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182/227

■第182話 何故・なぜ・ナゼ


 

 

 『ねぇ、アカリ~。


  最近、リュータさんなんかあった??』

 

 

アカリのバイト先のファーストフード店に、ナチの姿があった。


レジのすぐ傍のカウンターを陣取り、固定され少し窮屈なカウンターチェ

アに腰掛けて、一応バイト中のアカリなど気にせず一方的に話しかける。

 

 

 

 『なんかってナニ?


  別に・・・

 

 

  ・・・あっ! 内定出たみたいだけどね。』

 

 

 

そのアカリの一言に、ナチは一瞬固まりその刹那みるみる顔が強張ってい

った。 『・・・私、聞いてないけど。』

 

 

そのナチの顔色の急変を目にアカリが慌てまくった。


当然、とっくの昔いの一番にリュータはナチに報告をしているものだと思

っていたのだから。

 

 

 

 『ほ、ほら!!


  ぁのぉ・・・ もしかしたら・・・

 

 

  アンタをビックリさせようとして、


  今は・・・ 内緒にしてるの、かも、よ・・・??』

 

 

 

やたら嫌な汗が噴き出るアカリの必死のフォローもナチの耳には届かない。

眉間のシワが深く深くなってゆく、見るからに不機嫌な顔のナチ。

 

 

アカリはコーヒーサーバー片手に、レジカウンターからナチの席へ出て来

てあの手この手で機嫌をとるも、全て虚しい努力だった。


ナチはぶすっと膨れて全く口を利かない。その目は納得いかないそれに潤

んで、下唇は尖らせて、まあるい頬は不機嫌そうに赤く染まって。

 

  

すると、そこへ

 

 

 

 『アカリさん!!


  サボってちゃダメで・・・ ぁああ?!』

 

 

 

客席カウンターに立ち尽くし、担当のレジカウンターから勝手に姿を消し

たアカリに注意をしに来たヒナタが、ナチを見て目を丸くする。

 

 

以前、ヒナタに散々難癖をつけた変なクレーム客がアカリと知合いだった

のだ。事態が把握出来ずにアカリとナチの顔をせわしなく交互に見るヒナ

タ。しかし、なにか重い空気を敏感に察し、口を挟むのをやめておいた。

 

 

そして、アカリにこっそり耳打ちした。

 

 

 

 『このお客様、コーヒー注文してないですから、


  いくらサーバー持ってたって不自然ですよ・・・。』

  

  

  

 

 

  

 

ナチはモヤモヤした思いをどうする事も出来ずにいた。


リュータに確かめなければなにをどうしても気が済まない。

でもその前に『何故?』という二文字が気が狂いそうなほどに頭を巡る。

 

 

 

  何故、教えてくれないんだろう・・・


  何故、隠すんだろう・・・


  何故・・・何故・・・何故・・・

  

 

 

居てもたってもいられなくて、ナチはカバンからケータイを取り出しその

名前を選択してタップする。

 

 

 

 『・・・今、どこ? 家?』

 

 

 

ナチのやけに冷静な一言に、電話向こうのリュータがあからさまに慌てて

いる気配を感じる。


その瞬間、増々ナチの心はドス黒く重いもので曇ってゆく。

何故・・・どうして・・・?

 

 

『話があるの。今から行くから。』 リュータの返事など聞かずに一方的

に電話を切ったナチ。


アカリが言ったように、ただ単にサプライズで驚かせようとしていてくれ

たらどんなにいいか考えていた。

 

 

しかし、直感でそうではない事は分かっていた。

 

 

 

 (なにを隠してるのよ・・・。)

 

 

 

頭の中を占めるのは、最悪な状況のことばかりだった。


そんな事考えたくもないのに、リュータを誰より信じてるのに、心の中に

垂れ込め広がったモヤモヤは悪い方へ悪い方へばかりナチをいざなう。

 

 

トボトボと俯いて歩く、リュータの部屋への道程。


胸に渦巻くどうしようもない不安に、途中足が止まる。立ち止まって足元

を見つめる目は、これから知るであろう真実に不安気にゆらゆらと揺れて。

それは怒りよりも、ずっとずっと悲しみと不安の方が大きかった。

 

  

  

  ピンポーン・・・

 

 

 

震える指先でドアチャイムを押すと、少し躊躇いがちに玄関ドアが開いた。

 

 

 



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