表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/227

■第45話 報告会


 

 

リコとナチ。

息継ぎも忘れて自分の話を興奮気味にしゃべり出した、ある日の放課後。

 

 

二人共、早く話したくて話したくて仕方がなかった。


リコはコースケとの園でのイラスト話、ナチはリュータと仲直り出来た話

をまくし立てるようにして一気にしゃべり、相手の話に大袈裟なくらいに

相槌を打ち感嘆の声を上げ、また自分の話に戻る・・・という繰り返しを

延々2時間は続けていた。

 

 

 

 『ナチ・・・


  良かったねっ! ちゃんと誤解も解けて、仲直り出来て。』

 

 

 

リコはあの日、ナチが ”あおい ”を ”彼女 ”だと勘違いしている事に

気付き、急いでアパートまでリュータを呼びに戻って事情を説明し、境内

まで行かせたのだ。

 

 

 

 『ねぇ、リコ知ってたぁ~?


  ”あおい ”って蒼井優の ”あおい ”なんだって!!


  普通、蒼井優のファンだったら ”ゆう ”って付けると思わないっ?!

 

 

  ・・・ほんっっと、意味わかんないんだけどぉ~・・・。』

 

 

 

そう言うナチは、デレデレと頬を緩めとても幸せそうな表情をしていた。


もうひと気ない教室にふたり、一つの机に向かい合って座り片肘をついて

敢えて憎まれ口を叩くナチの口角は三日月のようにご機嫌に上がっている。

  

 

 

 『でもでもっ!


  リコだって、すっごい前進じゃないっ?!


  毎週日曜に園でイラスト描きする事になったんでしょ?

 

 

 ・・・ふ た り っ き り で。』

  

  

  

そうナチにネチっこくからかわれ、リコも照れまくりながらも嬉しすぎて

信じられなくて、純粋に舞い上がっていた。机の上で絡めた細い指先が歯

がゆくモジモジと蠢く。


実際、マリの件はなにも解決していないし、解決する気配すら皆無だった

けれど今はその事は考えないようにしていた。

ただ、コースケの手助けが出来る今を大切にしようと思っていたのだ。

 

 

すると、急にナチがちょっと口を尖らせてぶつくさと呟きはじめた。


その顔は眉根をひそめ、机の下でハイソックスの脚をバタバタと不満気に

バタつかせて。

 

 

 

 『あの日以来、


  リュータさんから、電話もラインも無いんだけど・・・

 

  

  もしかして・・・ ”あの事 ”


  なんとも思ってないんじゃないかなぁ・・・。』

 

 

 

女の子には次から次へと悩みが付きまとうらしい。


先程まであんなに頬を桜色に染めて跳び上がりそうに上機嫌に息巻いて

いた姿は、今はしょんぼりと肩を落とし夏の終わりのひまわりのように

首を垂れて小さく小さく萎んでいる。

 

  

リコがクスリと笑って、うな垂れるナチのセーラー服の上腕を人差し指

でツンツンと突く。

 

 

 

 『ナ チ か ら 連絡したらいーじゃんっ??』

 

 

 

するとナチが真っ赤になって、ブンブン首を横に振った。

ふんわりカールがかった栗色の髪の毛が、頭の動きに併せてふわふわと

揺れ赤く染まる頬に左右交互に掛かる。

  

 

 

 『無理ーーぃ!! 無理無理っ!!!


  ・・・だって・・・ 


  ・・・なんて、話せば・・・ いいの、よぉ・・・。』

 

 

 

最初勢いがあった言葉は次第に自信なげにデクレッシェンドして、語尾

はもう聞き取れないくらい小さく心細く消える。 

 

 

 

 『今まで通りでいいじゃないっ!』

 

  

 『えーーー、今まで通りって・・・


  ・・・私、どんなんだった・・・??』

 

 

 

そんな遣り取りを繰り返し、リコとナチは笑ったり沈んだり怒ったりし

ながら日が暮れるまで放課後の教室にいた。

 

  

  

 

 

ナチと別れ、リコは夕方の商店街にいた。


今度の日曜もコースケとイラスト描きをする予定だったので、少し画材

でも見ておこうと寄ったのだった。

 

 

丁度買い物客が多く一番活気ある時間帯で、あちこちから店主の掛け声

や惣菜の香ばしいにおいが流れ、自然にリコも微笑んでしまう。

 

 

リコは画材屋に入ると、絵の具が置いてあるコーナーで立ち止まった。


先日はイメージ図を鉛筆で描いたが、やはり色が付いた方が想像し易い。

絵具にしようか色鉛筆にしようか悩みながらそれらを手に取って見てい

た時リコを呼ぶような声がした。

  

 

 

 『あっ!! お姉ちゃんっ!!!』

 

 

 

声が聴こえた方へ目を遣ると、ガラス越しにタクヤがいた。嬉しそうに

大きく片手を振ってニコニコ笑っている。そして、その他方の手を繋ぎ

隣に立つ女性が、やわらかく微笑んでいた。

 

 

 

 (マリさんだ・・・。)

 

 

 

あの日、遠くグラウンドに佇んでいたマリがいた。

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ