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■第51話 イラスト案


 

 

いまだファミレスでぼんやりと遠くを見つめ、動けずにいたリュータのケー

タイにライン着信のメロディが小さく響いた。

 

 

ノロノロと恐ろしく遅い動きで尻ポケットから取り出したケータイには、

送信者はナチの表示。


ふと、プロフィール画像が目に入る。ついこの間、嬉しそうにあおいを写メ

で撮り使っていたはずのそれが、以前BBQをした時の笑顔の5人のそれに

変わっている。

 

 

 

 『・・・・・・・・。』 

 

 

 

ナチからのメッセージをに目を落とす。

そして再び大きな大きな溜息をついた。

 

 

実は、リュータもナチへメッセージを送ろうと思っていた。


しかしなんて言葉を使えばいいのか、なんて言えばナチを傷つけずに済むのか

延々考えるもそんな ”魔法の言葉 ”などあるはずなく、一向にメッセージは

作成出来ずにただただ呆けたように佇んでいたのだった。

 

 

そこへ、ナチから来たメッセージ。


テーブルに上半身を突っ伏して再度大きく溜息をついた。

リュータのおでこにテーブルのひんやり冷たい感触が伝わる。そして、おでこ

を数センチ離すと、気合を注入するかのようにゴツンと硬いそこへぶつけた。

 

 

そして起き上がり、返信を打ちはじめた。

 

 

  

  ‘また5人で遊ぼうな!

   ナチ、ありがとな。’

 

  

 

ナチはその返信メールを読むと、首を反ってどこまでも続く広い空を仰いだ。

ゆっくり深呼吸して目をつぶった瞬間、また一筋涙が流れた。

  

  

 

  

 

そんなナチの事など何も知らずに、リコはイラスト案を考えていた。


コースケの手伝いをするようになって以来、リコはいつも何処でも何か案が思い

浮かぶとメモを取っていた。

家では夕飯を終えるとすぐ自室へ戻り、スケッチブックと睨めっこしていた。


母ハルコや弟リクは、家族で過ごす時間が少なくなった事を少し寂しく思っては

いたけれど、リコが何かに打ち込んで一生懸命になっている姿を応援していた。

 

 

そしてもう一つ大きな進歩は、リコがちょくちょくコースケにメールをするよう

になっていた事だった。


ちょっとでも案が浮かぶと、”こんなのどうでしょう ”と、コースケに報告し

ていた。コースケも同じように、”コレどう思う? ”とリコのケータイを震わ

せる。互い、次のイラスト描きをする日まで待てず、今すぐに話したくて伝えた

くて興奮し心を弾ませながらケータイに向かっていた

 

 

同じ目標に向かって、リコとコースケの距離は急速に縮まっていた。

 

 

 

 

園でのイラスト描きを翌日に控えた土曜夜、リコは急にあることを思い付いた。

  

 

 

 (お弁当作っていこうかな・・・


  いっつもコンビニのご飯じゃナンだし・・・。)

  

 

 

そう思い立った途端、リコはバタバタと騒々しく階段を駆け下り、キッチンに

飛び込むと冷蔵庫を開けた。

しかし大抵は今夜のおかずに使ってしまって、お弁当を作れるほど豊富に食材

が入っていない。

 

 

 

 『お母さ~ん!! 食材ってこれしか無いのぉ~?』

 

 

 

冷蔵庫を開いたままリビングの母ハルコへ叫ぶと、”見ての通りよ ”と言わん

ばかりにソファーから顔だけ振り返ったハルコが肩をすくめる。

 

 

 

 『・・・スーパー行って来るっ!』

 

 

 

そう言うと、リコは財布だけ引っ掴みリビングを抜け廊下へと飛び出して行く。


玄関の三和土でスニーカーに爪先を押し入れているその背中に、ハルコは慌てて

出て来て呼び止めた。

 

 

 

 『ちょっと、リコ!!


  もう遅いんだから、やめなさいっ!!!』

 

 

 

しかし、リコはハルコが止めるのも聞かず、軽くいなすように片手を上げ玄関

の扉を押し開けて暗い夜道に駆け出して行ってしまった。

 

 

なんだか無性に込み上げる胸騒ぎに、ハルコは上着を羽織って後を追いかけた。

 

 

 


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