第4話 新体制と再会
後日
総本部に各国の本部長が訪れるという機会があった。
しかし、来ていたのは七王国、ウェールズ公国、スコットランド王国の本部長である。
ムガル帝国などの遠い所に関しては通信が難しく、しかも人員を寄越すには時間が掛かるため、省いた可能性はある。
問題なのは隣の島である。
アイルランド島の4国から誰一人来ていない。
ただし、ここは特殊で一国だけが代表で来る場合があるが、今回はその代表すら来ていない。
とは言え、来るかどうかは各本部次第なので、問いただす事はない。
各本部の本部長が集まる…所謂本部会で総長のエスラ、副総長のウィロー、討伐隊隊長のレオが参加した上で協議される。
さらに後日
各本部から1人ずつ魔導工兵がやって来た。
ノーザンブリア王国からコンラッドという名の男性魔導工兵。
イースト・アングリア王国からヴェロニカという名の女性魔導工兵。
エセックス王国からプラシドという名の男性魔導工兵。
ケント王国からヴァネッサという名の女性魔導工兵。
サセックス王国からマックスという名の男性魔導工兵。
ウェセックス王国からルースという名の女性魔導工兵。
スコットランド王国からファーガスという名の男性魔導工兵。
最後にマーシア王国から先日総本部と連携したデレックである。
残念ながら本部会に参加したウェールズ公国からは1人も来なかった。
しかし、戦後で被害国であったため、打診しなかったのだろう。
それぞれ30代のベテラン魔導工兵。
これだけの実力者たちなら空いた穴を埋める事が出来るだろう。
というか、総戦力では今の方が上かもしれない。
各本部長がベテランを寄越したのには理由がある。
それは総本部の討伐隊が各本部にしてもありがたい存在だからである。
各本部も支部に対して手伝いの為に人を寄越す事はあるが、それは1人2人で本当に手伝いしか出来ない。
それが総本部の討伐隊は部隊として寄越してくれる。
先日はセントラルの近所という事もあり、マーシア王国の本部や支部が対応する事はなかったが、本来は手伝いが目的である。
そもそも討伐隊は各本部、各支部が対応が難しい時に応援を要請。
その上で協力して大型や人型、多数のリィーズの討伐を行なう。
だから、難しい討伐をより成功率を上げる為に総本部の討伐隊を各本部は必要とする。
その討伐隊の戦力低下はその成功率を下げるし、新人を難しい討伐に参加させる訳にはいかない。
単純戦力でエーリク以上を寄越すのは難しいが、ベテランでも十分戦果は出る。
本部会でもそういう話でベテランを寄越したのだろう。
現在の討伐隊なら以前より戦力は高いかもしれない。
総本部所属の魔導工兵にとっては仕事量が減り、安心感が生まれるだろう。
しかし、煌夜にとっては魔導工兵としての仕事が出来ない以上、して貰えるのは教えを乞うくらいしかない。
それほど重要ではないって事である。
というより煌夜にとって重要な事が1週間後に訪れたからである。
ーーーーーー
1週間後
新たに来た魔導工兵たちは着々と各々で仲を深めていた。
煌夜も挨拶程度はしたが、会話をする事はなかった。
仕事内容を聞くってだけでも全然問題ないが、現状彼らはここで働いていく為に慣らす必要はあるし、選ばれたからには個別でする事もあるだろう。
邪魔をする訳にはいかない。
今日は総本部の修行場で鍛練を行なっていた。
その際にそれはやって来た。
「煌夜さん」
「エイダさん?」
扉を開けて訪ねて来たのはエイダだった。
「どうしたんですか?」
「それがですね…」
エイダはここに来た理由を煌夜に伝えた。
どうやら総本部の受付にて煌夜を呼んで欲しいと尋ねている者がいるというらしい。
煌夜はエイダに連れられ、エイダの提案で受付を陰から見る事にした。
「うん?あれは…」
煌夜は受付にいる2人の女性を見て、思い当たる…思い当たり過ぎていた。
煌夜は陰から出て、2人の女性の方に向かう。
「姉さん!」
声を掛けて、それに反応して振り返る2人。
「煌夜、いた」
1人の女性…美龗高江が煌夜を見つけて、肩を組む。
「姉さん、お戯れは後で」
「そうだな」
もう1人の女性…美龗羽津が注意し、高江は煌夜から離れる。
「煌夜さん、お知り合いですか?」
「はい」
遅れてやって来たエイダが聞く。
煌夜はエイダに2人が親戚のお姉さんたちである事、2人にはエイダが自分の担当する職員の人だと説明する。
「後は大丈夫です。事情は後ほど説明させていただきます」
「分かりました。一応倭国の担当もしておりますので、何かあればお繋ぎ下さい」
エイダとはここで別れる。
仕事中だっただろうから、これ以上付き合われる必要はない。
それにエイダとしても身内での話に割り込むつもりはなかった。
エイダと別れた後、煌夜は受付に1階の応接室の一室を借りたいと伝え、了承を受けて2人を連れて向かう。
応接室に着いた3人は姉妹を奥に座らせて、煌夜は向かいに座る。
「聞きたい事は分かりますよね」
「あぁ」
「説明は私から」
世間話をしたいところだが、聞きたい事は決まっている。
その説明を羽津が行なう。
「先日、炎の剣で1人仲間に入れましたね」
「何故それを…、それが繋がり…」
「そうですね」
繋がりが出来れば、それに関する情報を得る事が出来るのかもしれない。
「仮にそれを知ったとして流石に来るのは早くないですか?」
「それは確かに」
煌夜が倭国からここに来るまで1ヶ月以上掛かった。
仮にレイラを仲間を知った後に来たとして、3週間は経っていない。
ここで煌夜が『魔導工兵』から煌夜のここでの仕事継続の許可の手紙を受けて、2人がここに来たのではないかと聞かないのは期間的に受け取る前の行動であると分かっているからである。
「でもその答えはそれ以前からここに来ると計画していたからです」
「計画されていた?」
「えぇ、煌夜がこちらに来ると決まった後から」
「そんな早く…、僕が未熟だからですか?」
「いえ」
「未熟かどうかってのは私らにも言えるから、全然関係はねぇ」
「まぁ心配だったのは本当だけど、それだけが理由ではありません」
ここに来る事は煌夜が向かう時点で決まっていた。
心配しているのは家族として弟を心配しているという事だろう。
ただし、煌夜が決めた事にとやかく言うつもりはない。
それ以上に同行したい理由がある。
「私達は煌夜と一緒にいなければなりません。あの剣によって」
「剣って炎の剣の事ですか?」
「はい」
その理由は炎の剣。
煌夜と2人は既に繋がりを持っている。
同じく先日繋がりを持ったレイラは娘のミリーを優先しながらも、同行する意志を見せた。
それと同じかもしれない。
「理由については分かったよ。でも、一緒に来たら良かったじゃない?仮に組織側が了承するかは別にして」
「それはこっちの問題です」
「ややこしい事に家というか家系というか、な」
「家?家系?」
一緒に来れなかったのは別にあるという2人。
「私達…一応貴方にも関係があったんですけど、どういう家系であったかは分かりますか?」
「分かりますかと言われても神社の…神職の家系って事ですか?」
「残念ながらそれでは半分正解ってところだ」
「半分?」
煌夜は2人の実家、さらに自分の実家が神職の家系であるのは知っている。
しかし、それでは不十分だと言われた。
「確かに私達や貴方の家系は神職の家系…つまりは社家ではありますが、社家となる家系は元々名家や武士というところもあります」
社家となるのはそれなりの家柄が神職となる場合や神社を護る為に武士が神職になる場合がある。
「当然美龗家も烏摩家も現在でも名家ではあるが、問題なのは私らの先祖だ」
「先祖?僕は神職の家系としか知らないけど?」
「実際煌夜は烏摩家で何か教えられた訳でも、それこそ美龗家に来てからも特に教えられていないでしょう」
「それじゃあ、答えられる訳ないじゃん」
「一応だ、一応」
煌夜は烏摩家でいたのはあまりにも少ない。
幼少期の時点で美龗家に引き取られているからである。
それでも美龗家に来てからは美龗家が神職の仕事をしていた事、烏摩家も神職だった事を知っていただけだった。
現在の煌夜は烏摩を名乗っているが、実際は美龗家の養子に近いかもしれないが、西洋的に言えば平民である。
因みに烏摩を名乗っているのは許可されているからで、当然本家の方ではなく、もっと上の立場の方である。
「とにかくその先祖が問題なのです」
「それはその人が…なのか、それ以前が…なのか、どっち?」
「それ以前だ」
煌夜があえてその人、それ以前と言ったのは個人での問題か、それ以前の家系が問題なのかを聞きたかっただけ。
実際は特に意味はない。
「私達は元々皇族だった」
「皇族!?」
皇族…つまりは帝と同じ一族だったという事。
「元々皇族は勢力を広げる為に同族に姓が与えていました。しかし、私達の先祖は違う理由で与えられました。100年以上前に西洋よりも遅い時期にリィーズ…当時は妖怪として扱われていましたが、発生してその対処に当たりました」
リィーズの発生はマーシア王国が起点としてあるが、それ以降各国で確認されている。
当初は産業化による弊害として考えられていたが、後に不衛生な事による環境汚染であったと再認識され、まだ産業化されていない国でもリィーズの確認がされた。
リィーズの名自体は埃や塵のようなゴミから発生すると原因判明した為に名付けられたが、それ以前はモンスターやゴーストのような近しい呼び名で呼んでいた。
倭国が妖怪と呼ぶのはそれと同じである。
「そして魔導という特異の力を有しているのを確認した後、朝廷はそれを持つ者の確保と育成に乗り出しました」
連合王国の『魔導工兵』は元々特異の力を持っている者が集団としていて、後に組織となった。
しかし、大抵の国(主に東洋)では発生後に対応しているところが多い。
何故なら単純に特異の力を持っている者が少ないか、集団になり得なかったかである。
まぁ、組織からの国家体制の方が珍しく、他国では組織のままか国家組織の一部になるかの方が多い。
「その動きは皇族の中でもありました。皇族の中にいる魔導持ちの調査はもちろんのこと、力の増大を試みていました」
「力の増大ですか?」
「知っての通り、魔導は神様から力を借りている、と思っているというのが正しいでしょうか。それで皇族は神様の子孫と考えられているのもあって、神路とその祭祀所である神社との関係を強めるべく、皇族を捨て、姓を受けて神職となりました」
「まぁ、そんな簡単な話ではないのだがな」
「はい。元々そのような事はしておりましたが、複数となると難しい。しかし、それはそう大した話でもありません」
「今話したい事ではないからな」
魔導持ちは魔導が神様の力が由来としているのは知っている。
ただそれが本当にそうかという証明は出来ない。
そして、皇族が一部の皇族を神職にさせる事は実際にある。
その時のように複数が一気になる事はないが、それに関して重要ではないらしい。
「話を戻しますが、私達が煌夜と同行出来なかった理由は元皇族である事です。元皇族であるが故に今でも朝廷との繋がりを持ち、権力を持ち、そして皇族であったという立場があります」
「立場?」
「権力のようなものだが、この場合は皇族であったからこその枷…融通の効かない立場。それが何よりも問題となる」
高い地位になると自由になる者もおれば、逆に動き辛くなる者もいる。
今の元皇族は後者ということだろう。
「元皇族の中には『血が混じるのが嫌い』、『島外が嫌い』という考えを持った人が少なからずいます。それは煌夜も分かりますね」
「はい…」
それは煌夜にとってよく知っている。
その考えを持っているのは母方の祖父母…つまりは烏摩家の当主である。
「そもそも元皇族には朝廷での地位があります。なので、手続きというのはありますけど、今回の場合は容易ではありません」
「そこに茶々を入れる奴がいるからだ。他家に文句を言われても困るだけだが」
当然手続きはある。
煌夜は魔導工兵としてのものだが、美龗姉妹にはさらに美龗家としての手続きがある。
水を刺されるだけで、手続きが長いのに余計に長くなる。
「それでもどうにか進めなければならなかったのですが、その時間に煌夜の時間を割く訳にもいかなかったのです」
「一応帝様や朝廷の中枢の一部の助けで、そんなに掛かってはいないが、煌夜の方が優先すべきだろう」
煌夜に同行する気持ちはあっても、煌夜の時間を割く訳にはいかなかった2人。
もし煌夜が2人の手続きを待っていた場合、色々と変わっていた。
特に先日の戦争は煌夜がいるいないで大分変わる。
多分勝敗は変わらないだろうけど、絶対に総長が出る案件になるからである。
先日の戦争において1番の問題はレイラの存在である。
レイラにはエーリクとクリフォードの2人が居なければ勝てない程の実力を持つと考えられていた。
しかし実際にはディアンの対処が必要。
ディアンには確実に1人を要する。
とは言え、レイラが協力的じゃなかった、そもそも炎の剣関係ではなかった場合は煌夜の意味はなくなる。
まぁそれは出発する前に分かる事ではないが。
「事情は分かりました。これからこちらで活動するという事で」
「あぁ」
「えぇ」
事情を聞き、煌夜はそれは了承した。
「それじゃあ、こっちでも手続きをしないといけないけど、まずは話を聞いてからにしよう」
煌夜は立って部屋を出る。
2人もそれに続く。
煌夜は受付にて「総長か副総長に話がある」と伝えて欲しいと頼み、「自国の来客のことで」と付け加える。
しばらくしてまたもエイダが来たが、居た方が都合の良いと思い、一応「時間は大丈夫なのか」の確認を取った上で案内して貰う。
「それでどういった用件で総長もしくは副総長に?」
「それは着いたからでいいですか?内容的には許可されると思うので」
「分かりました」
一先ずエイダに納得させ、ある部屋に着く。
「煌夜です」
「どうぞ」
煌夜はノックし、返事が来たので部屋に入る。
美龗姉妹とエイダもそれに続く。
部屋の先には最近副総長になったウィローがいた。
「エイダも来たのね。今は後ろにいて」
「はい」
ウィローはエイダの入室を許可しながらも会話に入らない為に下がる様に伝えた。
「総長は今忙しいので私が受け持ちます。とは言え、私も暇ではありませんが」
「申し訳ありません」
「いえ、自国の来客ならそれなりの地位の者に確認を取るのは間違いではありませんよ」
ウィローは副総長になって以前よりも忙しくしているだろう。
それでも対応してくれるのは煌夜の国からの客だからだろう。
「さて、用件を聞きましょう。そちらのお二人の事だと言うのは聞いています」
「はい。実は自分も先程来た事を知って、驚いています」
「そうなんですね」
事前に誰の件かは伝えてあり、その内容は受付の人には伝えていない。
許可が出る前に口外するつもりはなかった。
今は人員が増える事が総本部にとっては嬉しい。
しかし、実際になるかどうかは総長もしくは副総長の許可が必要とする。
それは連合王国外の者だからである。
余計な期待をさせる必要はない。
「それである程度事情を聞いた上でここに来たのは自分と同じ様にここの所属にして欲しいそうです」
「なるほど。確かにこの件はそれなりの者が判断しなければならない様ですね」
ウィローはこの件が自分もしくは総長案件である事を理解した様だ。
「今、組織『魔導工兵』…特に総本部は人手不足なのは間違いないので助かりますが、連合王国外の者をそう易々と了承する訳にもいきません。煌夜さん、貴方と同様に彼女たちにも条件が当てはまりますが、そちらはお聞きしましたか?」
「はい。それを聞かないとここには来ません」
「確かに。しかし、正式と言う訳では…」
「会話に入ってよろしいでしょうか?」
羽津が会話に入る。
「何ですか?」
「こちらをお読みになって頂ければ」
羽津はウィローに1通の文を渡した。
「拝見させて頂きます」
ウィローは文を広げ、その内容を読む。
『突然来訪で申し訳なく思います。どういう理由で訪れたかは当人たちからお聞きなったとお思いになりますが、今回の件に関しては既にそちらで活動している烏摩煌夜が決まった時から決まっていました。同行していなかったのはこちらの事情によるものです。また、来訪する事を事前に伝えられなかったのも同じ理由となります。彼女らは烏摩煌夜も含め、自己判断に任せております。とは言え、突然来訪となりますので受け入れるかどうかについてはそちらの判断で構いません。受け入れてくれるのであればどうぞよろしくお願いします』
短くも長くもない内容ではあるが、ウィローは理解した。
「確認のために煌夜さん、これは正しいものですか?」
ウィローは文を煌夜に見せる。
確認して貰いたいのはサインのようなもの、倭国には花押である。
「はい、間違いありません」
煌夜はそれが帝の花押だというのを見て、答えた。
総本部には煌夜やそれ以前の最初の交流の時点で帝の花押のある文はあるが、ウィローは少し前まで内務に携わる事はあっても、他国間との仕事に携わっておらず、知らなかった。
だから、煌夜に確認して貰った。
「エイダはどうですか?」
「間違いないと思います」
さらにエイダにも確認を取る。
エイダは倭国の情報を煌夜の担当という事もあり、一部任される。
同様に確認して貰った。
「これが正式な書状というのは分かりました。魔導工兵としての仕事は許可しましょう。ですが、総本部としての仕事は許可しない事にします」
ウィローは討伐隊への参加を許可しなかった。
その中には先日の戦争の件も含まれるだろう。
「それはこの前あったって言う戦争も含まれているのか?」
「えぇ。そもそもあれは特例でした。今は他国からの抗議によってもう参加を許可されないでしょうね」
そう返ってくるのは煌夜も分かっていた。
しかし、高江はさらに追求する。
「まだ部下の身でない今だから言う。私らは国からの任務だけではない、私らの目的がある。それを達成するには各地…各国を見る必要があり、1番広く活動してるのはそっちだ。だから、煌夜も私らもここに来るのを決めた。それなのにそれを制限するって言うのか」
「それは個人の目的。それに自己判断と言っても、預かるのはこちら。何かあった時の責は少なからずありますから、受け入れられないのです。先日は責任の覚悟の上で許可されましたが、これからは許可はされません」
これから総本部の所属になる以上は本人が責任を負おうと少しは総本部にも責任が向かう。
だからこそウィローはそれを受ける事はできない。
「仮に許可をするにしても先日そちらの国に送った書状の返答が来てからの方がいいでしょう」
今ウィローに渡された書状…手紙は戦争前の話。
もし、戦争の件を受けて対応を変えるかもしれない。
だから、その返答が来るまでは一先ずセントラル内の魔導工兵の仕事だけを許可する。
「ただ、私は魔導工兵としての仕事を許可する決定権はありますが、討伐隊や戦争への参加の決定権は持っておりません」
ウィローは副総長。
これは言わばセントラル本部の本部長。
つまりは他の本部の本部長と同等の扱いである事。
本部長は一国規模の中で本部を中心に支部を統括する立場にある。
正確には本部長というより支部長の方が近いかもしれないが、そもそも副総長というのは総長を手助けする為の役職。
なのでセントラルに限らず、組織『魔導工兵』全体を見る必要がある。
ただし、この総長と副総長には明確な線引きがあり、それは連合王国外の魔導工兵である。
その情報は総本部で管理をするし、副総長であるウィローが携わる事もある。
しかし、打診や受け入れは総長が決めている。
その後で情報課の職員が向かう。
連合王国外の魔導工兵に関しては総長が決めているのだろう。
今回の件はセントラル内での魔導工兵の活動は出来るが、セントラル外の活動を許可しない。
実際は討伐隊の参加自体はウィローでも決定権はある。
しかしそれを許可すれば戦争の参加への抜け道が出来てしまう。
リィーズの討伐の為に行ったと思ったら、戦争が発生、もしくは戦争に発展する可能性もゼロではない。
だから敢えて許可していない。
「私は煌夜さんの目的を聞いております。なので、総長に伝えておきます。許可されれば良いのですが、許可されないなら返答を待つしかないでしょう」
とは言え、煌夜の事情は戦争時に聞いている。
だから、譲歩したい気持ちはあるが、立場や自分の性格的にそれを許す事は出来ない。
そこで決定権のある総長に聞いてみると伝えた。
「そうしましょう、姉さん」
「まぁ、仕方ないか」
ウィローが完全拒否をしている訳ではなく、少し融通が効く様に動いてくれている。
それを無視してまで押し通す事は高江もしたくはない。
「それでは明日は1日休んで貰いまして、明後日から仕事に入って下さい。煌夜さん、指導はお願いします」
「僕ですか!?」
「こういうのは同郷の方がいいでしょうから」
「分かりました」
煌夜は既にここでの仕事は慣れている。
でも、休んでいた期間もある為、感覚を取り戻す必要もありそうだ。
煌夜に関しては明日から仕事復帰する形となる。
「エイダ、2人の担当もお願い出来ますか?」
「はい」
「難しいと思ったら遠慮なく課長の方に伝えて下さい。仕事の振り分けをしてくれる筈です」
「そうします」
美龗姉妹の担当をエイダに任せる事にしたウィロー。
同郷だからこそ担当しやすいと判断しての事だ。
ウィローは用事が済んだと思い、念のためにまだ何かあるかと聞いて、4人を部屋から出した。
今回は限られた地位が判断しなければならない案件だったから対応した訳で、ウィローも忙しい身。
少しでも時間を早める為に与太話もせずに下がらせた。
やっとこの章で書きたかった美龗姉妹を出す事が出来ました。元々はもっと後の章で出すつもりでしたが、出してもいいなと思ってここで出しました。単純に総本部の人員が減った事による補充のようなものだと思って貰えればと。彼女らの魔導に関しては第3章にて説明します。
次に前半の総本部の人員補充で各国の本部から1人ずつベテランが集まりました。彼らには既に性格や地位、そして魔導を決めてあります。また、今回の事で一人一人に何の武器を使っているかを付け加える事にしました。その内、第1章や第2章の人物説明の方にも追加するかも。
今回の話なんですけど、実は続きがあってちょっと多くなりそうだったので、ここで切りました。内容はウィローが総長に確認するだけの話なんですが、それだけだと少ない気がするので、追加で話を付ける予定です。
ウィローは煌夜や美龗姉妹の討伐隊への参加の許可を聞くために総長の下に向かった。
正直、自国に帰す事以外なら問題ないなと思っているウィローに総長が答える。
次回、目的と政治。




