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■第25話 交差する想い


 

 

リカコは長い黒髪を片肩にまとめて垂らし、頬杖をつきながら数年前の出来事を

ぼんやりと思い出していた。

 

 

それは高校1年の春。


高校に入学して新しいクラスにまだ馴染めずにいたリカコに、最初に話し掛けて

来たのは隣の席のリュータだった。

 

  

 

 『あのさ。


  ティッシュ持ってねぇ? ハナ出ちゃった。』

 

 

 

今、思い出しても笑える。


本当に少し鼻の下が鼻水でテカっていて、それを隠しもせずに恥ずかしげもなく

リカコにティッシュをねだったリュータ。

 

 

リカコとリュータの遣り取りが聞こえたらしく、プっと吹き出して笑ったのが

その後ろの席のコースケだった。

何食わぬ顔のリュータ、呆れ顔のリカコ、困った顔で笑うコースケ。


そこから3人は友達になっていったのだった。

 

 

サバサバして男っぽく、女子特有の ”いつでもどこでも一緒 ”的考えが全く

受け付けないリカコには、女々しい女友達といるよりリュータ達といる方が気

が楽だった。


いつも、3人でいた。


 

 

それは、ある日の帰り道のこと。


リュータが数学の居残り補習を受ける為、リカコとコースケ二人で帰る事にな

った。いつも通りに気の抜けたくだらない話をして歩いていた二人だったが、

急にコースケが真顔でポツリと呟いた。

 

  

 

 『・・・なんか、色々。 大丈夫なの?』

 

 

 

コースケは気が付いていたのだ。


女子とつるまないリカコを、やっかみで陰で悪く言っている連中がいた事を。

コースケとリュータは人懐こいタイプだから、結構女子からは人気があった。

一見外から見たらリカコが二人を独占してる様に見えなくもないその関係に

それをひがむ女子生徒からの根も葉もない心無い中傷があったのだった。

 

 

絶句するリカコ。


サバサバしてるように見えて、そこはやっぱり女の子だ。陰でこそこそ悪口を

言われ傷付かないはずは無い。本音を話せる女友達が中々出来ないことを実は

内心気にしていた。

 

 

しかし、リカコは他人に弱みを見せられないタイプだった。


”強いリカコ ” ”泣かないリカコ ” ”冷静なリカコ ”

そんなイメージが凝り固まってしまった今、弱音は吐きたくなかった。


否、吐けなかった。

 

  

 

 『あー・・・ なんかグチグチ言ってる子たちでしょ?


  んなの、無視無視! 放っとけばいーんだって。』

 

 

 

何も気にしてない風に嘲笑って言い放つ。


呆れたように片頬を歪め、手をひらひらと揺らして、動揺を悟られないよう

大股で進みローファーの踵が擦る音を豪快にアスファルトに響かせて。

 

 

すると、

  

 

 

 『まぁ。 あんま・・・肩に力いれすぎんな。


  ・・・リカコは、すーぅぐ頑張るからな~ぁ。』 

 

 

 

コースケのさり気ない一言が、リカコの胸にダイレクトに突き刺さる。


言った本人はまるで天気の話でもしたみたいに、その言葉の重みに気付いて

などいない。相変わらずの、困ったような情けない笑い顔を向けて。

 

 

うっすら潤む瞳に気付かれぬよう、鼻で嗤ってダルそうにぐんと腕を上げて

伸びをする。キリっとしていはずの目元がまるで欠伸で濡れたように見えて

いるかどうか、リカコは心配でならなかった。

 

 

 

 

 

その日から、リカコは誰にも言えない想いをずっと胸に秘め続けていた。

 

 

一番近くで見てきたから、コースケの事はよく分かる。


他の子が想いを打ち明けても、決してそれを受け止める事はないという事も。

持ち前の人の良さで誰にでも優しくしてしまうくせに、絶対に中途半端なこと

はしないという事も。

 

 

リカコは誰にも、一度も、自分のコースケへの想いを話した事はなかった。

話すつもりなかった。それは、実らないって痛いほど分かってるから。

  

 

だからこそ、リカコは ”あの人 ”を決して許せずにいた。

 

 

 


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