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王都へ

古代ダンジョンの最奥で得た情報を胸に、真人とアレックス、サラ、そしてリーの一行は、来た道を戻り、再び地底王国ゴルダインへと舞い戻った。街の喧騒は相変わらずで、彼らがダンジョンで過ごした時間が嘘のように感じられた。

「さて、魔導書を届ける『然るべき機関』、つまり王都を目指すわけだが……」真人は、ふと口を開いた。「正直なところ、この世界の地理が全く分からないんだ。」

真人は、これまで転移や、誰かの案内に従ってばかりで、この世界の全体像を把握していなかった。

サラは、呆れたような視線を向けたが、すぐに理解したように頷いた。

「そうだろうな。この世界は、大きく分けていくつかの大陸に分かれている。私たちが今いるのは、ヴァロリア大陸だ。地図で表すなら、ちょうど大きな三角形(▲)のような形をしている。」

彼女は、床に指で簡略な大陸の形を描いた。

「私たちは今、ヴァロリア大陸の北、この三角形のてっぺん、高山岳地帯にいる。アルカディア王国の王都は、この大陸の中央、西の端、つまり三角形の左斜線の真ん中あたりにある。」

リーが、サラの描いた地図を指差し、補足するように言った。

「ここから王都までは、休みなしで馬車を走らせても五日かかる。通常なら、七日から八日は見ておく必要があるな。」

「げっ、五日も!?長げぇな!」アレックスが思わず声を上げた。

真人は、五日、あるいは七~八日という期間に、旅の計画を頭の中で組み立て始めた。これまでの旅とは比べ物にならない長距離移動だった。

「そうか……。では、入念な準備が必要だな。」真人は、言いながら、既に食料や水の残量、馬の疲労などを頭の中で計算し始めていた。

サラもまた、真剣な表情で頷いた。

「ああ。特に、食料と魔物避けの薬は多めに必要になる。それに、王都までの道中には、危険な魔物も多く生息している。」

リーは、黙ってその話を聞いていたが、準備の必要性を理解しているのかは定かではなかった。彼女の表情からは、長旅への倦怠感よりも、むしろ次の「戦い」への期待が浮かんでいた。

一行は、ゴルダインの街で数日間を過ごし、王都への長旅に備えた。真人は、王都での情報収集や魔導書の提出に備え、この世界の文化や政治体制についての知識も可能な限りゴルダインの図書館へ赴き、収集した。アレックスは、再び街の探索に繰り出し、物資の調達に貢献した。サラは、冷静に必要なものを見極め、的確な指示を出した。リーは、その間もダンジョンの魔物を狩り続け、強さに磨きをかけていた。

全ての準備を終え、一行は再び馬車に乗り込んだ。目指すは、アルカディア王都だ。サラが手綱を握り、真人はその隣で地図を確認しながら、ときおり周囲の魔素の濃度を【鑑定】で測っていた。アレックスは、今回も馬車が動き出すとすぐに眠りについた。リーは、馬車の荷台で腕を組み、静かに景色を眺めていた。

旅は順調に進んでいるかに見えた。雪山を抜け、広大な平原へと出ると、気温も徐々に上がっていった。数日が経過し、王都が近づいてきていた、六日目の昼頃だった。

真人の【鑑定】が、突如として激しい反応を示した。

『対象:空間/名称:真紅の森、状態:魔素濃度:極高(瘴気レベル)』

『危険度:極高』

『警告:精神汚染の可能性あり』

『警告:生命体変異の可能性あり』

『推奨行動:退避、迂回』

真人の脳内を、これまで経験したことのないレベルの警告が駆け巡った。これまでのの反応とは異なる、より直接的で危険な反応だった。

「どうした、ブラザー!?」アレックスが、真人の顔色の変化に気づき、声を上げた。

真人は、目線の先を指差した。「この先の森に高濃度の魔素を検知した。瘴気と呼ばれているらしい。危険だ。迂回をすべきか……。」

その時、サラの琥珀色の瞳が、真人の指差す方向を睨みつけるように細められた。

「……待て。森の中に、人がいる。」

サラの言葉に、真人はもう一度【鑑定】を発動させた。確かに、高濃度の魔素の渦巻く中心に近い場所に、複数の生命反応があった。

「人の反応?なぜこんな危険な場所に……。」真人は首を傾げた。

静かに話を聞いていたリーが、意気揚々と馬車から飛び降り、吹雪で鍛えられた強靭な脚で、魔素が濃い方向へと走り出した。

「おい!リー!」アレックスが慌てて声をかけた。

「私も行く。」サラも馬車を停め、弓を構えてリーの後を追った。

真人も馬車を降り、慌てて二人を追った。アレックスもそれに続いた。

高濃度魔素が渦巻く空気に、真人の肌が粟立った。魔素の重圧が、まるで物理的な壁のように彼らに襲いかかった。その中に、真人は微かに人々の声と、金属がぶつかる音、そして魔物の咆哮を聞いた。

森の中心に近づくにつれて、空気がねっとりとした不快なものに変わっていった。そして、視界が開けた瞬間、彼らの目の前に広がった光景に、真人は息を飲んだ。

そこは、仮設野営地だった。しかし、その場所は、血の匂いに満ち、見るも無残な状態だった。周囲には、瘴気によって凶暴化したであろう、変異した魔物の死骸が転がり、そして、多くの人間が倒れていた。彼らは、王都の紋章を掲げた鎧を身につけていた。おそらく瘴気調査に乗り出した騎士団なのだろう。大半の兵士が、魔物の攻撃によって深手を負っていたか、あるいは息絶えていた。

リーは既に戦闘に突入しており、残った数体の凶暴な魔物を、その圧倒的な力で瞬く間に殲滅していった。サラは、周囲の状況を冷静に判断し、まだ息のある兵士たちを守るように弓を構えた。

真人は、目の前の惨状に言葉を失った。この世界の「異常」が、これほどまでに生々しい形で、人々に被害をもたらしているとは。

その時、真人の視界の端で、小さな謎の光が、倒れている兵士たちの間を縫うように移動するのを捉えた。その光は、まるで意思を持っているかのように、傷ついた兵士の傍らに留まっていた。

『対象:光/属性:光、スキル:回復』

『危険度:無』

『魔法使用者:不明』

真人の【鑑定】も、その光の持ち主の正体を捉えきれなかった。しかし、その光が、確実に兵士たちを癒していた。

これは一体……。瞬く間に移動し、再び消え去った。しかし、真人は、その光が確かに実態のある何かの「存在」であることを確信した。

【本日の残業報告】

・王都アルカディアへ向けて進軍始

・世界地理データベース取得

・旅支度工程完了→出発処理実行

・移動5日目、「真紅の森」にてシステムアラート発生

・瘴気反応検知→警告ログ出力

・現地被害を確認

・リー・メイリンによる即時バグ処理完了

・未知の発光体によるスキル発動を目視確認

・使用者情報:不明


#サラ先生の地理授業#寝る子は育つ#絶対真っ直ぐつけない運命#リーさんは今日もバグ#鑑定さんまた負けました#回復する謎光ってなに#ログにないんですけど#人魂じゃん



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