表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導工兵  作者: 龍血
第2章 救神の貴公子
41/42

第24話 エピローグ

 

 ディアンの死によってこの戦いは終わり、ミックが落ち着くまでの間、エーリクは支部攻略組に、クリフォードは船側に砲撃停止と王都の作戦本部に連絡を行なう。


 エーリクはディアンの死と砲撃停止後に再度街散策を行なってリィーズ討伐、私兵や魔導工兵の状態確認を行う様に伝える。

 クリフォードはディアンの死と後処理を行うと伝える。


 ミックが落ち着き、エーリクはディアンの遺体を預かり、さらにメリッサとコリーを能力を連れて、途中でベレットと煌夜を拾った後、支部に向かった。


 クリフォードはミック、ミリーを抱えるレイラを連れて、領民を探す。


 地下という情報はあるものの、ディアンが元々いた地下はもう既に瓦礫の下。

 仮に避難場所が頑丈であっても、時間がかかる。


 しかし、ディアンはミックにメモを託していた。


 死ぬ間際、ディアンはミックの手を少し動かして、ミックがディアンの服の裏側に何かがあると気付き、ディアンは「頼んだ」と告げた。


 ただ、気持ちの整理が出来ておらず、クリフォードに伝えたのは落ち着いてからだった。


 ミックはメモを取り出してその内容を読むと、クリフォードに説明してメモを手渡した。


 その内容は避難場所の入り口が支部の地下にあると記されており、その先の地図が書かれていた。


 クリフォードはすぐにエーリクと支部攻略組に連絡を取り、探索を行わせた。


 数分後、クリフォードたちが支部に着き、既に入り口を見つけていた様でスカーレットが待機していた。


 入り口は牢屋の一室に仕掛けがあり、床が動いてその先に階段が続いていた。


 クリフォードはスカーレットに地上の方に向かう様に伝えて、ミックとミリーを抱えるレイラを連れて階段を降りていく。


 その先には生活感のある部屋があり、領民がいた。


 クリフォードは領民に自身の素性を説明した上で、戦いが終わった事を伝えた。

 その際にディアンが死んだ事を伝えた。


 領民の反応はバラバラだ。

 ただ、ほとんどの大人は悲しくも仕方なかったと納得している者が多かった。


 領民からは信頼があったのだろう。

 まぁ、もう1人のディアンが興味を示さなかったから、ディアンが施す事が出来たからだと思うが。


 さらにミックとミリー、レイラを見て、良かったと安堵する者が何人かいた。


 今はもうその姿を見る機会がなく、覚えている者は少ない。

 それでもその様子を見るに、レイラも含めて2人の母親がいた頃は表に出て、その姿を見ていた者たちだろう。


 クリフォードはディアンの遺体に関してを伝える。


 ディアンはもう大反逆者となっている。

 死んでしまっているとはいえ、何かしらの処遇は課せられる。


 そこでその処遇を「ディアンの遺体を一種の毒という扱いにして焼却する」という事にすると伝えた。


 これはディアンの能力によって体が毒を持っている為、それが広がらない様に燃やす。

 …というていで本来の処遇を避ける目的である。


 今回は単なる反逆と同時に公国への侵攻もあるので、どんな処遇になるかは全く分からない。


 まぁ、身内の配慮と言われればその通りだが、これはディアンを信頼している領民に納得させる口実でもある。



 領民は納得し、クリフォードは地上の制圧が完了するまでしばらく待機して貰う事にした。



 夕方に差し掛かってくる為、一先ずホーリーヘッドで一晩明かし、総本部隊は領民を連れて王都に向かい、クリフォード隊はホーリーヘッドを含めた被害に遭った町々の後始末を王国と公国の兵士が協力して解決していく。



 とりあえず終わった戦争。

 これにより変わった事が幾つかあるが、主に2つ。


 1つは『魔導工兵』の決まり事…規約において『魔導工兵は戦争利用してはいけない』がある事。


 もう1つは魔導工兵もとい魔導持ちが貴族当主になる事。


 今回、ディアン自身が魔導工兵で、魔導工兵を『洗脳』という形で運用した。


 まぁリィーズもというのもあるが、それはディアンが特殊なだけで話題は大きくも取り上げられていない。


 そもそもこういう規約があるのは魔導持ちが戦争において過剰戦力となるからなのと、リィーズに対して特効力のある魔導持ちが戦争利用する余裕がない事である。


 それをしない為の『魔導工兵』という組織ではあるが、実際にされたとて魔導工兵個人に処罰を与える事は出来ても、『魔導工兵』には出来なかったりする。

 何故ならリィーズへの対抗策が魔導持ちがである以上は処罰を与える事は出来ても、大した罰にはならない。

 しかも、こういう時に責任を上の者が取るのだが、残念ながらエスラ総長も同様に軽い処罰を与えられても現最強を辞めさせる事は出来ない。


 まぁそれでも『魔導工兵』が痛手と言えるのは積み上げてきた信頼を下げてしまった事だろう。

 逆に言えばそれだけとも言えるが。



 そしてもう1つ。

 こちらは大分痛手となった。


 魔導持ちが王族・貴族の当主になるのは昔から問題としてあった。


 当主が魔導持ちである事はリィーズに対して安心感を与える事ではあったけど、当主は戦争において指揮官を務める事がある。

 ただ、指揮官は指揮をするのが役割なので、あまり戦闘には参加しない為、許容されていた。


 仮に今回、ディアンが魔導なしで魔導工兵の起用もしなければもしかしたらこの問題は無かったかもしれないが、その両方を使った事で魔導による戦争を知らしめてしまった。


 だから、魔導持ち当主には安心感とは別に周辺に対して恐怖を与える事となった。


 とはいえ、王族・貴族が魔導を持たない当主に変更する事には出来ない理由もある。


 何より大事なのは世襲制である。

 家系や血統を大事にする為に子孫を残す事を第一に考える。

 子を成せないまたは成せなかった時は養子を取ったりする。


 そういう考えがある中で魔導持ちが生まれると、こういう問題があるから継承者を避ける所があるが、能力(武力や知能)主義や魔導持ちしか生まれなくて仕方なく継承者にする事はある。


 ディアンの場合は1人っ子だった為に継承者になるのは確実で、実際に継いでいる。


 問題が肥大化したものの、すぐに変えられる程簡単ではない。

 なので、一国に限らず世界的な問題として議論していく。



 そして、戦争における講和に関して。

 今回はディアンがマーシア王国への謀反とウェールズ公国への侵攻となる。


 講和を行う上で当の本人は死亡している為、交渉はマーシア王国とウェールズ公国間で行われるが、同盟国でありながら公国の方が立場が下なので、仲介役を他の七王国にお願いした。


 これは先程の問題と合わせて七王国会議として講和会議が行われた。


 結果、幾つかの決まった事がある。


 まず最初に現状である。

 まだ後処理を行なっている段階で1番被害を被った公国に対し、マーシア王国は復旧出来る様に労働力を提供する事。


 これはそもそもそのつもりでいたので問題はない。


 次にディアンの遺体とメディシーア家に関して。

 大反逆者で侵略者であるディアンは当然死刑ではあるが、既に亡くなっているのでその遺体をどうするかという話になり、マーシア王国の国王ハワード・マーシャルはクリフォードの願望を助言も踏まえて伝えた。


 魔導工兵の中である程度上位の者は魔導を知られている。

 なので、副作用が毒になるかもしれない事を伝える。


 まぁ、「燃やしても問題ないのか」と質問されたが、それはハワード王の話術でどうにかした。



 メディシーア家は貴族位を剥奪。

 それに伴い子どものミックとミリーは家名を名乗る事が出来なくなる。


 また、メディシーア家が持っていたアングルシー島とホーリー島の領地を以前持っていた件や今回の被害者という点からウェールズ公国が所有する事に決まった。

 ただし、統治制度がマーシア王国なので変更する必要があるが、ウェールズ公国の大公の計らいでしばらくはマーシア王国の統治制度にし、次第に公国の統治制度に変えていく形となる。

 なので共同統治になる。



 次に賠償金。

 メディシーア家が持っていたお金を調査する必要があるが、そのお金は公国に。

 さらに監督不行届という事でマーシア王国も公国にお金を出す形となった。


 今回の戦争でマーシア王国が被害者ながらその責任を1番に持つ事となった。

 それにより国内情勢が悪くなるのを強いられる事になる。



 今回の事態で『魔導工兵』は所属する外国の魔導工兵を帰国を強制させる。


 これに関しては各国の判断となり、国によっては継続を望む所もある。


 例えば北欧王国は総本部にエーリクとアンネがいる。


 エーリクはそもそも帰国する予定だったのに『魔導工兵』の都合で先延ばしとなっていたが、今回の件で強制的に帰国する事となった。

 北欧王国の主張では「リィーズ関連で駆り出されるのは良いとして戦争に駆り出して欲しくない」という事だった。

 これはリィーズ関連では魔導工兵としての仕事となるが、戦争は魔導工兵の仕事ではなく国の問題。

 ただ今回は許可が出され、指揮統制として許可されたと思われる。


 アンネはエーリクと入れ替わる形で『魔導工兵』に来た訳で、まだ魔導工兵として学ぶ事があるという事で残留。

 ただし、今後の戦争参加は禁止とした。


 という様に国または個人で違う対応が取られた。


 因みに煌夜も外国の魔導工兵となる訳だが、やまとから何か言われる事はなく、『魔導工兵』が問い合わせたところ、「本人の判断に任せる」という返事が返ってきた。


 この返事にはまだ来て浅いという事もあるが、『魔導工兵』に行ったのは煌夜自身の個人的な理由もある為、配慮したのだろう。



 最後に……


「レイラです。入っても宜しいでしょうか?」

「問題ない」


 ある部屋を訪れたレイラ。

 ある部屋とは総長室、そしているのは総長。


「ミリーの治療ありがとうございます」

「彼女の力やミックとアンタへの配慮だが、1番はアンタを暴れさせない為だ」

「私が暴れた所で貴女に勝てるとは思えませんが?」

「よく分かっているじゃないか。まぁただ、そもそもメディシーア家の魔導は特殊だ。簡単に失う訳にはいかない。もちろん、アンタの力も必要だがな、これから先の事を考えると。ただし、その使い先はコウヤにあるだろうが」

「よくご存知で」

「私は戦闘面だけでなく、情報収集も長けてるからな」


 総長はレイラの事をよく知っているようだ。

 そして、無碍にするつもりも無さそうだ。


「さて、ここにアンタを呼んだのはこれからの待遇に関してだ。ディアンの召使いや私兵は領民という扱いにしてそのまま住んで貰う事にしたが、アンタやミックの妹をそのまま住まわせる訳にもいかない。それは分かっているな」

「はい」


 ミリーは魔導持ちなので魔導工兵として預かる事は出来る。

 年齢的に学校の方に行かせても問題はない。

 まぁ本人は精神不安定の可能性があるので、当分は安静にする必要がある。


 レイラは見た目では人間と見分け付かないものの、その正体はリィーズである。

 リィーズだから討伐対象ではあるが、複数の理由で総長はそれをしない事にしている。

 しかし、領民として扱う訳にもいかないし、本人の希望でミリーの側にいたいと言っている。

 ただし、扱いは明確にしておく必要がある。


「妹の方はミックの妹としてや魔導工兵の学生として住まわせる事は出来るだろう。アンタの方は妹の保護者という事には出来る…が、提案したい事がある」

「何でしょうか?」

「さっきも言ったが、アンタの力の使い道はコウヤにある。だから、コウヤのお付きみたいな扱いにしたいと思う。まぁ表向きには妹の保護者にはなるが」

「後々そうなるとは思いますが、何故そんなにも煌夜さんを優遇すると言いますか、特に気にしてる気がしますが?」


 レイラは煌夜の力を何となく理解している。

 それは煌夜との繋がりがあるからである。


 でも、総長…エスラはそういう訳ではない。

 どういう方法でその情報を仕入れているかは分からないが、他の魔導工兵とは違った見方をしている。


「アイツには同格だと伝えているが、それは現状を成長した時の話だ。しかし、アイツの力はバラけている。それを集約した時、私を超える。まぁ、それが発揮されるのはまだ当分先の話だかな」

「それが現最強の見る世界なのでしょうか?」

「現最強?それは表向きには過ぎない。私以上の者は存在する。その者たちも何となく理解する筈だ。アイツの役目と自分の役目を」


 エスラは最古最大の魔導工兵の組織のトップ。

 その存在感は世界一と言える。

 だからこそ、世界最強という見方がされやすい。


 実際は魔導持ちでもあまり目立っていない魔導工兵やそもそも魔導工兵として活動していない者もいるだろう。


 だから、エスラは最強と(秩序の為に)表では言っても、本音では言わない。


「とにかくアンタはいつか故郷に帰る必要がある。その為には建前でも必要だが、もう今は正確に誰かの付き添いにする事が出来る」


 もしレイラが外国に行く時、ミリーの保護者では向かえない。

 まぁそれはミリー次第な気もするが、期待薄だろう。

 ミックの保護者というのもなくはない。

 それでもまだ建前の域。


 煌夜の付き添いなら向こうで自由に動けるだろうと提案みたいなものだろう。


「なるほど、都合が良いようにすると言ったところでしょうか」

「つまりはそうだな」

「私は彼との関係性がバレたところで気にしません。そうして貰って大丈夫です」

「一応書類に記す程度。それが発揮される事はまだない。しばらくは妹の様子を見ていると良い」

「ありがとうございます」


 その情報はレイラがやまとに行く際と滞在中のもの。

 それまではミリーの保護者として生活すれば問題ないだろう。


「今回呼んだのはアンタの様子を見る為と記していいかの確認だけだ。そっちに何かなければ退室して構わない」

「それなら1つだけ。貴女はディアンの事を事前に防ぐ事が出来ましたか?」


 レイラは問う。


 エーリクやクリフォードは今回の件をここまでの規模では想定していない。

 それは単なる暴走という形でディアンが暴れる可能性があるというだけで、戦争という形になるとは思っていなかった。


 しかし、エスラはどうだったのだろうか。


「出来るか出来ないかで言えば出来ただろうな。それでも2つの理由で私はしなかった」

「それはここから移動しない事と関係していますか?」

「まぁ1つはそうだな」


 エスラは連合王国のトップとしての仕事があるが、彼女がこのセントラルから出る事はない。

 なので各国がセントラルに集まる。


「1つは大した事ではない。私が出張っては成長しないから未来の為にも一人一人の魔導工兵が成長する必要がある。その代わりとして助けられる人たちを野放しにしてしまう可能性はあるが、今の実力では心配しかないからな」

「今回も出てきて欲しいという声があってもおかしくはありませんが…」

「当然あったが、各国の首脳陣は納得してるし、そもそもよっぽどの事がなければ出ない事は世間に知らせている。ただ、今回は少し違うからか、声は大きかった気がするがな」


 元々、総長が危機的状況ではないと出動しない事はあった。

 それは毎回毎回出ていて、いざ危機的状況で向かう事が出来ないという事がない様にする為である。


 ただその危機的状況を判断するのは『魔導工兵』、主に総長である。

 各国はリィーズへの脅威度を知っていても、一体一体のリィーズがどれだけの脅威があるかまでは理解していないからだ。


 なので、総長が出ないなら危機的状況ではない…というはっきりと理解せずに納得してしまっているのが現状ではある。


「まぁ、1つ目に関しては元々あった規約に私が利用している形になるが、2つ目に関してはさっき言った様に私が移動出来ない理由だ」


 1つ目までは出動するかしないかは総長…エスラの判断次第にはなるが、まだ各国との規約の中での話ではある。

 しかも、どっちかて言うとセントラルの外の話。


 しかし2つ目は「移動出来ない理由」。

 つまりはセントラルの中の話になる。


「各国には私がこのセントラルから動けない事だけを伝えているが、その理由については伝えていない。というより伝えられないからな」

「何かあるのですか?ここには?」

「もうその理由を知る者は少ないが、アンタになら少し教える事が出来る」

「今日会ったばかりの、しかも知って通り…」

「それは分かっている。だからこそ色々と知っている事もあるだろ?それにアンタの存在は切り札にもなるかもしれないしな」

「表ではその対象にはなるかもしれませんが…」


 これからレイラは一部除きリィーズである事を隠す。

 煌夜との繋がりも含めればエスラと同格に近い実力の可能性があるから、切り札として価値はある。


「とにかく私がアンタに言えるのは『ここには私が警戒する程の存在がいる』」

「え?それは…まさか…」

「その想像している事と同じかは知らんが、私が総長をしながらここに留まるのはそれが理由だ」


 総長が警戒する程の存在。

 セントラルから離れられないし、それを話す事も出来ないのだろう。

 それで混乱が起きるのは確実だろうから。


「その存在の為に育成に力を入れているという事ですか」

「私が1人で片付けられる程甘くないからな」

「それが出来るなら既にやっていてもおかしくありませんのにやっていないのですからね」


 その存在に手を出して大被害になっては意味がない。

 その為には自分以外にもそれなりに実力を付けて貰う必要がある。


「まぁ、そういう事だ。とにかくそれだけは頭の片隅に置いておけ」

「分かりました」

「聞きたい事はそれだけか?」

「はい、ありがとうございました」

「あぁ」


 レイラは扉の前に行き、一礼して部屋から出て行った。


(さて今回の件は復興が残っているものの、収束と見ていいだろう。何人か成長したが、失ったもの方が多い。戦死した者やエーリクを含めた外国組、ディアンも)


 今回の戦争はリィーズが居たとはいえ、身内争いである。

 成長はあったが、敵味方両方失い、結果的に王国、公国、そして『魔導工兵』の喪失。

 さらに『魔導工兵』はこちらに来ていた外国の魔導工兵が結構帰国して行った。


(カールさん、つらい役目を与えて申し訳ありません。貴方の役目は『次世代への糧』。ディアンの洗脳は知っていた…というよりその可能性があった。ただ、実力はまだカールさんの方が上だった。彼が洗脳に抗えば今回の戦争はもっと小規模だったはず。それでも死は免れなかったと思うから、死地に送ったのは間違いない)


 エスラにとってカールは数少ない先輩。

 元公国の本部長である為、関わりがあった。


 本人が引退を考えて本部長を辞め、移動先をエスラにお願いをし、エスラはそれを利用した。


 カールの実力は分かっているから、そう簡単にはいかないと思いつつも、ディアンの特異性ならあり得る気がしていた。


 元々ホーリーヘッド支部はディアンがいる事もあり、実力よりも事務面で優秀な者に支部長をやらせていた。

 しかし、ディアンの変化で『魔導工兵』内で懸念を抱く者が増え、実力者を送るべきではないかという提案もあった。


 洗脳を考慮するならば支部長は変えなくてもいい。

 生死に関しては今回洗脳された者を救出している為、助かる可能性はあった。


 ただ、前支部長は戦力強化か支部長の要請をしていた為、カールの要請も合わせて決定した。


 状況的に支部長を変えない事が1番マシ、変えてカールが洗脳されなかった場合は被害がマシ、今回のカールまで洗脳された事が1番キツい状況だった。


 これは結果論でしかないけど、人々の被害を抑えるにはカールを支部長にする事は間違いではなかったが、その場合はカールの死は確実ではあった。


 だからこそエスラは謝罪をしたのである。


(外国組はそれほど痛手ではないが、エーリクにはまだいて欲しかった。まぁ、それも時間の問題ではあったな)


 外国組は本場の魔導工兵としての仕事を学ぶ為に来ている者が多い。

 それは当然エーリクもそうだったが、『魔導工兵』…特にエスラの都合で延期をお願いしていた。


 因みに外国組が帰国するのは学校卒業から30歳くらいまで。

 それと比べてエーリクは40歳で10年も居て貰っている。

 それを了承してくれる北欧王国には感謝しかないが、それだけエーリクの代わりが居なかったのが問題である。


 総本部の隊長というのは他の国で言えば本部長と同格。

 ウィローやクリフでも務める事は出来るだろうが、どちらも顔役が出来る程の素質は持たない。

 今はかろうじてレオが候補が上がり、今回の件で1段階上がったとはいえ、2人と比べたらまだ実力不足ではあるだろう。


 今回で拒否出来る状況ではないから、エーリクの帰国を了承する形になった為、新体制を組む必要がある。


(ディアンはこっちにいる時はどうにか出来ていたが、貴族である以上残念だが避けられない運命だった)


 エスラも気にかけて総本部にいる時に手助けをしていたのだろう。

 しかし、セントラルから離れられないエスラはディアンが辺境伯を継いでからほとんど何も出来なかった。


 この結末をエスラは予感し、カールと同様に『糧』にする事にした。


 ただし、予感したからと言って実力までは測れていない為、自分が出れないから各国の本部長に一応要請する可能性があるという事だけ伝えていた。


(それでもやれる事はしたと聞いている。悔いが無くなったとは思わないが、マシにはなったんだろ?)


 自分が不甲斐なくて起こしてしまった事に後悔が残る。

 それでも領民は助かり、皆の成長、娘の解放、息子の成果を見る事が出来た。


 後悔が残りつつも最期は安心して逝けただろう。


(これからは自分の子供たちの活躍でも見ているといい。アンタが託したモノを見せてくれるはずだからな)


 ディアンの意志は息子のミックに受け継がれた事は聞いていた。

 だから、今まで親に縛られた人生から解放され、新たな一歩を踏み出す。


 その光景を今までの苦しい中ではなく清々しい状態で見る事が出来るだろう。


(これは私からの手向けだと思ってくれ)


 エスラは指笛を鳴らした。

 高い音が窓を突き抜け、空高く舞い上がっていった。


これにて第2章は終了。

今回のエピローグで戦後処理を軽くした訳ですが、一部は次の日常回と第3章で詳しく出すと思います。

そして、総長エスラとレイラの会話。現状ではそれ程重要ではありません。後々の章の話になります。


次からは閑章…改めて第2.5章という形で進めます。

ほとんど関係ない話になるかもと思っていましたが、ある人物…達によって重要な章になってしまいました。ただ、話数的には少ないので◯.5章という事にします。


そして、最後に第2章の副題は『救神の貴公子』になります。まぁ、残念ながらミックが貴族ではなくなってしまったので、今後からは貴公子と呼ばなくなりますが。


次回は第2章の用語解説の後に第2.5章に進めます。

戦争は終わり、急速に事態が変わっていく。

そんな中で煌夜は戦後一週間後に目を覚ます。

そこに居た者達に驚愕する。

次回、戦後の変動

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ