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■第14話 オモイビト


 

 

リュータとリカコは、ナチを学祭で使っていない教室がある校舎へ連れて

行った。


”関係者以外立ち入り禁止 ”の貼り紙があるその先は、学祭の喧騒が

嘘のように静まり返り、なんだか空気がピンと張り詰めたように感じる。

 

 

無言で先をゆく二人の背中を見つめながら、ナチはこれからどんな話を

聞かされるのか怖い反面どこかドキドキする。

 

 

 

 (コースケさんにどんな秘密があるってゆうの・・・?

 

 

  ま、まさか・・・


  ・・・ゲ ・・・ゲイ、とか?)

 

 

 

すると、誰もいない事を確認したとある一室の扉を静かに開け、中に促した

リュータが振り返って呟いた。 『あの子、コースケが好きなんだろ?』


『まぁ。誰が見たって分かるけどね。』 と、リカコも続く。

 

 

どこか諦めたような沈んだ二人の声色に、ナチはどんな ”事情 ”があるの

か急かすように話をせがんだ。

リュータが小さく息を吐き机のヘリに腰掛けて背を丸めると、ポツリポツリ

と話しはじめた。

 

 

コースケは ”ある人 ”の事をもうずっと長いこと、想い続けていること。

その人以外へはコースケの気持ちが動くことなどないということ。

今までもコースケへ想いを寄せる子を見てきたが、皆同様に傷ついていった

こと。

 

 

 

 『コースケは ”残酷 ”だからね・・・


  それに、み~ぃんな勘違いして惹かれて


  ・・・結局は、みんな傷つくのよね・・・。』

 

 

 

リカコが言う。浅く腰掛けたイスに背をあずけ、首を反って教室の天井を

ぼんやり見つめて。ユラユラと揺らすパステルカラーのポインテッドトゥ

パンプスの爪先が、窓から差し込んだ光に反射しなんだかキレイで切ない。

 

 

ナチには言われたその意味がよく分からなかった。


あんな優しそうなコースケの、どこが ”残酷 ”なのか。

あからさまに理解出来ていないしかめっ面を向ける。

 

 

するとリカコがそんな様子を横目でチラリと見て、寂しげに笑った。

 

 

 

 『 ”凶器 ”だから、ある意味。 あの無自覚な優しさはね・・・


  根っから優しいのよ、コースケは。 みーんなに、優しいの。

  

 

  ・・・嫌な言い方するとね? 

 

 

  ”子供 ”にも ”年寄り ”にも。 ”犬 ”にも・・・。』

 

 

 

 (・・・リコだけじゃなく、誰にでも、ってこと・・・?)

 

 

 

ナチは、瞬時にリコの顔を思い出していた。


頭をチョップされて、真っ赤になっているリコを。

コースケの優しい笑顔に、嬉しそうに俯くリコを。

 

 

 

 『で、でも・・・


  その、ずっと想ってる人とは別に付き合ってないんでしょ?

 

 

  ・・・なら。 いつかは、コースケさんだって・・・。』

 

 

 

ナチは眉根をひそめ、凄い剣幕で食い下がる。

リカコに掴みかかる勢いでまるで乞うように、まるで祈るように。

 

 

 

 (あんなリコ見たのはじめてなんだもん・・・

 

 

  だから。 どうしても、どうしても・・・


  ずっとあんな風に笑っててほしいよ・・・。)

 


  

 

 『・・・とにかく。


  カシューナッチから、それとなく匂わしとけ。

 

 

  深みにハマってからじゃ、ツラいのあの子だぞ。』

 

 

 

そう言ってリュータはナチの肩をその大きな手でトンとひとつ叩いた。

 

 

見た目は正直少し軽そうなのに意外とイイ人だななんて、ナチはチラっと

横目でのぞき見て思った。リカコも、そのキレイな外見から一見怖い人か

と思ったけれどサバサバしていて男っぽくて凄くイイ人で。

 

 

ナチはコースケの件は別として、この二人と知り合えた事を心から嬉しく

思っていた。

 

 

 

そんな事など、全く知るはずないリコだった・・・

 

 



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