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第15話「教会本部へ」

三日後、王家直属の調査団が編成された。

先頭に立つのは、国王直属の騎士団長カイルと、その配下の精鋭二十名。そこに私、リュカ、フィーネ、そしてザガンが同行する形となった。

「本当に、俺まで連れて行くつもりか」

ザガンが、珍しく渋い顔をした。

「教皇シリウスが出てくるなら、あなたの力が必要になるかもしれません」

「魔王が調査団に同行していると知れば、教会側は"それみたことか"と騒ぎ立てるだろうな」

「もう、隠していても仕方ありません。それに――」

私は、少しだけ微笑んだ。

「あなたが隣にいてくれると、心強いので」

ザガンが、一瞬言葉に詰まった。

「……そういうことは、不意打ちで言うものじゃない」

小さく咳払いをするザガンに、リュカとフィーネが顔を見合わせて笑いをこらえていた。



教会本部は、王都から馬車で半日ほどの距離にある聖都カテドラルにあった。壮麗な大聖堂を中心に、いくつもの尖塔が空を突くようにそびえている。

門の前には、既に多数の聖職者が待ち構えていた。中心に立つのは、あの枢機卿ヴァルドだった。

「これはこれは。王家の調査団の皆様、ようこそ聖都へ」

ヴァルドの声には、以前のような余裕は感じられなかった。むしろ、どこか追い詰められたような硬さがある。

「枢機卿ヴァルド。国王陛下の命により、教会本部への正式な調査を行う」

騎士団長カイルが、堂々と告げた。

「調査、ですか。……先日の"事件"の件でしょうか」

「しらばっくれるつもりか」

私が一歩前に出た。

「王都広場での襲撃は、教会の"影"部隊によるものだと、既に明らかになっています」

ヴァルドの目に、憎悪にも似た色が浮かんだ。

「監視者殿……いや、シェアラ殿。よくもまあ、これだけの騒ぎを引き起こしてくれたものだ」

「騒ぎを引き起こしたのは、そちらでは?」

「聖女候補を七人も犠牲にしてきたことも、王都広場で証言者を武力で消そうとしたことも」

「……」

ヴァルドは、しばらく沈黙した後、深く息を吐いた。

「入られよ。全て、包み隠さずお見せしましょう」

意外にも、あっさりとした返答だった。リュカが警戒するように私に目配せする。

「何か、企んでいるんじゃ」

「かもしれません。でも、ここまで来て引き返すわけにはいきません」

調査団は、教会本部の奥深くへと足を踏み入れた。荘厳な回廊を抜け、案内されたのは、地下深くにある一室だった。

「ここが……」

「聖女候補の"育成"に使われていた、秘密の儀式場です」

ヴァルドが、重々しく扉を開けた。

そこには、幾つもの魔法陣が刻まれた石床、そして壁一面に並べられた、無数の記録書があった。

「これが、七人――いや、それ以上の記録です」

「それ以上……?」

私は、記録書の一つを手に取った。書かれていた名前の数は、明らかに七人を超えていた。

「十二人……?」

「はい。過去五年ではなく、過去二十年で数えれば、この数になります」

ヴァルドの声が、初めて震えを帯びた。

「私は、この儀式に関わってきた者の一人です。……いや、正確には、この儀式を"止められなかった"者の一人です」

「どういう、ことですか」

ヴァルドは、私を真っ直ぐ見つめた。

「この儀式の真の主導者は、私ではありません。教皇シリウス、その人です」

謁見の間に、重い沈黙が落ちた。

「教皇が……自ら?」

「はい。そして――」

ヴァルドの声が、さらに低くなった。

「教皇シリウスは、ただの人間ではありません。あの方は、二百年前から存在する、"何か"です」

その言葉に、ザガンの表情が、初めて険しいものに変わった。

「二百年、だと……まさか」

「ご存じですか、魔王殿」

「……嫌な予感がする」

儀式場の奥、重い扉の向こうから、静かな足音が近づいてくる気配がした。

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