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■第11話 リコとナチの本心


 

 

『えー、まぁ、そうゆう訳で。


 当たり前だけど、コレっぽっちもナンっとも思われてないし、


 ”恋する乙女ごっこ ”は終わりにしたからっ!

 

 

 ・・・ってゆうか、別に私も最初からそうゆうんじゃないし・・・

 

 

 でも!でもっ!! ナチも一緒に学祭には行こうよ!! 


 ・・・ねっ?』

 

 

 

努めて明るく、気にしてないフリをしてナチに報告したリコ。

必死に明るく振舞えば振舞う程なんだか痛々しい感じになっているのを、

リコ本人は気付いていない。


ナチはただ黙ってそんなリコの話を聞いていた。

 

 

 

 『・・・リコがいいなら、いいよ。 学祭一緒に行こう!』

 

 

 

笑顔で伝えたナチ。


机の下で組んだ指先をカリカリと掻き毟り、どうしても歯がゆさが滲む。

リコに言いたいことは山ほどあったが、それは敢えてぐっと飲み込んだ。

 

 

 

 ( ”彼氏と一緒でもいいよ ”って言われただけじゃない!


   そんな一言ぐらいなんだっていうの?


   なに、そんなしょーもないこと気にしてんの??)

 

 

 

ナチは黙ってリコの背中を見つめた。

真一文字に噤んだ口の端が苛立ちにきゅっと強張る。


そして、密かに決意していた。

 

 

 

 (諦めたりなんかするもんですか! 私がなんとかしてみせる!)

 

 

 

そんなナチの気持ちも知らず、リコはリコでコースケの事を考えていた。

考えないよう考えないようにとすればする程、頭の中を占領するあの笑顔。

 

 

本当に全て無かった事にするには、もう接点を持たない事が一番で。


メールに返信しなければいいだけの事。きっとそうすればコースケもリコ

の気が変わったと察し、二度と連絡してこないだろう。

 

 

正直なところ ”絵本を貸す ”なんていうのは、もう今となっては口実だ。

逢わなければ自然にコースケのことは考えなくなる。あの本屋を通りかかる

時にほんの少しの懐かしい胸の痛みに微笑むくらいになるはずなのだ。

 

 

それでも、本音を言えば。

 

 

 

  やっぱり、もう一度逢いたい。


  逢ったら、もっと。 今よりも、きっと・・・

 

 

  でも、もう一度。 あの、困ったような情けない笑顔を見たい・・・。

 

 

 

リコもナチも互いに本心を隠して、なにも気にしていないなんでもないフリ

をしていた。

 

 

 

 

 

約束を明日に控えた、金曜の夜。


リコは自室のベットの上に何枚も何枚も洋服を出しては胸元に当て、鏡に映

して合わせていた。

眉根をひそめて小首を傾げ、納得いかない顔で次の洋服を掴んで合わせる。

”誰に見せる訳でもないけど ”という言い訳は、自分に言って必死に自分

で誤魔化した。

 

 

すると、『姉ちゃーん?』 廊下から弟リクの声がした。

 

 

『なに?』 少しだけ開けた部屋のドアから頭だけ出して、用件を訊く。


ハサミを借りに来たリクが、ドアの隙間からチラリ見えた散乱する洋服に

目ざとく口を挟んだ。

 

 

 

 『やっぱ、スカートだよね。 


  なんだかんだ言っても、可愛い系がいいよね。』

 

 

 

”なんだ ”も ”かんだ ”も知りもしない小学5年生の頭を思いっきり

グーで殴って、ハサミだけ押し付けるとリクを部屋から追い出した。

 

 

そして、ベッドの上のそれに目を落とす。

 

 

 

 (このスカートにしよう・・・)

 

 

 

小さな花柄の淡い水色のスカートを目の高さに上げ、呟いた。

 

 

 


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