃ な い わ よっ!!!!!』

  

 

 

ナチの怒号が店内中に響き渡った。

 

  

 

 

 

終始そんな感じでナチとアカリはぶつかり合ってばかりいた。

アカリは隙あらばナチをからかって攻撃をしかけ、ナチもそんなの無視すれば

いいものを全身で受けて立ち全力で対抗する。


しかし、そんなアカリをリュータは少し安心した眼差しで見ていた。

 

 

アカリはこんな性格のお陰で昔から友達がいなかった。

ひねくれ者な為、すぐ嫌わて敵をつくってしまうのだ。

それは、本当は人一倍寂しがり屋で甘えん坊のアカリの精一杯のサインだった。

 

 

最初の段階でアカリの性格を目の当たりにすると、普通みんな去っていった。

アカリから離れさえすれば面倒に巻き込まれる事はないのだから。


しかし、ナチは売り言葉に買い言葉でアカリに負けず劣らず対抗していく。

リュータにはナチと言い合いしているアカリはどこか愉しそうに見えていたのだ。

 

 

 

 『いい友達になれると思うんだけどなぁ・・・。』

 

 

 

リュータは一人、片肘ついてストローを咥えたままボソっと呟いた。

 

 

 


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