■第61話 ナチVSアカリ
リカコの号令で、久しぶりにいつものファミレスに集まる事になった5人。
リュータとアカリを覗くメンバーは既にテーブルにつき、二人の到着を待って
のんびりと近況報告をし合っていた。
すると、
『リカコさぁぁあああんっ!!』
入店合図のチャイムが店内に響くや否や、モデルのように背が高く大人っぽい
アカリがキョロキョロと辺りを見回し、店奥にリカコの顔を見付けて満面の笑み
で駆け寄る。そして一気にリカコの目の前までやって来ると、両手を広げて抱き
付いた。アカリはリカコを姉のように慕っていたのだった。
ナチは初めて見るリュータの妹アカリを神妙な面持ちで見つめる。
思った通り、否。思っていた100倍、アカリは美形で他を寄せ付けないオーラ
が溢れ出ていた。
元々長身だが、エナメル超のストラップ付ストームパンプスの8センチヒールが
ますますそのスラっとした体形を際立たせ、ノロノロと後方に続くリュータとの
身長差も絶妙でまるでファッション雑誌から飛び出したカップルのように見える。
(この子がアカリさんかぁ・・・
・・・すっごいスタイル良くて、キレイじゃん・・・。)
なんだか居場所無げに情けなく背を丸めたナチ。
どっぷりと落ち込みかけて我に返り、相手は血の繋がった ”ただの妹 ”だと
自分をいなす。別に張り合う相手ではないのだと、心の中で繰り返して。
そして、必死に愛想を振りまこうとナチは表情筋を無理やり上げてアカリに笑み
を向けた。
すると、
『・・・なに? このJC2人組。』
リカコに熱いハグをしながら、リコとナチふたりを馬鹿にしたように横目でチラ
っと流し見て、半笑いで言ったアカリ。チェリーピンクが目映いぷるんとしたグ
ロスの唇が意地悪くひしゃげる。
するとコースケとリュータが ”JC ”というワードに思わずぷっと吹き出した。
『ちゅ、中学生じゃないわよっ!! 高2なんですけどっ?!』
ナチは立ち上がってムキになって言い返す。
先程まで必死に上げていた表情筋がアッサリと下がり、唇は不満気に突き出る。
『高2~??』 それを聞いてアカリはナチの隣に並んだ。
ナチは身長153cm。それに比べてアカリは168cmプラスヒールで同じ
高校2年生とは思えない大人っぽさだった。
『チビなだけじゃなくて、
幼児体型なのも中学生に見える理由じゃな~ぁいっ?』
アカリは顎を上げ、胸を張ってアピールする。
ボーダーのゆるニットワンピは、スレンダーなのにグラマラスでメリハリのある
キレイなボディラインを目が釘付けになる程に強調させている。
ナチは歯がゆそうにただ口をモゴモゴと蠢かせるも、結果、言い返す言葉が一つ
も見付からず不機嫌そうな顔でドシンと席に着いた。
6人掛けのテーブルに、当たり前のようにリュータの隣にはアカリが座る。
そこは、普段はみんなが気を使ってくれる ”ナチの指定席 ”だというのに。
(妹さんなんだから・・・
久々だから仕方ない仕方ない・・・
・・・今回だけ、今回だけ、今回だけ・・・。)
ナチが心の中で必死に自分に言い聞かせるようにブツブツ呟く。
しかしその顔は眉間にシワを寄せ口を真一文字に噤んで、不本意極まりないのが
ありありと浮かんでいる。
そんなナチを、隣に座るリコがこっそり耳打ちして励した。
『数日で帰るんだろうし・・・。 気にしない! 気にしないっ!!』
その言葉にすがるようにナチは情けない顔で小さくコクリと頷いた。
呑気にテーブルに頬杖をつき、ひとり愉しそうにその状況を眺めていたコースケ
がアカリに訊く。
『アカリちゃん、今回は何日ぐらいこっちにいられんの?』
すると、
『家出してきたの。 ずっといるつもり。』
ブーーーーーーー!!!!
ブーーーーーーー!!!!
アカリから飛び出した言葉に、リュータとナチが口に含んだドリンクを豪快に
吹いた。
『ちょっと待て! お前、聞いてねーぞ?んな事・・・。』
『ちょっと待ってよ! 何それ?なんで帰らないのよ・・・。』
リュータとナチが同時に発し、立ち上がる。
口の端からはだらしなくドリンクが垂れてしまっているけれど、そんな事など
気にしていられない二人。目を白黒させ、バンバンとテーブルを打ち鳴らして
抑え切れない衝撃をアカリにぶつける。
しかし、
『同時に言われても、全然聞き取れないんですけど。
こう見えても、聖徳太子じゃないんで、私・・・。』
アカリが至極冷静にコーヒーを飲みながら飄々と答えた。
ツンと澄まして美しい姿勢で、まるでリュータとナチの周章狼狽などどこ吹く風。
すると、コースケとリカコがそれを見て大笑いした。
あまりに豪快に笑われて、リュータとナチは不満気に睨みを利かせる。
リコは何も出来ず、ただオロオロしてうろたえた。
アカリだけが、まるで無関係かのようにシレっと素知らぬ顔をしていた。




