第11話「静かなる布石」
公開証言まで、残り三日。
その間、王城の一室を借りて、私たちは対策を練っていた。
「教会側の動きは?」
私が尋ねると、国王の側近が地図を広げながら答えた。
「表向きは静かなものです。ですが……教会関係者の間で、不自然な人の動きが報告されています」
「不自然、とは」
「王都内の複数の教会施設に、普段見かけない聖職者が出入りしているとの目撃情報があります。数は、少なくとも二十人以上」
リュカが眉をひそめた。
「二十人……全員が、レオンのような"影"だとしたら」
「厄介なことになるな」
ザガンが地図を覗き込みながら呟いた。
「奴らの狙いは、おそらく二つに一つだ。証言の場そのものを潰すか――」
「もしくは?」
「証言者を、事前に消す」
その言葉に、フィーネの顔が強張った。
「私……ですか」
「一番可能性が高いのは、お前だな。証言の要になる人物を消してしまえば、教会側は"魔王軍の妄言"として、いくらでも言い逃れができる」
私は、フィーネの肩に手を置いた。
「大丈夫です。あなたは、絶対に守ります」
「セレス……」
「それに、証言者は一人じゃない。私も証言できます。監視者として、教会の内情を見てきましたから」
国王の側近が、慎重に付け加えた。
「陛下からも、王城の護衛を最大限つけるようにとのご指示です。ただ、王都広場は開けた場所です。完全に守り切るのは、正直申し上げて容易ではございません」
「そこは、俺が引き受けよう」
ザガンが言った。
「魔王が公然と姿を見せれば、それこそ教会の思う壺なのでは?」
リュカが疑問を口にする。
「表には出ない。だが、王都の結界に干渉して、俺の魔力を薄く広げておく。そうすれば、教会側の"影"が動いた瞬間、俺には気配が読める」
「監視、というわけですね」
「三年間、お前がやっていたことの真似事だ」
ザガンが、珍しく茶化すように言った。少しだけ、空気が和らぐ。
「フィーネ、リュカ」
私は、二人に向き直った。
「証言の場では、あなたたちにも役割があります」
「教えてくれ」
「リュカは、勇者としての立場を使って、民衆への説明役をお願いします。教会の"魔王と結託"という噂を、あなたの言葉で否定してほしい」
「わかった」
「フィーネは、証言そのものと――もう一つ」
「もう一つ?」
「あなたが元気な姿を見せることが、何よりの証拠になります。"聖女が呪詛によって傷つけられた"という事実そのものが、教会の主張を崩す最大の武器です」
フィーネは、しばらく黙った後、小さく頷いた。
「わかった。私、頑張る」
その夜、王都の裏路地で、静かな動きがあった。
黒いローブを纏った複数の人影が、大聖堂の地下から次々と現れ、王都の各所へと散っていく。彼らの中心にいたのは、脇腹に治りかけの傷を残したレオンだった。
「準備は整ったか」
「はい。指定された配置に、全員つかせております」
「よろしい。……監視者殿には、少々派手な"歓迎"を用意させてもらう」
レオンの唇に、冷たい笑みが浮かんだ。
「三日後、王都広場は――地獄に変わる」




