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■第38話 なんだ、今の?


 

  

 『あおい・・・ あおい・・・ あおい・・・。』

 

  

ナチはファミレスを飛び出し、足のもつれもそのままに通りを全速力で走った。


息を切らして走りながらも、無意識のうちにその口からは幾度も幾度もその名前

が零れる。

  

  

 

 (実は一人暮らしじゃない、って・・・


  あおい、って・・・・・・・・・・・・。)

 

 

 

大きくアスファルトを蹴り上げていた脚は次第に歩幅を狭め、そして立ち止まる。

ガックリとうな垂れると心細く内股になったスニーカーの爪先が目に入った。

 

  

 

 (まさか・・・ カノジョと同棲・・・?

 

 

  ってゆうか、カノジョがいるなんて話、私、聞いてないしっ!!  


  なんで先にゆってくんないのよっ!! 酷いじゃんっ!!

 

 

  何よ、じゃぁ何でリコを連れ出して、元気づけたりすんのっ?!


  妹みたいに思ってるからっ?!

 

 

  じゃぁ・・・ 何で、私に・・・ あんな風に電話してきたりすんのよ


  ・・・それも ・・・・全部。 妹な、だけ・・・?

 

 

  ただの、妹みたいな年下の女の子って、だけ・・・・・・?)

 

 

 

あまりのショックで急激に落ち込み、次第に頭に血が上り開き直って猛々しく怒り

そしてまたこの世の終わりの様にどんよりと沈む。


夏の終わりのひまわりのようにナチの頭は垂れ、クルクルと目まぐるしく変化する

自分の感情に対応しきれない心臓の鼓動が、頭の先から爪先まで全身で激しく乱れ

打ち付けた。

  

 

  

すると、ケータイが鳴った。


今は呑気におしゃべりなんかしたい気分ではないのに、こんなタイミングで電話を

してきた空気の読めない相手は誰なのかと、訝しげに画面を睨む。

  

  

 

  ◆着信:リュータさん

  

 

 

ナチはぎょっとして眉間にシワを寄せ、暫く画面を見つめていた。

電話に出ようか出まいか悩み、結局、不機嫌な感じを隠しもせず電話に出る。

 

  

  

 『ぁ、ナチ? もうメシ食ったぁ~?


  俺、腹へっちゃっ・・・・・・・・・。』

 

  

 『そんなの、あおいさんと食べればいいでしょっ!!!』

 

  

 

 プチ。 ツーツーツー・・・

 

  

  

ナチは、ケータイ越しのリュータのお気楽な一言に不機嫌を通り越して怒り心頭。

大声で怒鳴ってケータイを切ると、乱暴にカバンの奥底に押し込める。

 

 

 

  (なんなのよ、なんなのよ、なんなのよ・・・。)

 

 

 

泣きべそをかきながら、再び大股でがむしゃらに走って家へ帰った。

 

 

 

その時リュータは、ナチにぞんざいに切られて延々と通話終了の機械音を発する

ケータイをただただポカンと見つめていた。

 

 

 

 『・・・なんだ、今の?

 

 

  あおいと食べろ、って・・・・


  まぁ、家で食えばそうなるけど・・・。』

 

  

全く以って訳が分からないリュータだった。

 

 

 



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