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異世界に転移したらハーレムが出来た、ちょっと俺大丈夫かな?  作者: 乙賛


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第29話 暗躍

少し短めになりますが更新しましたので、暇つぶしにでもなればと思います。



クラレンス・ディスモアは軍部の執務室で、ひとりほくそ笑んでいた。

「すでにダンジョンへ派遣した部隊は撤収しているからな、バレンストはずいぶんと手薄になっているだろう。

 ご当主様が何かされるようだが、これでやりやすくなっていれば良いな」


書類仕事を上司であるグレアムに押し付けて軍部の情報伝達をマヒさせたこの男は、また何かたくらんでいる様だ。


「帝国の馬鹿どもに余計な事をされると面倒だからな、早々に軍部の再編成を行い帝国に見せつけてやらねば。

 あの勇者の小僧たちも役に立ちそうだし、これから面白くなりそうだ」


執務室の主であるグレアムは、基本的にこの部屋にいることがない。

一日のほとんどを自己の鍛錬か、部下の訓練に費やしているためだ。

本来であれば軍部のトップであるグレアムが書類仕事をしないなどあり得る事ではないが、

グレアムはこれまでの戦歴からトップにまで昇進したたたき上げの軍人であるため、補佐を付ける事で王国上層部も目をつぶっている状況なのだ。


そもそも軍部のトップにグレアムが収まっていることにも、多くの貴族からは不満が上がっている。

権力と名誉を伴う役職には、高位の貴族が付いて当然と考えるものが多数を占めているためだ。

もともとグレアムは平民出身だが多大な戦功をあげた結果、ゴドルフィン伯爵家に養子として迎えられた経緯がある。

肩書上は貴族であるグレアムだが、口さがない貴族たちは平民上がりとグレアムを見下しているのだ。

ただダンジョンの攻略や魔物の討伐など、数えきれないほどの戦功をあげたグレアムに対して表立って文句が言えず、国王の信頼も厚い為トップの座はゆるぎない。







俺がグレアムさんに会うために軍部の執務室を訪れると、あいにく不在だった。


「これは勇者様ですな、お初にお目にかかります。私クラレンス・ディスモアと申します。

 ゴドルフィン閣下の副官を務めております。生憎閣下は不在でして、よろしければ私がご用件をお聞きいたします」

「ああ、丁寧なあいさつありがとう。俺は仁、桂 仁だ」


グレアムさんは不在のようだが、代わりにいかにも切れ者といった姿のダークグレーの髪をオールバックにした男が部屋にいた。

「立ち話もなんですから、こちらにどうぞ」

そういってソファを示すと、クラレンスはお茶を淹れに動く。


「ありがとう。たいした用事ではないんだが、最近軍部で帝国についての話が上がっていると聞いてね」

「ああ、あの件ですか。まだ決定ではありませんが、これまで何度もあった帝国の無茶な要求に対して一度しっかり反撃すべきという声が大きくなってきまして。

 勇者様のおかげでダンジョンの監視のための部隊も引き上げることが出来たので、帝国との国境付近で大規模な軍事訓練を行うという話が出ております」


「なるほど、そこまで帝国は無茶な要求をしてきたという事ですね。でもそれが切っ掛けで開戦いう事にはなりませんか?」

「確かにその可能性は否定できません。ただこのまま王国が嘗められた状態では威信にかかわるという声も大きいので、おそらく決定の方向に動くでしょう」


「そういう事であれば、俺達の出番はないですね。俺達はあくまでもダンジョンや魔王を相手にするということになっていますから」

「そうなのですね。一部では勇者様達の力を借りて帝国へ攻め込めばいいという過激なものもいたので、そういうことであればその線は早々に潰せそうですな」


「その方向でお願いします。俺達は国家間の争いには手を貸すつもりはありませんから」

「了解しました。この件はあくまでも軍部のみで収めて勇者様達にはご迷惑をお掛けしないように致しましょう」


「ありがとうございます。でも副官の貴方にその様な権限があるのですか?」

「ははは、確かに私の階位では難しいでしょう。しかしゴドルフィン閣下にはその権限がおありです。

 今のお話をお伝えすれば閣下なら理解いただけ協力してくれるはずです」


「なるほど、貴方はずいぶんと信頼されているのですね。そういう事であればお任せします」

「はい、確かに承りました。

 そうそう魔物と言えば、最近出現報告や被害報告が増えてきております。おそらく勇者様の召喚で守護の宝玉を失ったことによる影響と思われます。

 それと、オズボーン女侯爵殿が攻略したというダンジョンですが、ダンジョンコアが破壊されておらず未だ活性化しているらしく魔物があふれる可能性が高いらしいです。

 このことはまだ王国上層部しか知らない内容ですので、内密にお願いします」


「そんなことが…。守護の宝玉というのは初めて聞きましたが、お話からは魔物から王国を守るためのようなものですか?」

「はいその通りです。守護の宝玉は莫大な魔力を秘めており、その力で侵入する魔物から王国を守ってきたのです」


「その守護の宝玉が俺達の召喚に使われたということは、失われたということですね。そしてこれまで防いできた魔物の侵攻を許すことになったと」

「ええ、現在は各地の冒険者たちによって侵攻を防いではいますが、強力な魔物が現れればおそらく冒険者では太刀打ちできなくなるでしょう」


「守護の宝玉の力を取り戻すことはできないのですか?」

「私も専門ではないので詳しくはわかりませんが、失われた技術らしくそもそも魔物の侵攻をどうやって防いでいたかもわかっていないようです。

 ですので召喚で失った魔力をどうやって補充するのかも見当が付かないらしいですね」


「とはいえ、さすがに王国全土の防衛を俺達が行うのは現実的ではありませんね。ギルドなりが魔物が侵攻する原因を調査して根本から解決すべきでしょうね」

「なるほど、さすが勇者様だ。ただ魔物を防ぐのではなくその侵攻自体を断つということですね。

 一度その線で冒険者ギルドに伝えておきましょう」


「もうひとつの、オズボーン女侯爵が攻略したダンジョンですがダンジョンコアは現在女侯爵が保持しているという事ですか?

 であれば、コアの破壊を命令すれば解決じゃないんですか?」

「おそらくオズボーン女侯爵がコアを持っていることは間違いないでしょう。ただその証拠もなく命令したとしてもとぼけられたら終わりです」


「そういう事ですか…。しかしダンジョンコアを使って何をしようとしているんです?」

「それも不明ですね。ただ碌な事ではないというのがこの情報を知る皆の一致した見解です。

 先の勇者拉致の件も合わせ、オズボーン女侯爵の今後の動きに皆が注意を払っている状態です。

 それと勇者様のお話によるとダンジョンコアは魔王につながるらしいですね。

 万一オズボーン女侯爵が魔王を生み出そうとしているとしたら教国が黙ってはいないでしょうからな」


「教国?それはいわゆる宗教によって成り立つ国家があるのですか?」

「ああ、勇者様はご存じないのですね。我が王国でも唯一神を神として崇めており、そのための教会も国内に存在しています。

 教国は唯一神の加護するこの世界に仇なすといわれる魔王を、教国の敵として公言しているのです」


「つまり、オズボーン女侯爵が魔王を生み出そうとしていると教国が考えただけでもまずいってことですね」

「そのとおりです、実際に魔王が生まれるかどうかにかかわらずなのでこの情報には細心の注意が必要となるのです」


「ありがとうございます。いろいろ情報をもらえて助かりました、また何かあれば教えてくれると助かります」

「お役に立ったようで何よりです、今後も勇者様には情報提供をお約束いたします」


俺はクラレンスに礼を言い執務室を後にした。

(あの人が書類仕事をやってたんだろうな、グレアムさんがいなくても軍部の業務が回ってるのはあの人のおかげなんだろうな。

 しかし、状況は聞けば聞くほど問題ばかりだよな…。王国の問題には関わるつもりはないけど、周りが騒がしくなりそうだ…)


これからのことを考え少し憂鬱になりながら、自室に戻るのであった。







クラレンスは、桂が出て行った扉をじっと見つめる。

(あれが勇者か、ガキと思っていたがそれなりに考えてはいる様だな。

 だが王国内のことには干渉しないというのは思わぬ収穫だった、情報提供という形で今後も会いに行く口実もつくれたし、今回はこれで満足すべきかもな。

 しかしこの短期間で全てのダンジョンコアを破壊されたのは想定外だったな、あといくつかはご当主様のために確保しておきたかったのだが…。

 ご当主様はダンジョンコアで何をするつもりかまでは明かしてくれなかったが、必要と言われたからにはいくつかは確保しておきたい。

 帝国にもダンジョンが発生しているらしいし、そちらからうまく確保できるように手を打つべきか…)


(帝国に対する示威行動でダンジョンコアを入手して破壊せずに保持するようグレアムに吹き込んでおくか。

 コアを王国が握っておけば帝国のダンジョンは活性化し続けるだろうから、それをもって帝国への牽制とでも言っておけばうまく踊ってくれるだろう。

 グレアムが無理でもバカな貴族をのせておけば、うまくいくかもしれないな。

 失敗したところでこちらの懐は痛まないし、コアを破壊してしまっても帝国に恩が売れる。

 うまく勇者をコントロールできればもっと簡単だろうが、奴はそう簡単に踊ってはくれなさそうだな…)







その頃帝国の使者であるラズリーは帝都への密使を準備していた。

(くそぉ、王国から帝都に密使を送ることなど想定していなかったのは失敗だったな。

 腕の立つ信用できるものを確保するのにここまで手間取るとは…。

 だがなんとか密使は確保できたし、後は皇帝陛下に勇者に対する報酬を決めていただくだけだな)


ラズリーはもう勇者たちを手に入れたかのように、ひとりほくそ笑む。

先日の訪問で勇者たちが王国に忠誠を誓っていないこと、帝国への招待にも特に嫌悪感がなかったこと。

さらに報酬額を聞いて来たことが決め手となり、ラズリーは勇者たちが帝国に来ることを疑いもしていなかった。

かなり事務的で高圧的な話し合いであったが、子供が騙されないように虚勢を張っていたとラズリーは判断していたため特に気にはしていなかったのだ。


そのため穂乃華たちとの会見を終えると、すぐに部下に密使となるものを手配させたのだが思った以上に難航してしまった。

王都の冒険者にとっては王国がホームであり、帝国への密使などを受ける者がそもそも少なかったことが原因である。

単なる配達依頼とは異なり、王国には一切ばれないことを条件に加えたため、腕の立つものは依頼自体をいぶかしみ受けようとはしなかった。

報奨額に釣られたものは低ランクか人間性に問題のあるものばかりであり、人選に思ったよりも時間がかかってしまったのだ。


結局密使に選ばれたのは冒険者ではなく教会に属する聖騎士団の一員で、ちょうど帝都の教会に向かう任務があるために一緒に依頼を受けてもらうことが出来たのだ。

教会は各国に教会を持つため、教会の関係者は国境を超える際の条件が緩やかに設定されいるのも大きかった。

教会の関係者、しかも聖騎士であれば荷物のチェックも受けること無く国境を超えることが出来る。

つまり密書の存在が発覚する心配がないという事だ。


ラズリーは帝都に向かう聖騎士がちょうど見つかったという報告を受けるや、すぐに高額の報酬とともにその聖騎士に依頼を行なったのだった。




聖騎士であるジルベールは教会を統括するヴァランス教国の出身で、生れた時から教会の信者であるという筋金入りの信者である。

教会の教えである唯一神を信仰し、教会の指示を至上のものとして神の名のもとに、背教者や異端者を手にかけてきた男である。


この世界では唯一神のみが神として崇められている。他の神は教会が認めていないこともあり、基本的に神と言えば唯一神を指すのが一般的である。

信仰の度合いはともかく、世界各国で神とあがめられる唯一神を祀る教国の力は各地に深く根差しているのであった。


今回ジルベールがブロンシェ王国までやってきたのも教国の指示である。

表向きは多数発生したダンジョンの情報を集めることとなっているが、ジルベールが王国に来て動いていた様子はない。

ジルベールが動き出したのはオズボーン女侯爵によるダンジョン攻略後ダンジョンコアの行方の調査と、桂達による攻略後の調査のみだった。

そしてバレンストに近いダンジョンのみが未だ活性化している情報を得ると、教国に帰国しようとしていた。


ラズリーが帝国への密使を探していたのは、ちょうどそんな時であったのだ。


ジルベールは帝国からの使者が王国に滞在していることは知っていたが、教国に従属しないような国家はすべて異端と考えており、

教国の指示さえあれば皆殺しにしたいという気持ちを抑えている。

そんなジルベールが帝都への密使と聞き、教会への手土産になると考えたのはある意味当然だった。


見かけは信仰心が篤く真面目そうなジルベールの姿にラズリーはすっかり騙され、一般には公開されていない勇者たちの情報やその引き抜き工作について書いた密書を預けるのだった。



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