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111/227

■第111話 不器用な奴


 

 

 『まぁ・・・


  お前の気持ちは、分からんくもないけどなぁ・・・。』

 

 

 

リュータは、タケが睨むその先のコースケに目を遣りながら溜息の様に呟く。

 

 

曖昧なコースケの態度がいつまでもリコを苦しめているのは、周りにいる人

間の方が辛いくらいだった。


最近のコースケの態度で、リコのことを少なからず気にしているのは分かる。

しかしマリ絡みで一歩進めずにいるそのもどかしさは、一番近くで見ている

リュータが最も歯がゆく感じる部分だった。

 

 

 

 『でもな、


  リコは、ちゃんとコースケに堂々と正面からぶつかってってんだぞ。』

 

 

 

その一言に、タケが驚いてガバっと顔を上げリュータを振り返った。

信じられないとばかりに目を見張り、せわしなく瞬きを繰り返す。 

 

 

 

 『あのリコが?、って感じだろぉ~?


  俺もすっげービックリしたんだけど・・・

 

 

  リコはちゃんと自分の気持ちに嘘つかずに頑張ったんだよ。


  そのこと誰にもナチにも言わずに、一人で抱え込んでさ・・・

 

 

  まぁ確かに、答えは ”No ”だったけど。


  それでもリコがコースケの傍にいたいって思ってんだったら、


  それを引き離す権利は俺らには無いだろ・・・

 

 

  あいつはさぁ・・・


  周りが思ってるよりも、ずっと、強いんだよなぁ・・・。』

 

 

 

リュータは目を細めて微笑みながら、コースケと笑い合うリコを見つめた。


嬉しそうにはにかむその笑顔を、なんとか本物の幸せなそれに出来ないか、

リュータの胸はざわざわと歯がゆく軋む。

 

 

 

 『アイツはそんな奴なんだから、


  真正面から戦わない人間を、一番嫌がるんじゃねぇ・・・?』

 

 

 

タケが苦い顔で俯いた。


今まで18年間信じてきた生き方を諭され、なにが正しいのか間違いなのかも

分からない。もうどうしていいか分からなくて、途方に暮れる迷子ような泣き

そうな顔をしていた。

 

  

 

 『なんで、アイツはリコを受け入れないんだよ・・・?

 

 

  リコのこと・・・ 


  ・・・別に、好きじゃない訳じゃないんだろ・・・?』

 

 

 

タケは込み上げるやり場のない想いに、喉がつかえて巧く呼吸が出来ない。

辛そうな苦しそうな顔で、震える声はか細くこぼれる。

  

 

 

 『いっその事、ふたりが付き合ってるんなら


  僕だって、それを壊そうなんて思わない・・・

 

 

  でも、アイツは思わせぶりな態度ばっかで、


  結局リコに ”No ”って言ったんだろ?

 

 

  なんでだよ・・・ 


  なんでリコにそんな態度とって平気でいるんだよ・・・。』

 

 

 

すると、リュータは可笑しそうにケラケラ笑いながらタケを見た。

笑っているくせにそれは諦めているような色合いが濃い、微妙なそれで。

 

  

 

 『お前と一緒なんだよ・・・

 

 

  コースケにはさ、 


  子供ん時から、もう長いこと想い続ける相手がいてさ・・・


  その人のこと守ろうと、自分のことなんかそっちのけで。

 

 

  お前よりもずっと状況は複雑で、


  望みなんか、全っ然薄いのに・・・

 

 

  頑固な奴ばっかだよ、ほんと・・・


  ・・・どいつもこいつも、不器用な奴ばっか・・・。』

 

  

 

タケは再び心許なく抱えた膝に顔をうずめた。


リコはそんな事情を知っての上で、それでも尚コースケを想い続けているの

だろう。何故こんなにもベクトルは違う方向を向いてしまうのか、何故想う

相手は同じように自分のことを見てはくれないのか、咄嗟に頭を抱えると大

きな大きな溜息がこぼれる。

 

 

その時。 

  

 

 

 

  ガラガラガラガラ・・・

 

 

 

 

突然、何かを引き摺る乾いた音がして、遊戯室にいたみんなが一斉にその音

がする方向を見眇める。

 

 

すると、

  

 

 

 『なんなのよ~、まったく・・・


  ・・・ケータイの充電切れるってどうゆう事ぉ~??』

 

 

 

 

一同、唖然・・・

 

  

  

 『リカコっ!!!』


 『リカコさんっ!!!』


 『お前っ・・・』


 『リカコさんだっ!!!』

 

  

  

そこには、大きなスーツケースを気怠そうに引き摺るリカコが立っていた。

 

  

 

 『なに?


  保育園に全員集合して、お遊戯会かなんかすんの??』

 

  

 

サングラスをはずして長い黒髪をかき上げ、ダルそうに言うその人は片脚に

重心をかけて立ち、顎をツンと上げて目を眇めた。

 

 

 

 『ってゆーか。


  ・・・アンタ達、”おかえり ”は??』

 

 

 



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