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追放された弱者ジョブ、実は”詰み”を作る側の職業でした  作者: 一ノ瀬


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12/20

第12話「王都広場、決戦前夜」

証言の日の前夜、私は一人、王城の露台に立っていた。

見下ろす王都は、静かな夜の中にある。明日、この街の広場で、これまでの全てに決着をつける。

「眠れないのか」

背後から、ザガンの声がした。

「少し、考え事をしていました」

「監視者らしくない台詞だな。任務中は、常に冷静沈着だったはずだが」

「今は、任務じゃありませんから」

私は、夜空を見上げた。

「三年間、人間として生きてきました。演技のつもりだったのに、いつの間にか、本当に大切なものができていた」

「フィーネやリュカのことか」

「彼らだけじゃありません」

ザガンの方を、少しだけ見た。

「あなたのことも」

ザガンが、珍しく虚をつかれたような顔をした。

「……俺は魔王だぞ」

「知っています」

「人間を守るために戦う、というのは、本来お前の――いや、監視者の役割にはなかったはずだ」

「役割だから、じゃない。私が、そうしたいと思うから」

夜風が、二人の間を通り抜けていった。

「明日、教会は本気で潰しにくるでしょう」

「そうだろうな。二十人以上の"影"が動いている。おそらく、レオンを含めた精鋭部隊だ」

「勝算は」

「五分五分、といったところだ」ザガンは正直に言った。「お前の力は本物だが、多勢に無勢だ。それに、リュカやフィーネを守りながら戦うとなると、さらに分が悪くなる」

「それでも、やるしかありません」

「わかっている。だからこそ、俺も本気で動くつもりだ」

ザガンは、夜空を見上げながら続けた。

「明日、俺は結界に紛れて戦う。表立って"魔王が加勢した"とバレれば、教会の思う壺だからな。だが――お前が本当に危険な時は、その限りではない」

「ザガン様」

「なんだ」

「ありがとうございます」

ザガンは、少しだけ困ったような顔をした。

「礼を言われる筋合いはない。お前は、俺の……大切な部下だ」

一瞬の間があった。部下、という言葉の後に、何か別の言葉を飲み込んだような、そんな間だった。

「休め、シェアラ。明日は、長い一日になる」

ザガンが、静かに露台を後にした。




同じ頃、城内の別室では、リュカとフィーネが向き合っていた。

「明日、怖くないか」

リュカが尋ねると、フィーネは小さく首を振った。

「怖い。でも……もう逃げたくない」

「無理はするな。危なくなったら、俺が守る」

「リュカ」

フィーネが、リュカを見つめた。

「三年前、私があなたのことを利用して、セレスを陥れた時……あなたは、本当に何も知らなかったの?」

リュカは、しばらく沈黙した後、静かに答えた。

「薄々、感づいてはいた。でも、パーティの和を優先して、見て見ぬふりをした。……卑怯者だった」

「私も、同じくらい卑怯だった」

フィーネの目に、涙が浮かんだ。

「セレスに救われて、初めて気づいた。本当の強さって、力の強さじゃなくて……自分の過ちを認めて、変わろうとする勇気のことなんだって」

「フィーネ」

「明日、私、ちゃんと証言する。自分の弱さも、罪も、全部話す。それが――セレスへの、せめてもの償いだから」

リュカは、フィーネの手をそっと握った。

「一人じゃない。俺も、隣にいる」

窓の外、王都の夜空に、静かな月が浮かんでいた。それぞれの想いを抱えながら、四人は、来るべき決戦の日を待っていた。

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